少しづつ原作とは違う感じになって行きますね。
「なんてこった…」
帽子を目深に被り直し、己の失態に悔いるスナイプ。
射撃の腕には覚えがあったが主犯格であろう者達を逃してしまった。
「これだけ派手に侵入されて逃げられちゃうなんて…」
教師でありながら18禁ヒーローでもあるミッドナイトがUSJで起きた戦闘の被害を見ながら呟く。
「完全に虚をつかれたね…それよりも今は生徒らの安否と…あの球体さ」
その場の誰よりも小柄な根津校長が沈黙をしている球体を鋭く睨む。
誰よりも小さいのは当然、彼は人ではなく鼠…個性ハイスペックが発現し人間よりも遥かに優れた頭脳と毛並みを持つ、まさに秀外恵中。
その彼を以てしてもあの球体は異物であり見通す事が出来ずにいる。
「ハウンドドッグはUSJ内部の生徒の確認を、エクトプラズムも一緒に…」
根津が伴ってきた教師に指示を出し、素早く行動に移すヒーロー達。
「オールマイト先生!13号先生!無事ですか!?」
球体に駆け寄ろうとする緑谷と切島、だがコンクリートの壁に阻まれてしまう。
「動きは止まっているが危険なのは変わり無い、我々が対処するから生徒達は入り口ゲート前に集まってくれ」
顔も身体も指先さえも四角い教師、セメントスが個性セメントを使って球体を隔離する。
「は、はい!」「ラジャっす!」
足早に入り口に向かう二人とすれ違うように幾人の教師が現れる。
「13号!聞こえる?服がだいぶやられてるわね…傷はどの程度なの?」
球体の底面に怪我をした背中からくっついている13号に向かってミッドナイトが話しかける。
「ミッドナイト…自分の個性で背中を大きく傷つけてからずっと激痛に苛まれていたのですが、今は痛みもなく身動きも取れません」
13号は自身に起きている事を語りだす。
「この球体に轢かれてからと言うもの平衡感覚も失われてるようです。上も下もない…そんな感じです」
容態が悪化して前後不覚に陥ってる?とミッドナイトが思っていると、その声に呼応して球体の内側から声が聞こえる。
「その声は香山く―ミッドナイトに13号ですか!?」
球体の中からオールマイトの声が聞こえ、狼狽えるミッドナイト。
「オールマイト!もしかして中に居るの!?怪我とかしてないでしょうね!?」
「はい怪我はありませんがこちらも身動きが取れず― それよりも!私の目の前に脳無と言う改人が同じく身動きは取れませんがまだ戦闘態勢で残っています!」
オールマイトが脳無の個性や戦力を伝え、周りの教師達の顔色が変わる。
「オールマイト並…厄介ってレベルじゃないわね。呼吸してるのかしら?オールマイトには息を止めて貰って私の個性で眠らせましょうか?」
個性"眠り香"彼女の身体から発せられる香りは嗅いだものを須らく深い眠りに落とすミッドナイト。
「その脳無の無力化もそうだけど、この球体自体も何とかしないといけないのさ」
教師の一人、ブラドキングの肩から降ろされ根津校長が会話に参加する。
「校長先生!?危険ですからお下がり下さい!」
球体に近づいて行く根津を止めようとするミッドナイト、連れてきたブラドキングも不服そうな顔つきである。
「危険は百も承知さ!その危険を取り除く為に観察し 私も脳漿を絞るのさ!」
小さな胸を張る根津に周りに居る教師の面々は困惑する。
「根津校長、貴方は実働向きではありません。後方から指示をお願いします」
教師達に促され渋々と下がる、球体を囲っているコンクリの壁面に窪みを作ってそこから観察する妥協案になった。
「しかし見れば見る程に不思議な球体だね…見てごらん、あれは轟焦凍くんの個性で作られた氷だね。あれだけ人がくっついてるのに溶けるどころか水滴一つ付いてないのさ」
根津が指差した先には敵が何人もくっついていて見えづらい位置だったが氷片が見える。
「私の見立てではオールマイト…君の制限時間はとっくに過ぎている筈だけど、まだいつもの格好だね?」
「! その通りです、私も疑問に思っていたのです。力は発揮出来ないのに何故かトゥルーフォームに戻らず姿はこのままなのか…根津校長はその謎を早くも解明したのですね?」
個性ハイスペックは伊達じゃない、オールマイトは自分の上司が素晴らしい力を持っている事に感謝した。
「解明と言うにはまだ早いさ、ただ私の推測では…非常にまずい事態さ」
根津校長の言葉に、その場に居る教師達は固唾を呑んで見守る。
「この球体はくっついた物質を固定してしまうのさ。その時の状態から変わる事無く…13号が痛みもないと言う言葉から察するに痛みを感じると言う事さえ固定し遮断してるのさ」
「つまり…私の個性では中にいる脳無を眠らせる事が出来ない?」
自分の個性を鑑み、ミッドナイトが校長に尋ねる。
「そうなるね。しかしオールマイトや13号が意識を保ち、こうして会話が出来るのが私でも分からないままなのさ」
「声を出せているから喉や肺も動いていると言う事に…脳の電気信号も固定されていない?信号を観測する為に電極を刺して…」
校長の声がどんどんと小さくなっていき、自身のトラウマへと繋がってしまう。
「その…校長?この球体相手に我々が取れる手段は何かないのでしょうか?」
黙考し始めた校長にブラドキングが恐る恐る問い質す。
「おぉっと危ない所だったのさ!そうだね、オールマイトでさえ捕まってしまった所を鑑みるに 力技ではどうにもならないのさ」
「マズいと言ったのはこの個性が球体自身も固定しているなら外部からの干渉ではどうにもならない可能性があるのさ」
個性を生み出した本人に解除して貰うしか―そう言いかけた時、突然球体が崩壊し始めた。
外側に張り付いていた敵達が次々に地面に落ちてくる。
「一体何故いきなり!?ってそれどころじゃないわ!」
ミッドナイトが手に持っていた革鞭をしならせ13号の足へと巻きつける。
球体の底面に位置していた為に崩壊に巻き込まれる可能性があり、怪我をした彼女では押し潰されるのは耐えられないと判断した。
「ごめんなさい!少し我慢してね!…ブラド!」
鞭を絡ませた足を引っ張る、13号の身体に負担は掛かるが咄嗟の事でこれが精一杯だった。
「応っ!」
飛んできた13号を抱きかかえる様に優しくキャッチする、腕から出た大量に出た血液で。
ブラドキングの個性は操血、自身の血液を自由に操る事が出来る。
「皆!下がってくれ!ヤツが動きだしたぞ!」
崩壊し始めた球体から空に向かって二つの大きな影が飛び出す。
オールマイトと脳無が空中で殴り合い、両者共に弾け飛ぶ。
「ブラドは13号をゲートへ!ミッドナイトは球体に張り付いていた敵を個性で無力化!セメントスはオールマイトの援護さ!」
根津が指示を飛ばしながら自身もゲートへ移動を開始する。
「what the fuck!?オールマイトが居ないと思ったらまだ敵がいやがったのか!」
USJ入り口で少しづつ集まりつつある生徒達を保護していたプレゼントマイクが空中で激突する二人を確認する。
「オールマイトとやりあってるなら敵だな。今度は逃しはしねえ」
オールマイトに殴られ飛んでいく脳無に向かって四発射撃する、しかしそれは当たりはしたものの全て弾かれた。
「何だと!?銃弾が効かないだと!?」
リボルバーを構え直し弾倉に有らん限りを撃とうとした所、階下から生徒が走ってくる。
「スナイプ先生!あの黒い巨体の敵はショック吸収と超再生の個性を持っています!」
緑谷が息を切らせながらも脳無の個性や改人である事を説明する。
「what the hell!そんな化け物が居た…いや作ったって言うのか!?」
その場に居る教師や他のクラスメイトは驚きを隠せない。
「あの敵は手のついた敵の指示を聞いて動いてました、つまり耳…三半規管があると思います」
「脳についてる目も飾りではなくちゃんと見てから動いていましたので、そこで―」
緑谷が教師達に自分の分析を説明していき、そこで言葉を遮られる。
「そこまで聴けば十分だぜ緑谷MC!耳寄り情報だ!スナイプいけるか!?」
「勿論だ、見る限り他の動いてる敵は居ねえ…あのデカブツだけだ。オールマイトだけにやらせる訳にはいかねえな」
リボルバーに特殊な弾丸を装填しつつ、タイミングを計る。
「ほんとにいくら殴っても効かないね!」
襲いかかってくる脳無、オールマイトは周囲に被害が出ない様、広場から離れた場所に移動する。
正面から拳を交え、隙あらばまたバックドロップを狙おうとするも攻撃の連打がコンパクトでなかなか懐に入れさせてくれない。
「このままでは消耗戦だな!君はスタミナにも自信があるのかい!」
このままじゃ先にこっちが参ってしまう、ならばやらねばなるまい!!
そう覚悟を決め、拳を強く握り込んだ時―
「オールマイトォ!援護するぜェ!少し間合開けてくれェ!yeah!」
ドーム全体に響くプレゼントマイクの声、その声にいち早く反応し拳を繰り出す。
「DETROIT SMASH!!」
強烈な一撃を浴び、大きく後退する脳無。
そこに狙い澄ました銃弾が脳無の顔面に複数発当たり、顔が蛍光イエローに染まる。
スナイプが放ったペイント弾で視覚を奪われた脳無に更なる攻撃が加わる。
オールマイトは目の前の大気が震えてるのが見て取れた、プレゼントマイクの個性である声が指向性を伴って脳無を襲っているのだろう。
超再生と言えども視覚を奪われ、聴覚を揺さぶられては真っ直ぐ立つ事も出来ない。
覚束ない足元のコンクリートがうねり、脳無の身体に絡みつき拘束する…セメントスがオールマイトに追いついたようだ。
「みんなありがとう!」
会心のスマイルで援護に答え、脳無へと距離を詰める。
「ショック吸収…凄い個性だけど手の敵が君の弱点喋っちゃったからね、悪く思わないでね」
「敵よ、こんな言葉を知ってるかい」
拘束されている脳無の背後に立ち、首を締め上げる…チョークスリーパーホールドだ。
「ヒーローはいつでも助け合いってね」
◇◇◇
USJのゲート前に多くのパトカーと送迎車輌が並び、慌ただしく警察関係者が出入りしている。
「17…18…19…生徒は全員無事な様だね」
警部である塚内が生徒の数を確認する。
敵を拘束し連行してゆく傍ら、1-Aの面々がひとかたまりになって各々の無事を確認しあっている。
「とりあえず生徒らは教室に戻ってもらおう。すぐに事情聴取ってわけにもいかんだろ」
「刑事さん、相澤先生は…」
生徒の一人、蛙吹梅雨が担任の安否を気遣って尋ねてくる。
「そうだね、病院に連絡してみようか」
数コールもせずに繋がり、怪我の現状を伝える…
「相澤くん…くっ!私がもっと早く駆けつけていたらっ!」
オールマイトが俯いて己の不甲斐なさを悔やむ。
「ヒーローが身を挺していなければ生徒らは無事じゃあいられなかったんだ。悔やむより先に成すべき事をしよう…丁度
塚内がオールマイトの側に寄りそろそろ時間だろ?と耳打ちする。
「直接脳無とやりあったオールマイトは事情聴取するから一緒に来てくれ…校長先生、念の為に校内を隅まで見たいのですが」
「ああもちろん!一部じゃとやかく言われているが権限は警察の方が上さ!捜査は君たちの分野!よろしく頼むよ!」
塚内の意図を読み取り快諾する根津、ここからオールマイトを連れ立ってくれる様だ。
「三茶!後頼んだぞ」
猫の個性を持つ部下に現場を任せUSJを後にする。
「セキュリティの大幅強化が必要だね」
現場検証が終わったUSJ、根津がドームの被害を見ながら呟く。
「ワープなんて個性ただでさえものすごく希少なのに、よりにもよって敵側にいるなんてね…」
隣に居るミッドナイトが途方に暮れた顔をする。
「それだけじゃない。イレイザーヘッドを負傷させた人物、触った物を壊す個性…崩壊とでも言うかな」
「それとオールマイトすら拘束する球体の個性…彼らに逃げられてしまって頭が痛いよ」
立ち入り禁止と書かれたテープが様々な場所に貼られたままの広場を歩きながら根津がごちる。
「USJの修繕費の方も頭を悩ませそうだよ」
ハハッと空笑いしながら壊れた噴水の側にまで来た、その近くに件の球体が崩れたままで残されている。
オールマイトが飛び出した際に多少散らばってしまってはいるが、瓦礫の大半はそのままだった。
「あの時…急に球体が崩れたのはなんだったんでしょうか」
ミッドナイトがあの時の事を思い出しながら校長に聞いてみる、ハイスペックの個性ならば何か気がつく事もあるかもしれないと。
「制限時間がある…本人が離れてしまうと消える…一つしか球体は作れなくて帰った先で個性を使ったか」
幾つもの推論を並べながら残された物を眺める根津、既に轟が作った氷は解けてしまっている。
「残念ながら憶測の域は出ないのさ、今までオールマイトが足止めされるなんて事は起こり得なかったのさ…ん?」
急に足止める根津、後ろを歩いていたミッドナイトに蹴られそうになってしまう。
「校長先生?危ないじゃないですか蹴っ飛ばすところで―」
「ミッドナイト、急で悪いんだけど私を持ち上げてくれないか?」
持ち上げろと言う割に根津は移動してしまう、掴みそこねたミッドナイトが何事かと声をあげる。
「すまないのさ!持ち上げて欲しいのはこの場所からなのさ!」
上司の急な行動に疑問が湧くが根津を両手で持ち上げる。
「俯瞰して見る事で気がつく事があるってね!僕がもう少し身長が高ければもっと早くに気がついたのかも知れないさ!」
冗談混じりにミッドナイトに話しかける。
「それで何が分かったんですか校長先生?」
「よく見てごらんミッドナイト、オールマイトが崩壊してる最中の球体から飛び立ってくれたおかげで崩れた球体に穴が出来ているだろう?」
確かに瓦礫が一部吹き飛んでクレーターのような穴が出来ている。
球体の外側、敵や氷と割れた噴水孔しか知らなかったが…中はコンクリートだ。
こんな質量な物が13号の上に落ちてくれば彼女の怪我はもっと酷いものになっていただろう。
「中はコンクリートですか、こんな重そうな物を転がしていたなんて…この個性の持ち主もオールマイト並の力をもった脳無なんでしょうか?」
「その可能性もあるかもね。でも報告には子供、それも義務教育が始まってるかどうかぐらいの子が転がしてたそうだよ?」
ミッドナイトの質問に答えつつ、もう下ろしていいのさ、と根津が言う。
「この個性にはルールがあるね…ほら瓦礫が内側から外に向かってグラデーションの様になっているのさ」
そう言われてミッドナイトは改めて瓦礫を見る…確かに中心部分の瓦礫と外側では明らかにサイズが違う。
「オールマイトでさえ止められなかったけど対処出来るヒーローに心当たりがあるのさ」
雄英サイドのお話でした。
次はもう保須市ですね。
果たして王子はステインに気に入られるのか!?
その前に体育祭見なきゃ。
体育祭全学年を同時録画しないといけないヒロアカの住民達に同情を禁じえない。