転生したらプリキュアだった件 ~助けてくれた女神様の世界をプリキュアになって守りたいと思います!~ 作:Yuukiaway
『魔物が発生したから応援を要請する』
その旨を言った男の意図が蛍には分からなかった。オルドーラはこの警備団の団長であり、そんな男がわざわざ魔物討伐に駆り出させる必要は無いと思ったからだ。
「…………そいつァどの方角だ?」
「えっ!?」
オルドーラの意外にも意欲的な発言に蛍は面食らった。視線を送ると彼の口元が綻んでいた。
「場所はここから七時の方向!! 魔物の数は更に増える可能性もあります!!!」
「……そうか。
よっしゃ!!すぐに行くからヤツらに伝えとけ!!!」
「………!! 畏まりました!!!」
オルドーラが出動を承諾するや否や駆け込んできた男は安堵の表情を浮かべた。それだけ彼の力が絶対的な物になっているのだろう。
「………お、」
「!?」
出発する為に箒を手に取ったオルドーラは何かに気付いたかのように蛍を見た。そして彼女の方へと歩み寄り、その顔をじっと見つめる。
「………な、何ですか………………?」
「お前、
「えっ!!?」
数秒かけてオルドーラの質問の意味が『俺の戦いに興味があるか』という物だと理解する。
「ま、まぁ 無いことも無いですけど。」
「そうか。なら決まりだな。
おいタロス! こいつちょっと借りてくぞ!!
「えっ!!? うわっ!!」
そう言いながらオルドーラは慣れた手つきで蛍を片腕で抱え上げ、肩に担ぎ上げた。そして両手に蛍と箒を持って窓の方へと走って行く。
それを黙って見ているギリスでは無かった。
「おいお前!! 何を勝手な事を言っている!!!
戻って来━━
!」
オルドーラに抗議しようとしたギリスをタロスが手で制した。同様にイーラも目を閉じて俯いている。
「タロス!! お前何を!?」
「駄目なんですよ ギリスマスター。
ああなった団長はたとえ魔王でも止める事はできません。だけど安心ですよ。
あの人と一緒に居る限りは彼女は安全ですから。」
「………………!!」
***
「ちょっと離してください! 私をどうする気ですか!?」
「どうもこうもしねぇよ。お前はただ俺の戦いぶりを見てくれりゃ良いんだからな!
そぅら!」 「!!!?」
オルドーラは窓を開けて箒を落とし、窓から身を乗り出してその箒に飛び乗った。片腕で蛍を担ぎ、もう片方の手で箒の先端を握っている。
その時に気がついたが箒の先端はジグザグに曲がっていた。それは言わずもがな魔法使いが愛用する箒だ。そして蛍の頭に一つの懸念が浮かび上がる。
(……魔法の箒が
って事はまさか………………!!!!)
「あ、あのぉ…………
団長さん、これって……………」
「黙って口塞いでろ!! 舌ァ噛むぞ!!」
「!!!」
『舌を噛む』
その文言で蛍は確信した。この言葉が聞こえた時に起こる現象は今も昔も一つしか無い。
ボヒュンッ!!!!! 「!!!!!」
オルドーラの箒の穂の先端に赤く光る魔法陣が浮かび上がり、そこからとてつもない炎が吹き出した。その力は推進力となってオルドーラを物凄い速度で飛ばす。
「イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙イ゙!!!!!」
「ハッハッハ!
やっぱ戦場にゃ真っ先に飛び込むに限るぜ!!!
これだから止めらんねぇぜ!! 《切り込み隊長》はよォ!!」
蛍は恐怖と耳を通り抜ける風を切る音でオルドーラの言っている事は全く聞き取れなかった。
その間 彼女が思っていたことは誇張無しで音速に達しているのではないかという事だ。
***
オルドーラの肩に担がれて飛んでいた時間は数十秒程度だったが、蛍には何十分にも何時間にも感じられた。着く頃には彼女はそれこそ魂が抜けてしまったかのようにぐったりとしていた。乗ったことは無いが自分が絶叫マシンに乗ったらこんな感じだろうなとそんな事を思っていた。
「おー こりゃ酷ぇや。死人は出ちゃねぇ見てぇだかな…………
おいお前、生きてるか?」
「…………………!!!!!
(誰か、私にこの人をぶん殴る許可を下さい………………!!!!)」
二人の目の前に広がる状況は男の報告と何ら変わっておらず、暴れ回る魔物の側で武装した冒険者と思われる男達が血塗れで倒れているというものだった。
その場にオルドーラは徐に降り立つ。
「!! オルドーラさんだ!!! オルドーラさんが来てくれたぞ!!!」
「やった!! 俺たち助かるぞ!!!」
「いつもみたいに蹴散らしちゃって下さい 団長!!!」
オルドーラが到着した。
その現象だけで今まで虚ろな顔をしていた男達は希望に満ち溢れた声を上げた。それほどまでに彼は信頼される強さを持っているのだ。
「おい誰か、動けるヤツがいたらこいつを頼めるか?
俺の戦いが見えて、それで巻き添え食わねぇ所まで離れてくれ。」
その一見 かなりの無理難題に聞こえる注文を承諾したのは動ける人達全員だった。傷だらけの身体に鞭を打って蛍の身の安全を確保し、魔物に向かっていくオルドーラと一定の距離を保つ。
「………ハイオークにホブゴブリンと来たか。いつにも増してベタな面子が揃ったな オイ。」
箒を振り回しながら魔物達に近付き、オルドーラは純粋な笑みを浮かべた。
しかし蛍は心のどこかでまだ彼の実力を信じきれないでいた(その大部分は無理やり連れてこられたからであろう)。
「……あの、すみません。
一つ聞きたいんですけど、あの人って本当に強いんですか?」
「何言ってんだよお嬢ちゃん!冗談言っちゃいけねぇよ!!
オルさんの魔法はな、天下一品なんだぜ!!! あんたもその目で見てみりゃ分かる!!」
蛍は男の手放しの賞賛を聞いてもなお信じきれずにいた。
その猜疑心が吹き飛ばされることを彼女はまだ知らない。