転生したらプリキュアだった件 ~助けてくれた女神様の世界をプリキュアになって守りたいと思います!~ 作:Yuukiaway
「…我々はどうやら、あなたがたを低く見積もりすぎていたようです。」
生け捕りにしたゴブリンの群れを引き取り来きたギルドの職員が蛍達にそう言った。
「まさか生け捕りの方が難しいとは思わなかった。退治していいのか分からなかったからロープで縛り上げただけなんだがな…」
職員と話しているのはギリスだ。
表向きは彼がこのギルドのリーダーだからだ。おそらく職員はギリスがゴブリン達を捕縛したのだと思っているだろう。
職員の話によると、ゴブリンだけでなくクエストで対象になる魔物の大半は生け捕りにした方がいいらしい。
生きたままの方が効率よく素材を採取できるからだ。
「じゃあこのゴブリン達の対処は任せていいんですね?」
「ええ。詳しく計算しないと分かりませんが、少なくとも報酬は2倍以上はかたくないと思われます。
ちなみに、生け捕りより討伐した方がいい魔物の例は、素材があまり取れない場合や、巨大で存在するだけで人々の安全に差し支えるような魔物が当てはまります。」
そうして、ギルドの人間たちは縛られたゴブリン達を全員荷台に乗せた。
「では我々はこれで失礼します。報酬の方はどれくらい増えたかを詳しく計算する必要がありますので、明日 またギルドにいらしてください。
それから、我々のギルドの署長があなたがたに詳しく話を聞きたいそうなので、もしよろしければいらしてください。」
ギルドの人達はその場を去っていった。
「…ギリス、どうする?」
「行くしかないだろ。そもそも俺たちの今の拠点はそこなんだから。」
ーーーーーーーー
「君らが【
今回の活躍は聞いているよ!」
この明るそうな初老の男性がここのギルドの署長なのだと言う。
「まぁなにか飲みながらはなそう。座ってくれ。」
蛍とギリスは署長の前に座った。
「要件は何なんだ?」
「まずは君らに心から礼を言いたい。
というのもゴブリンというのは実に厄介な魔物なのだが高ランクのギルド達には軽視されがちであまりクエストが受注されていないのだ。だから今回のような活動があると我々はとても助かるのだよ。」
一休みするかのように署長はカップに入れられた飲み物を口につけた。
「━━━それでどうだろう。ギルドのランクをあげてはみないか?
そうすれば周りの目を気にせずにさらに高いランクのクエストも受けやすくなる。
それに周囲から白い目で見られることもなくさらに高い報酬を払うことも出来る。
だから━━━━━」
「それは遠慮しておきます。」
そう話を遮ったのは蛍だった。
「どうしてだね?
いくら発展途上のギルドとはいえ、ランクが上がれば周囲の評価も高くなる。
これは生々しい話になるが、君らのような急成長するギルドを疎ましく思う心無いやつらも少なくないんだ。
だからそういう者たちに目をつけられないためにもランクは上げておいた方が━━━」
「馬鹿馬鹿しい。
たかが格付けに翻弄され、下を見て満足しているような小物共に俺たちが潰されるとでも言いたいのか?」
ギリスも蛍の意見に賛成していた。
彼が知らないとはいえ魔王としての誇りにかけて今の軽く見られた発言は聞き捨てならなかった。
「それに私たちはまだまだ未熟なんです。
今のDランクからのスタートだって買いかぶられてると思ってます。
だから、ギルドのランク上げはこれから経験を積んでもっとギルドが発展してから申請したいんです。」
「……そうか。あくまでもそれは君達の自由だからな。気が変わったらいつでも申請してくれたまえ。」
***
蛍達がギルドの署長室から出てくると、3人に注目が集まった。
昨日結成したばかりの新米が署長から声がかかったとなれば、それも当然である。
そして、
「おいおい。署長からお呼ばれなんていいご身分じゃねぇかよ」
そんなことを言いながらギルドマスターのギリスの肩に酔っ払った冒険者の男が絡んできた。
ギルドは冒険者達の拠点なので、依頼の掲示板だけでなく食事処や酒場も完備してあるのだ。
だから、このような酔っ払いも当然発生する。
(やっぱり!だから言わないことじゃない!)
小窓から蛍達を見ていた署長が悔しそうに心の中で言った。
しかし、
絡んできた男の腕がギリスの肩から外れた。
そして蛍達はそのままギルドを出ていく。
不審に思った男の仲間のギルドの人間が駆けつけると、奇妙な、そして衝撃の事実が分かった。
その男は
***
「ねぇ、さっき何をしたの?」
ギルドを後にした蛍がギリスに聞いた。ギリスは既にギルド内で続けていた青年の姿から少年の姿に戻っている。
「指先に魔力を込めて、腹をこう
ブスッ とな。」
ギリスはそう得意げに指を立てながら彼の腹に魔力を込めた一本貫手を打ち込んだことを伝えた。
「……ハハ。怖いことするんだね。
殺しちゃった感じ?」
「さあな。お前の目の前だ。死なないように加減はしてやったつもりだが、生きている確証はない。
もっとも、どちらにしても下を見て一喜一憂するようなあんな男、どうせ早かれ遅かれ行き倒れるものと相場は決まっている。
それに俺も早く元の姿に戻りたくて内心穏やかじゃなかった。平常心ならもっと穏便に済ますことができたかもしれない。」
そんな少し殺伐とした会話を交わしながら通りを歩いていると、いつの間にか日が傾いていることに気づいた。
「そろそろ寝る所でも探さない?」
「そうだな。近場で探すとするか。」
こうして蛍とギリスの初仕事は全て滞りなく終わったのである。