あれふれたボウケンシャーが世界放浪~ファフニールの騎士~ 作:ハイ・ラガードのボウケンシャー
さっきまで樹海のなかで仮眠を取って居たはずなのだがここはどこだ?いつの間にか体が小さくなっているし。これも世界樹がもつ不思議な力なのか?世界樹には未だ驚かされるばかりだ。
体を動かしてみる。いきなり体が小さくなった所為か感覚が掴めないが、縛りや状態異常といった不調は感じない。
次に右手に力を込めてみる。ファフニール特有の紋様が現れてはいないが、何となく力が備わっているのはわかる。
(しかしあれだな。剣を振るいたくなった。そこら辺の棒切れで技の確認でもしよう)
謎の疼きを抑えるため、体の感覚を取り戻すために体を動かしていたら院長からある修練場を紹介された。八重樫流剣術道場というところらしい。
(新たな技が手に入るか…楽しみだ。)
……………
…………
………
「今日から新しく入る門下生だ。皆、仲良くするようにな」
『はい!』
「竜胆 蛇騎、です。よろしく」
(いくつか鋭い視線があるな、値踏みされているのか)
「竜胆、早速だがウチの門下生の一人と試合をしてもらう。本来なら礼儀作法や型から行うんだがな……雫!」
「はい、師範」
「この娘はウチの孫娘の雫だ。同学年の中では負けなしで年上にも何回か勝ったことがある。そして雫、今からお前には竜胆と試合をしてもらう、いいな」
「わかりました」
「それでは、始め!」
「やあぁぁぁあ!!」
上段から竹刀を振り下ろしてくる。それを俺は得物でいなし近寄り、敵の姿勢を崩させる。
(確かハイランダーから教えてもらった技だったか。使わせてもらおう。)
狙うは目。脳髄まで突き刺し、抉りだすイメージを――――。
"ブレインレンド"
「そこまでだ!」
技が決まる直前に終了の合図が鳴った。
相手をしてくれた雫が涙を浮かべてへたり込んでいる。
(うむ、強者と聞いて技を使ってみたがこれはやりすぎたか。)
「すまない。立ち上がれるか――」
「悪者め、俺が倒してやる!うおおおおお!!」
手を出して立てるようにと促そうとしたら、背後から大声を発しながら誰かがやってくる。
(倒すのなら声を出さずに攻撃を仕掛ければいいものを。最も、こちらに怒りの視線を向けた時点で対処してくれ、といっているようなものだがな。)
出された右手を強引につかみ立ち上がらせる。その反動で振り向き、相手を捉える。
(上段からの攻撃か。好きだなお前ら)
振り向きざまに得物を相手の手の甲に当て、相手の得物を落とさせる。痛みで突進を止め、理不尽だと言わんばかりにこちらを睨む。
「襲ってきたから対処したまでだ。で、なぜ俺が悪者になる」
「雫を泣かしたからだっ!女の子を泣かすのは悪いことなんだぞ!」
「別に泣かせるつもりでやったわけじゃない。ただ、試合を本気で臨んだだけだ」
「なんで本気で戦ったんだ?手加減をすればいいだろ?雫は女の子なんだから」
「なぜ試合で手加減をしなければならない。自らの技量を確認するために試合をするものだろう。それに、手加減は相手を侮辱する行為だぞ。たとえ相手が女だとしてもな」
直感で解った。コイツ、苦手タイプだと。覚悟なんて全くもってない軟弱な奴、冒険者の中では真っ先に死ぬ奴だと。
……………
…………
………
それからいろいろあって、俺が子供の体に戻ってから10年ほどの時が経った。今は高校という育成機関に所属して2年目になる。
以前は10年経つのは直ぐの事だったが今はそんなことはない。人は新しい発見や興味があると刻を感じるのが遅くなると聞いたことがあるが、全くもってその通りだ。
相変わらず世界樹に戻ることはできていない。もしかすると、ミズガルドが保管している古文書に記載されていた「異世界転生」といわれる古代技術なのかもしれない。トラックもないのに行えるとは、流石世界樹だな。
あれからも八重樫流剣術道場にお世話になっている。最近、八重樫の家の人々から「ウチの跡を継がないか?」と言われ続けている。
すまない。俺はファフニールの騎士であってシノビではない。
毎回断る度に雫が泣きそうな顔をしてくる。お蔭で同じ門下生の光輝がよく突っかってくる。
雫の理由は何となくわかるさ。それに腕のいい者はどこも欲しがるというのもあるだろう。実際、冒険者の頃もいろいろな所から声をかけられていたからな。だが光輝、お前が殴ってくる理由だけは分からない。逆恨みだろ、それ。