転生したらプリキュアだった件 ~助けてくれた女神様の世界をプリキュアになって守りたいと思います!~ 作:Yuukiaway
徹夜
齢十四の少女 夢崎蛍がそれを経験したのはこれが最初だった。十分な休息が取れていない状態で動き回った身体も何度も命の危機に遭った精神も両方共に限界を越えていた。本来ならば直ぐにでも休息が必要だったが、心がそれを許さなかった。
ガミラの死と《勇者》という存在が精神が静まるのを邪魔していた。
本部に戻って手当てを受けた後、ベッドに横になったものの眠る事は出来なかった。結局、ベッドに座って時間が過ぎるのを待った。
━━━━━コンコンっ 「!」
『ホタル。私です。フゥです。』
「あ、あぁ、今開けるね。」
マリエッタは峠は越えたものの魔法が使える状態ではなく、蛍は一般団員の回復魔法を受けた。それでも無いよりは絶対的に有益であり、彼女の身体は普通に動く分には何も問題は無い程度には回復した。団員達の話では身体に巻いた包帯も数日で外せるらしい。
「━━━━━あ!」
「この姿を見せるのは初めてでしたね。
改めまして フゥ・フルフワン・ティンカーナです。これから宜しくお願い致します。勇者 ホタル・ユメザキ。」
「う、うん………!」
扉の向こうに立っていたのは緩いカーブのかかった長い金髪の女性だった。耳は三角に尖り、背中には半透明の羽が生えている。蛍は彼女の言葉を聞くよりも早く目の前の女性が変身前のキュアカーベルであると理解した。
「どうやらお身体の方はもう大丈夫なようですね。」
「そうだね。 それよりカーベル、じゃなくてフゥちゃんも大丈夫なの? フゥちゃんもガミラに結構やられてたでしょ?」
「私も問題はありません。私は妖精族ですので魔力の恩恵を強く受ける事が出来ます。故に回復魔法も早く効きます。」
「そうなんだ………………
それで、ギリスは今どうしてる? まだ寝てるかな?」
「おい。人を寝坊助みたいに言うのは止めろ。俺はここだ。」
「!! ギリス!!!」
廊下を歩いて少年姿のギリスが現れた。顔は気丈に振舞っているがその姿は痛々しいものだった。
白い患者衣に身を包み、そこから見える腕や脚には隙間無く包帯が巻かれていた。更に決定的だったのは片脚を松葉杖を突く事で庇っている事だった。それがギリスの状態が決して良くないものである事を物語っている。
「ギリス!! 大丈夫なの!!?」
「お前と同じで峠は越えた。それよりもお前の方だ。俺が醜態を晒している間に色々な事が起こったと聞いている。
俺達にとって良い事も、悪い事もな。」
「そ、そうだね……………。」
《
魔法警備団 本部近くの森という戦場で一夜にして何が起こったのかと聞かれれば本当に色々な事が起こったと答える他無い。
蛍は思い返してもそれが実体験であるという感覚が今一つ無かった。一つ言える事があるとすれば、あの夜は今まで経験した中で一番長く、そして一番悪い時間だったという事だ。
「どちらかと言えば良い事の方が大きかったのがせめてもの救いだな。特にお前が刀剣系
「それなんだけどさ、もしかしてギリスも私が
「可能性の範囲ではあるが予想はしていた。ここまで早いとは思っていなかったがな。
その甲斐あってこの夜襲を誰も死ぬ事無く切り抜けられた訳だ。それに収穫はもう一つあった。 ほら。」
「!!」
ギリスは服を捲り上げて包帯が巻かれた胸を見せた。不意の行動に蛍は一瞬 動揺するが直ぐにはっとする。通常ではありえない状態が彼の胸に現れていたからだ。
「も、もしかしてそれ、血が止まってるの……………!?」
「そうだ。お前が強くなってくれたお陰で俺も着実に元の力を取り戻せている。その甲斐あって胸の傷も既に塞がった。
痕は当分残るだろうが、回復すればその取り戻した力を使う事も出来る。或いは《
「そうなんだ。 ところで、今って何時?」
「今が丁度 七時だ。 俺は止められてるが、朝飯は食うのか? 三十分もすれば支度が済むと思うが。」
「うん。一応食べるよ。
それでフゥちゃん、ごめんだけど少し外してくれない? ギリスと話がしたいの。」
「畏まりました。」
フゥは慇懃な口調で答え、そして部屋から出た。
***
「なんだ? 俺と話がしたいと言うのは。」
フゥが部屋から出たのを見届け、ギリスは覚束無い足取りながらも蛍の前に座った。
「……実はガミラの事なの。」
「ガミラ? 警備団の奴等が回収した遺体の男か。奴等はそいつが勇者連続殺人事件の犯人だと睨んでいるそうだが。」
「睨んでる じゃないよ。犯人はそいつだったんだよ。 ガミラはなんでか勇者をメチャクチャに恨んでた。 何か分かる事ない?」
「これといって無いが、強いて言うならその事件の最初の被害者が《ラシアス》という奴等だったという事くらいだな。新聞では街で好き放題したり医者を脅迫していたと書いてあったな。恐らくそのどこかでガミラという奴の恨みを買ったんだろ。
そこをヴェルダーズに付け込まれたんだ。」
「………………………」
蛍はギリスの言葉を俯きながら聞いていた。頭の中でガミラの憎悪に満ちた形相とそれと対称的な涙を流した穏やかな死に顔が反芻される。
「………………ねぇギリス、」
「なんだ。」
「………《勇者》の定義ってなんだと思う?」
「なんだ。その殺人犯に何か言われたか?
ルベドを見たろ。力に選ばれ、悪を挫く為にその力を使う者、それが勇者だ。」
「……そう。 じゃあルベドさんにとってギリスは悪だったんだね?」
「そう誤解されていた事は否めないな。
あの時はまだ互いの理解が殆ど無かったからな。」
「………………………」
蛍はギリスの言葉を聞き、その中の《理解》という言葉を強く印象付けていた。