機動戦隊アイアンサーガ ~外伝if「remember you」~ 作:今野一正
人々が寝静まる夜更け、USFの兵器開発所の休憩室で二人の男が屯していた。
一人は疲れた表情にくたびれた白衣を纏い、もう一人は日を浴びたことがなさそうなほど白い肌とは対照的に茶色のセーターを身に纏っている。
「なあ、お前さんはあの最新型のダガーをどう思う?」
白衣の男がタバコの煙を吐き出しながら目の前でコーヒーを飲む青年に訊ねた。
「あれか? あんなものいくら造ったって金の無駄さ。 BMはワンマンアーミーになんてなれやしない。そんなことができるのは精々人外連中の「教廷」か、あるいは強者揃いの「流砂」くらいなもんさ」
青年はそうつまらなさそうに言葉を吐くと空き缶をゴミ箱に放り投げた。
「第一、ダガーシリーズの利点は複数人による視覚リンクと搭乗者の命を喰らうあのイカれたシステムだ。今作られているのはダガー本来の設計思想からかけ離れている」
弧を描きゴミ箱の中に空き缶が消える。白衣の男が一際長い息を煙に乗せて吐いた。
「さてと、愚痴ばかり言っても意味がない。お仕事再開といこう」
男がタバコの火を消した瞬間、施設内の静寂を巨大な爆発音が破った。
「――なんだ!?」
非常灯が点灯し赤いランプに染まった室内を青年が見渡す。
「あぁ! そんな馬鹿な!」
何かに気が付いた白衣の男が窓に駆け寄り声を荒げた。
「ダガーが、動いてる!」
「なんだと!」
男の言葉を聞き青年は彼と同じ窓を覗く。青年は目の前の光景を見て目を疑った。
兵器廠から赤々と上り揺らめく炎。
そしてその中心にはつい数時間前まで自分たちが整備していたはずのBMが屋根を突き破り上半身を露出させていた。
「なんで、あいつが動いてるんだ!」
白衣の男が目を剥きながら叫ぶ。
「知るか! ――見ろ、守備隊が来たぞ!」
紅蓮に揺らめくダガーの後方、そこから三機のリンクスが現れた。
ダガーはそれに気が付いたのかその方向を見つめると今まで静止させていたその巨体を屈ませる。バックパックから青い炎が噴き出し、青い機体は自分がいた場所を瓦礫の山に変えて空に飛び上がった。
直後、リンクス達の照準が上空の青い機体を捉え、武装を一斉に発射させた。
弾丸、ミサイル、
おおよそ武器と言える武器の全てが上空のダガーに向けて浴びせられる。
しかしそれを泳ぐかのような軌道でダガーは弾丸の雨を回避した。
「なんだあの動き!?」
白衣の男が信じられないと言った表情で目の前の光景を見る。
ダガーは空中で一瞬静止すると急降下して一機のリンクスに狙いを定めた。
再び始まる集中砲火、ダガーはそれを一切の無駄が無い動きで躱すと目標を体当たりで押し倒した。
火花を散らしながら一機のBMが滑走路を転がる。目の前に迫るダガーに対し押し倒された機体が右手に持っていたライフルをダガーに向けた。
――ズガンッ!
放たれた弾丸は敵の横スレスレを掠めて空に消える。ダガーはそのまま直進し、リンクスのコクピットを足で踏みつけた。再びリンクスの腕が敵に向けられる。しかし
青の機体はそれを片方の手で押さえると自分の胸元にたぐり寄せた。
ダガーの踏みつけた足に一際強い力が込められる。ミチミチと不快な音を立てる腕関節の駆動音、振りほどこうと足掻くリンクスに対してダガーは無慈悲にその腕を引き千切った。
脱力し、鉄クズと化した右腕が地面に落ちる。ダガーは銃のグリップを握りしめると追ってきたリンクス二体のコクピットをいとも簡単に打ち抜いた。主を失った二機の機体はダガーの横を通り過ぎ、巨大な水しぶきと共に海へ沈んだ。
押さえつけられたリンクスが自らの体の上に乗った足を払おうと片手でもがく。自分の眼下にいる隻腕のリンクスをバイザーの奥にある青いツインアイが睨んだ。
――ズガンッ!
眼の前の機体が動かなくなるのを確認するとダガーはその銃を投げ捨てる。そして背面に備え付けられた巨大な武装を起動させた。
鋼と鋼が重なりあい、巨大な砲身が形作られていく。ダガーはそれを自分の目の前に突き出すと、発射口に青白い輝きが集まりだした。
「おい、早く逃げろ! あれはヤバい!」
その光景を見た白衣の男が一目散に逃げだす。しかしそれが無意味なことだと青年にはわかっていた。あれが発射されればこの施設は跡形もなく消え去ることを。
限界を迎えたその砲身から巨大なエネルギーが放出される瞬間、青年は無意識につぶやいた。
「ワンマン……アーミー」