個性『固めて転がして』   作:ドンファン

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確認作業だからと久々に塊魂をプレイしたり、勉強の為だからとノベルを読んでたりしてました。
申し訳ありません。


No.4

「ってえ…」

両腕を撃ち抜かれた弔がワープゲートから倒れる様に出てきた。

だが自分の怪我より何より言わなければいけない事があった。

「クソガキ…お前が脳無を固めなかったらゲームクリア出来てたんだぞ、先生の言っていた通り平和の象徴は弱っていた…!」

痛みに歯を食いしばりながら先に戻っていた王子を睨みつける。

「帰ってくる前も弔は僕のせいだーって言ってたけどさ?あんなにいっぱい居た敵連合の皆だってやられてたじゃん」

カウンター席で足をブラブラさせながら不貞腐れている。

「手下共は瞬殺…生徒も強かった…俺は両手撃たれた…今回の作戦は失敗だ…」

痛みと虚脱感が弔を襲い、ぐったりとした様子で呟く。

 

カウンターに置いてあるモニターが起動する。

「見通しが甘かったね」

「うむ…舐めすぎたな、敵連合なんちうチープな団体名でよかったわい…ところでワシと先生の共作、脳無は回収してないのかい?」

AFOとドクターが帰ってきた弔達を待っていたかの様に話しかけてきた。

「脳無は王子の塊に巻き込まれてしまいました…オールマイトと一緒に」

医療キットを携え、人の形へと変わりつつある黒霧がドクターへ答える。

「へえ?…それは本当かい王子?」

AFOが喜色をたたえ、上ずった声で尋ねてくる。

「そうだオールマイト!せっかく固めたのに黒霧さんが持って帰れないって!先生何とか言ってよ!」

「王子、あなたとの初対面の時に私は固められたのですが…もうお忘れですか?」

倒れている弔を治療しつつ黒霧が多少の嫌味を込めて返す。

「ほほう!オールマイト本人とそれと同じぐらいのパワーにした脳無両方をか!?」

「ふふふっ…君の個性は本当に面白いよ王子、よもやオールマイトすらとはね」

驚くドクターと喜びを隠しきれない様子のAFO。

「でも君のことだ、塊をそのままにしておく。なんてしてくれないよね」

「ボールの事?うん、手元にないと落ち着かないかな」

そう言ってボールを虚空から生み出して膝の上に乗っける。

「勿体なかったなー…オールマイト星とか凄そうだよね!太陽より明るそう!」

 

敗北を喫し逃げてきたと言うのに、のほほんとしている王子に苛つきが収まらない弔。

「オールマイト…そうだ…一人…オールマイトフォロワーの子供が居たな…俺に向かってSMASHだと…ガキが!」

水害ゾーン付近に居た生徒を殺そうとしてイレイザーヘッドと子供に邪魔された事を思い出し腹を立てる。

そんな弔を宥める様に励ます様にAFOが語りかける。

「確かに今回は失敗だったかも知れないが決して無駄ではなかったハズだ。精鋭を集めよう!じっくり時間をかけて!我々は自由に動けない!だから君のような"シンボル"が必要なんだ。死柄木弔!!次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「さーて実況してくぜ!解説アーユーレディ!?ミイラマン!!」

BARにワープで現れるとモニターから快活な声が響く、王子が雄英高校体育祭の中継を見ているようだ。

「おはよー黒霧さん!良いタイミングだね!丁度始まるよ!一年生の最初は障害物競争だって!なんかロボットがいっぱい居るよ!楽しそう!」

昨日の夜から全学年分の録画を頼んできたりとテンションが上がりっぱなしの王子が画面の前を陣取っている。

カウンターの中に入りつつ映像を見ると人より少し大きい程度のロボが氷によって凍っている。見覚えのある個性だ。

 

「おはようございます王子。今日の実地ですが…ずっと体育祭を見ていそうですね」

「体育祭何時までだっけ?お勉強は終わったらでいい?そしたら絶対やるから、ね?」

黒霧にお願いする王子だが画面からは視線を離さずに話す。

「王子、人と会話するならちゃんと相手と向き合わないといけませんよ。それと今日は私も用事が出来てしまってキャンセルなのをお伝えしにきました」

カウンター内でテキパキと食事の準備をしながらスケジュールを確認する。

「先生からの要請で"ヒーロー殺し"と接触しろと言われておりまして。潜んでると思われる保須市を探してこようと」

出来上がったサンドイッチを二つのバスケットに詰めて片方を王子の側に置いておく。

「ヒーロー殺し?テレビでも何かオールマイトがどうとかって言ってたね、敵連合(うち)に呼ぶの?」

「それは死柄木弔次第ですね、私としては彼は敵連合にとって大きな力となってくれると思ってはいますが…」

プロファイリングでは信念に殉じる思想犯であり、王子とは別の意味で弔と噛み合わない可能性もあるが―

 

「それでは行ってまいります。ブランチはそこのバスケットに入ってます、飲んでいい飲み物は冷蔵庫の下の段にある物だけですからね」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

数日後

普通のBARであれば相応しくない男が招かれた。

その男は素顔を包帯で隠し、身体の至る所に刃物を装着した長身痩躯―

ヒーロー殺しステイン。

 

「なるほどなァ…お前達が雄英襲撃犯…その一団に俺も加われと」

「ああ頼むよ、悪党の大先輩」

カウンター席に座り、現れたステインに気軽く話しかける弔。

 

「………目的は何だ」

「とりあえずはオールマイトをブッ殺したい。気に入らないものは全部壊したいな、こういう…クソガキとかもさ…全部」

そう言ってカウンターに置いてあった写真をステインに見せるよう掲げる…雄英体育祭の時の緑谷出久が写っていた。

「えー?ぶっ殺すの?体育祭凄かったじゃん1-A組のみんな!仲良しだから全員一つに固めてあげたいなー」

足を投げ出し床に座っている王子が弔に文句を言う。

 

「興味を持った俺が浅はかだった…お前は…ハァ…俺が最も嫌悪する人種だ」

ステインの鋭い眼光が弔と王子を見抜く…その両手は腰に携えたナイフを握っている。

「子供の癇癪に付き合えと?ハァ…癇癪どころか…年端のいかない子供そのものまで…ハァ…敵連合とは託児所か何かか?」

抜身のナイフを両手に垂らし、明確な殺意を弔にぶつける。

「信念なき殺意に何の意義がある」

そう言い残すとステインが黒霧に襲いかかる。傷を負った黒霧を見て王子が飛び出し―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか王子」

気がつくと部屋の隅で黒霧に介抱されていた。

文字通り一蹴され、壁に身体を打ち付けられ気絶していた様だ。

「ステインって強いんだね!黒霧さんがステイン欲しいって言ってたの分かるよ!」

「目覚めての第一声がそれですか…私が思ってる以上にタフですね」

そのステインに自分が攻撃されたと言うのに―

「あれ?ステイン居ないよ?帰っちゃった?殺しちゃった?どっちにしろ勿体なかったねー」

キョロキョロと部屋を見渡す王子が目についたのは弔だけ、何やら先生と話をしている様だ。

「彼は我々敵連合と共同歩調を取ると約束して頂けました。この場に居ないのは成すべき事の為にと保須市に戻りましたよ」

よく分からず首を傾げている王子にもう少し噛み砕いて説明しようかと思い―

 

「やっとお目覚めかクソガキ、いざって時に使えねぇなお前の個性は……そうだ」

話を終えた弔が二人の前までやってくる。

「黒霧、コイツの社会勉強とやらはどうなんだ?やれるのか?」

「…都市部での行動はこれが初めてになりますが彼なら問題ないでしょう」

頭上での会話に追いつけず呆けた顔で二人を見ている王子。

「そうか…行くぞ保須市に」

弔の声に合わせて黒霧のワープゲートが二人を覆う。

 

 

 

 

薄暗いBARから暮れなずむ外へと急に連れ出され目を瞬せる王子。

何処かのビルの上だろうか、風が強く吹いていた。

「星野王子…これまでにあらゆる場所へと赴き、貴方の興味を伸ばす様に仕向けて来ました」

黒霧が未だに座り込んでいる王子を立たせ、目線を合わせる様に立ち膝で屈む。

「今までのが勉強としたらこれは試験です…期待していますよ」

 

「試験だテストだなんてかたっ苦しい事はねえよ」

いつの間にか弔が隣に立ち、眼下の街並みを眺めていた。

「ステイン…あのムカツク先輩がこの街にいる。そこでだクソガキ、俺達とあのヒーロー殺しと大暴れ競争だ」

二人の言葉に王子は自分が何をすべきか理解する…そしてそれはずっと願っていた事でもあった。

 

「やっと街中のみんなと一緒になれるんだね!僕頑張るよ!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

保須市にある商店街は大変な混雑となっていた。

閉店時間のタイムセールが始まり、それに合わせ買い求める客や帰宅途中の人々。

それだけではない、近くに敵が現れた。と町内放送で避難勧告されていた。

野次馬に向かおうとする者や巻き込まれない様にさっさと買い物を済まそうとする者でごった返している。

 

そんな騒動に近い状態の中、一人の子供が八百屋に現れる。

「らっしゃい!」

八百屋と書かれた前掛けをつけた個性"熊"の異形である店主が出迎える。

もう夕方も過ぎて暗くなってきた、子供一人に買い物させるには遅い時間だ。

「おや?坊っちゃん一人かい。親御さんは一緒じゃないのかい?」

「いつもは一緒に居るんだけどね!今日は試験とか何かで一人なんだ!そーいや敵が出てるとか言ってたけど、お店やってるの?」

「敵が怖くて商売出来るかってんだ!周りの店の連中もそう思ってる筈だぜ!それに今日はヒーローがやけにうろついてやがるからな!」

平和呆けとも取れる楽観視。ヒーロー飽和社会だから起こってしまったとも言える危機感の欠如…それが今の日本に蔓延している。

「良かったー!最初どうしようかなって思ってたんだ、他のお店も開いてるなら次は本屋さんに行こうかな?教えてくれてありがとー!」

ニコニコと笑顔を向けてくる子供に気を良くして、つられて笑顔で対応する。

「そんなに色々買い物あるのかい坊っちゃん?お使い大変だねえ…さて何をお包みしやしょうか!」

店主と子供の間の空間に歪なボールが現れた。

 

「ここにあるのぜーんぶ下さい!」

 

そのボールを投げつけ、ぶつかり、転がって店内のあらゆる物を一つにして行く。

小さい子供の突然の蛮行に店主は呆気にとられ、行動が遅れる。

「ありがとね熊おじさん!後でまた来るね!」

店先に陳列してあった野菜やダンボールに入ったままの物も全て持っていかれてしまった。

「な、なんだあのガキ!泥棒だったのか!?待ちやがれ!」

慌てて店先へと飛び出す店主、人通りの多い往来で野菜の塊を転がしている子供は目立つ。

子供を止めようとするが人混みで追いつけない。それどころか周りから敵か!?等と声が上がってしまう。

「違ぇよ!万引だよ万引!野菜をうちの店から盗んでいった子供がいんだよ!」

指差した方向には既に子供は居なくなっていた。

悲鳴が聞こえ、そちらに目を向けると本屋のおかみさんが客と共に血相を変えて店から出てきた。

確かあの子供は後で本屋にも行くとか言って…

 

「誰かヒーローを呼んでおくれ!」

慌てふためいた様子に通行人も怪訝な顔で眺めている。

「本屋の!もしかして野菜持った子供の仕業か!?」

「熊田さん!アンタん所の野菜だったのかい!?ってそれどころじゃないよ通報しなきゃ!」

八百屋がへたり込んでいるおかみさんに近づき確認する、やはりあの子供の様だ。

「あの万引小僧め!とっちめてやる!」

個性故に腕力に自信があった八百屋の店主が毛を逆立たせながら本屋の入り口を潜り―

 

本の塊とぶつかる。

あまりの衝撃に弾き飛ばされてしまい、複数の通行人にぶつかりながら止まる。

何とか立ち上がろうとした時、目の前の塊から声が聞こえる。

「あれー?まだダメだったかな?もう一回試してみよ、何度でもチャレンジ!」

聞こえるや否や塊がこちらに向かって転がってくる。這這の体で回避しようとするが、ぶつけられまた弾き飛ばされてしまう。

「あー熊おじさん大きいからかー!でも他の人はいけたし、もう少しだよね!」

今度は建物の外壁にぶつかる。何とか体勢を立て直し、目を白黒させながら周囲を確認すると…悍ましい物が見えた。

本の塊に先程ぶつかってしまった通行人がくっついている…その人々から耳を劈くような悲鳴や助けを求める声が聞こえる。

「な、何なんだよこれは…こんな個性聞いた事もねえぞ…」

そのあまりにも悍ましい光景、助けを求める声と少年の明るい声の相異にすっかり腑抜けになってしまい、逃げ出す事も出来なくなる。

 

「さあ熊おじさんも一緒に行こうよ!パーティーが始まるのさ!」

 

 

 

 

一度転がりだしたボールを阻むものなく、まさに順風満帆。

商店街にあるもの全てを固めてそのサイズは6mに迫る。

とりわけて商店街の人たちを一緒に固める事が出来た。王子にとってそれは大事な事だった。

「仲良しはいつも一緒にいたいよね!僕も仲良しになりたいし!」

固まってる人たちにそう明るく話しかけながら塊を転がし、聞こえてくる怨嗟の声は何処吹く風と聞き流す。

次は何処行こうかなと考えながら大通りへと差し掛かる。

 

サイレンを鳴らし急行している緊急車両の列が王子の前を通る、その先では大きな火災が起こってるようだ。

「そーいや脳無くんも一緒に来てるんだっけ?それともステイン?」

視線の先で爆発が起こる…どちらが居るにせよ派手にやっている事は確かな様だ。

「あっちに行ってみようかな?試験って何すればいいんだろ?」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「チッ、なんだ…やるじゃないかご老人」

エンデヴァーは暴れていた敵を一撃で地面に沈めた見知らぬ老人ヒーロー…グラントリノに対して評価を下した。

隣の区画から爆発音と共に悲鳴や怒号が聞こえる。

「あっちはヒーローが集中していたハズだが…」

「早くこいつの拘束、身柄引き渡しを済ませて加勢に行くぞ」

 

戦いが始まる前の事を思い出すエンデヴァー。

息子(焦凍)が明後日の方向に踵を返し、去り際に残した言葉が引っかかる…

「そいつは…うちのサイドキックに任せろ。ご老人は今から言うアドレスへ向かってくれ」

グラントリノは訝しみながらも耳を傾ける。

「加勢はこのエンデヴァー一人で事足りる」

 

 

 

老人と別れ、未だ黒煙が立ち上る現場に到着したエンデヴァー。

黒い肌と剥き出しの脳を持つ大柄な敵と翼を持ち自由に空を飛ぶ同じく剥き出しの脳を持つ敵を見定める。

「エンデヴァー!自在に空を飛び鉤爪で襲ってくる敵が一人!あの黒い敵は増強系と硬化系の個性を持っています!どちらとも近接戦闘は危険です!」

既に戦っているサイドキックの一人が情報共有すべく声を掛ける。

「ならば相性の悪いヒーローは別の場所へ応援に行け!ここは俺が受け持つ!」

応援先の住所を聞き、素早く行動するヒーロー達とすれ違いながら巨躯の敵へ対峙する。

 

新たに現れたヒーローにその大きな身体に似つかわしくない素早さで襲いかかるが―

「ふん!その程度で増強を名乗るか、スピードがその程度ならば力も底が知れるな!」

猛烈な炎を真正面から浴び前に進めなくなってしまうが、倒れる事はなかった。

「それと硬化か、しかし動きが止まってしまうのならばザコ個性よ!」

両腕から噴き出す火力が増す。付近の建物に被害が出てしまう程だ。

「もう一匹居るのでな!時間を取られる訳にはいかんのだ!」

上空でヒーローと戦ってる敵を見て、次に打つ手を考えつつ更に火力を上げる。

体力の限界か、それとも酸欠か…炎の中の敵が地に伏せた。

 

 

 

「手荒になってしまったな、次は飛んでる奴か…ん?」

空を見上げた時に"それ"に気付いた。

低層のビルの背後で蠢く巨大な何か。

黒煙によって全体像は掴めないがゆっくりとこちらに向かって来ている様だ。

"それ"が近づいて来るにつれ、声が聞こえてくる。

ヒーローに助けを求める声の様だ…避難は完了しているのではないのか?

「貴様ら!市民の避難誘導終わっていなかったのか!?」

声を張り上げ、周りにいるヒーローやサイドキックを怒鳴りつけるエンデヴァー。

その声に答えたのはヒーローではなく、まだ声変わりもしていないであろう少年の声が響く。

 

 

「えっとね、避難誘導?してる方から来たんだ。みんないっぱい居たからね!」

まもなくして"それ"がビルの影から姿を現した。

火災によって照らし映されたシルエットは球状。表面には乗用車やガードレール…それと人がそのままの姿で張り付いている。

 

「なんだ…これは」

目測で15mはあろうかと試算する。

張り付いた市民の一人がエンデヴァーが来た!と声を上げるとその塊から異口同音に救いを求めるエンデヴァーコールが始まる。

かなりの数の市民が巻き込まれているようだ、迂闊に炎を使う事が出来ないと悟ると通信を行う。

「巨大な球体の敵が現れ多数の人質を取っている。サイドキック達は周囲に潜み情報を探れ!俺は…時間を稼ぐ」

 

髪や髭、肩から噴き出す炎の勢いを強めながら塊へと歩を進める。

上空で戦ってるヒーローはまだ耐えるだろう。このサイズの敵を後回しにする訳には―そう考えていると先程の少年の声が聞こえてくる。

 

「エンデヴァーが居るの!?えーなんで?住んでる所って違う場所じゃなかった?レアだね!」

塊が止まる。この少年の声がこの個性の持ち主なのだろう…何処からか見ている様だ。

こちらに興味を示しているのならばサイドキック達の移動時間を稼ぐのは容易だろう。

 

「そこの球体に告げる!この俺がエンデヴァーだと知って抵抗するのか?さっさと個性を止めないと火傷ではすまんぞ!」

「夜だと凄い目立つねエンデヴァー!凄いな!欲しいな!燃えてるしお星さまって言うより太陽かな!」

一切会話が噛み合わず要領の得ない。

(何を言ってるのだこの敵は…薬で我を忘れてるのか?ただの気狂いか?)

サイドキック達の展開はまだ完了していない…まだ時間を稼がねばならない。

「貴様の目的はなんだ!?球体に巻き込まれた市民を解放しろ!」

 

「そーいやエンデヴァーってサインとか書かないんだよね?本物鑑定団で全部偽物扱いされてたよねサイン!サイン書いてよ!」

突拍子も無い要求に面食らうエンデヴァーとサイドキック達。

「僕の周りに居る…近いのは包帯みたいなマスクしてる人かな?近くのビルに文房具コーナーがあるから色紙持ってきて!」

周囲を取り囲みつつあるサイドキックの一人を名指ししてヒーロー達を驚かせる。それ所か付近の建物の中まで見えているようだ。

 

「エンデヴァーどうしますか?」

指名されたサイドキック、キドウが通信で指示を仰ぐ。

「相手の個性は未知数で人質も居る。こちらの行動は見られているようだが構わんさっさと包囲しろ…キドウ、時間を稼ぐ為だ持ってこい」

その一人が包囲網から抜け出しビルへと入る。

「再度聞く、貴様の目的はなんだ!?俺のサインが欲しいが為にこんな騒動を起こしたとでもいうのか!?」

「エンデヴァーが居るなんて知らなかったよ?目的はなんだっけ?なんかステインがどうこう言ってたのは覚えてるよ」

初めてまともに会話が成立した…そしてその会話は内容の多いものであった。

 

(ステイン!やはりあのヒーロー殺しはこの街に潜んでいたか…言ってたとの発言を鑑みるにこの敵は誰かしらの指示に従っている。ステインは単独犯であるというプロファイリングがある…敵の第三勢力?)

 

思索しているエンデヴァーに通信が入る。

「こちらバーニン!球体の背後に子供らしき人物を発見!球体に手を置いてる所から見るにこの個性の持ち主かと!」

「遠隔操作ではなかったか…俺が隙をつくる。確保の際はあの塊には触れるなよ」

そうこうしていると色紙を持ってキドウがやってきた…わざわざサイン用の太いペンまで持ってきていた。

「店の人が居ないので領収書はありません、料金はレジの脇に一筆添えて置いてきました」

「…この状況でよく軽口を叩けるな貴様」

 

色紙を受け取り、塊へと向き合うエンデヴァー。

「要求通りサインを書いてやろう!なんと宛名を書けばいい!?貴様の名を名乗れ!」

「ほんと!?プリンスって書いて!でも名前の入ったサインってレアじゃなくなるんだっけ?」

名前を聞き出す事は出来たがあだ名か何かかも知れない、使えそうにはないか…そう考えながら慣れない手付きでサインを書いていく。

出来上がったそれはサインではなく署名に近い、簡素なものだった。

「クソ、なんでこんな物を俺が…出来たぞ!くれてやるから受け取りに来い!」

サイン色紙を掲げこちらに来る様に促す、周囲のサイドキックがその隙を狙うが―

 

塊がエンデヴァーに向かって動き出した。

咄嗟に確保に動いたバーニンだったが、背中に目がついてるかの様に避けられてしまう。

「ありがとエンデヴァー!色紙も本人もどっちも貰うね!」

「貴様っ!全て茶番だったか!?」

加速のついた塊を辛うじて横に回避し、すれ違いざまに背後に居るであろう敵に火炎を飛ばす。

 

しかしそこには報告にあった子供がおらず…いつの間にか塊の天辺に居た。

「あっつい!エンデヴァーの炎凄いなー!でもこんなに熱いと固めるの大変そうだなー」

自分の居た位置が轟々と燃えている様を見てどうしようかと思案する王子。

 

「動き出したのなら仕方あるまい!逃がす訳にはいかんのだ!」

エンデヴァーの腕が、身体が、赤く燃え上がる。

ビルにぶつかり動きを止めた塊へ…ではなく周囲を燃やす。

そして逃さんとばかりに自身が火柱となるかのように火力を上げていく。

「酸欠で意識を刈り取り、その後捕縛する!市民への被害を最小限にするにはこれしかないっ!」

出来うる限り熱は与えない様に間合いを図って炎を噴き出し続ける…身体に熱がこもり始めるがここで止める訳にはいかない。

 

 

 

 

 

炎に照らされ、日中とも言える程の明るさに王子は立ち眩みする。

「眩しいしあっつい!流石だよねエンデヴァー!ぶつかれば固められそうだけど火傷するのはやだなー…もういいや、この辺にして星にして―」

 

そう口にしてふと気がつく…自分はどうやって星にしてきたのだろうか?

 

いや、今までも星にした事なんて一回もなかった。

この瞬間まで出来るものだと、やれるものだと思っていたのだが…出来ない。

何か足りないのか?

やり方があるのか?

燃え盛る炎を見つめ、自問自答するが答えは出ずにいる。

暑さも感じず汗も出てない事に気がつくが、それどころではない。

何故出来ない?

薄れゆく意識の最中でもその事ばかりが脳裏をよぎる―

 

 

 

 

 

 

 

「バイタルサイン低下を確認…ここまでの様ですね、帰りますよ王子」

現れた黒霧が意識を失う瞬間の王子をワープゲートで救い出す。

 

 

 

◇◇◇

 

 

「帰ろ」

ステインの動向を見ていた弔だが、双眼鏡を崩壊させながらそう呟く。

「満足いく結果は得られましたか?死柄木弔」

ワープゲートを開きながら感想を聞く黒霧。

「それは明日次第…俺も少し認識を改めないとな」

 

その視線の先は今もなお救助作業が続く瓦礫の山―王子の足跡。

 

 

 

 

 

 

 




地の文は難しいね…相変わらず書き散らかしてます。
原作を壊さない様に、でも変わって欲しい所は変えていきたい…そんな感じでやれたらいいな。
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