転生したらプリキュアだった件 ~助けてくれた女神様の世界をプリキュアになって守りたいと思います!~ 作:Yuukiaway
食事を終えた蛍達は店を出て、町の入口で貰った観光の地図に目を通していた。
「腹埋めたのァ良いけどよ、この後は何やんだよ。言い方ァ悪ぃけどこんな田舎町なんて観るもんなんかねぇだろ。」
「じゃあさ、こことか行ってみようよ!」
「ォン? ここだァ?」
蛍が指差したのは地図上のツーベルクの教会だった。
「こいつァ教会か?
生憎だがよ、俺等の里は
「龍神信仰? 龍神武道会の話?」
「そうだ。ジジィの奴がよ、俺がガキの頃から一言一句覚えちまうくらい何回も何回も伝えてくれたんだぜ。
***
《創造主 龍神》
これは、龍の里に伝えられている神話である。
遥か昔、星も命も何も無い空間に一つの卵があった。その卵から産まれた金色の龍は何者でもないが、膨大な力を持った龍だった。
ある日、何者でもない龍は一人の男と出会い、名前を与えられ、知識を与えられた。その男はこの世のどこにも存在しない世界に憧憬の念を抱いていた。龍は友情を知り、感情を知り、別れの時まで楽しい一時を過ごした。
男と別れた後、龍は持っていた力に名前を付けた。膨大な力を駆使して男が憧れたこの世のどこにも存在しない世界を作り出した。
此れこそが何者でもなかった一匹の龍が創造主になった逸話である。
***
「━━━な? おかしな話だろ?
もしその話が正しかったらよ、この世界はみんな一人の龍神サマが創ったって事になるんだぜ?」
「じゃあリナちゃんはその神話は信じてないの?」
「絶対にそうとは言わねぇけどな。
少なくともジジィは竜人族にゃ龍神様の血が流れてるって上機嫌に能書き垂れてたけどよ。」
「……で、その龍神様、名前を貰ったって言ってたけど、どんな名前を付けてもらったの?」
「名前か。それなら知ってるぜ。
全然 長ったらしい名前じゃあ無かったな。確か━━━」
「龍神《ダラマ》様の事ですね。」
『!?』
神話の話題で話し込んでいる蛍とリナに、穏やかな顔の老人が口を挟んだ。
「なんだよアンタ。」
「ああ。これは失礼。私、この街の真ん中にある教会で牧師として働いている、ジェームズと申します。随分珍しい話をしていたもので声を掛けてしまいました。
しかし珍しい事もあるものですねぇ。このツーベルクによもや竜人族が現れるとは。」
ジェームズと名乗った老人はリナを見詰めながらも、その表情には疚しい感情は含まれていないように蛍の目には見えた。
「珍しい話って、さっきの神話の事ですか?」
「もちろんそうです。若い頃、文献を読んで勉強させていただきましたから。」
「もちろんってアンタ、この
この街にゃこの街で信じられてる神サマが居んだろ?」
ジェームズは目を閉じて数秒 間を置いてから口を開いた。
「………もちろん、このツーベルクにはツーベルクを護ってくれる神様が居ると、少なくとも私達は信じています。しかし、だからといって他の
「答えになってねぇぞ。俺はなんだって他所の神話なんか勉強してんだって聞いてんだよ。」
「………それは単純に私の興味です。知識として知っておきたかった。それだけですよ。」
「じゃあなんだ。アンタは『たった一人の龍がこの世界全部創った』って話を
「面白い ですか。否定はしませんね。
随分と現実離れしたその話に魅了された部分があるのは事実です。」
『……………………………』
「おっと。つい話し込んでしまいましたね。
それで、おふたりはこれからどちらに。」
「私達、二人で旅行に来てて、これから教会に行ってみようかなって言ってたんですよ。」
「そうだったのですね。それならば私がご案内しますよ。」
「!」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
案内役を買って出てくれたジェームズに対し、リナは先程の不機嫌な発言を不適切だと省みた。
「しかし、これで
「三人目? 何がですか?」
「今日 ここの教会を訪れた観光客の方がですよ。穏やかな青年の方がお越しになったようです。この町の人間は皆、神様のご加護によって平穏な日々が保たれていると信じていますから。」
ジェームズはそう言ったが、彼はまだ知らない。その観光客の青年の手によってツーベルクの平穏が尽く破壊されるという事を。