転生したらプリキュアだった件 ~助けてくれた女神様の世界をプリキュアになって守りたいと思います!~   作:Yuukiaway

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278 勇者と武闘家の憩い! ツーベルクの一日! (前夜)

《ヴァヌドパレス》

時刻は夕方

ギリスは自分の部屋で椅子に座り、包帯の上から胸を摩って傷の治り具合を確かめていた。ガミラに付けられた傷は依然として重く、フゥ達の魔力を以てしても今だ完治していない。

 

(…………血の滲みは収まり問題無く歩けるまでにはなったが、一線で戦えるようになるまでにはまだ時間が掛かるな。)

 

傷の具合を把握したギリスは、ガミラに斬られた当時の事を思い起こしていた。彼の頭に過ぎるのは当時の自分の行動だ。

 

(…………あの時、敵は確かに俺じゃなくて蛍を狙っていた。あいつが《勇者連続殺人事件》の犯人だったから、蛍を狙ったんだ。

だが俺は殆ど無意識にあいつを庇った。あの攻撃で命を断ち切られていた可能性も十二分にあったのに だ。)

 

ギリスは自分の心情の変化を実感していた。かつての自分なら身に近い人物ならいざ知らず、ただの人間の少女の為に命を張ったりはしなかった。

 

(無慈悲に見捨てるとまでは言わないが、かつての俺なら少なくともあんな大それた無茶はしなかった。俺は既にそこまで丸く()()()()()()()のか。それともあいつが既に俺にとって《身に近い人間》になっているのか。

()()()()のように。)

「!」

 

そこまで考えた時、ギリスの側の通話結晶が光った。迷わずに結晶を手に取る。通話の相手が分かっていたからだ。

 

「………俺だ。旅行は楽しんでるか?」

『ギリス! こっちはメチャクチャ楽しいよ!!』

「楽しいなら良いんだ。危ない事はないか?」

『それも全然無いよ! リナちゃんも楽しんでくれてるし。』

「それを聞いて安心したぞ。それで、あいつは今何をしている?」

『リナちゃんなら今お風呂入ってるよ。 一緒に入ろうって言ったんだけど冗談じゃねぇって言って先に行っちゃって。』

「……………… (そうだろうな。あいつの性格なら。)」

 

ギリスは目を閉じるだけでリナの赤くなった顔が浮かんでくる光景を感じていた。

 

『だけどホントに良かったの? チーム分けして三人一組で動こうって言ったそばから私とリナちゃんだけで旅行に行って。』

「それも分かった上だ。その為にフェリオとヴェルドについて行ってもらったんだからな。()()()の事が起こっても最低限の自衛が出来るようにな。」

『だね。まぁここは田舎町だから、敵が来るなんて考えにくいとは思うけど。』

「……………………… そうだな。

明日の昼には迎えに行く事も出来る。この城の出入口をそっちの駅辺りにでも繋げられるからな。」

『じゃあ電車代浮くってこと!?』

「身も蓋もない言い方をすればそうだな。」

 

結晶の向こうから蛍の喜ぶ声が聞こえた。

 

「兎に角今日は疲れているだろ。風呂に入ったら歯を磨いて早く寝ろ。」

『うん! 分かった! おやすみ!』

「………………

(今の一言、完全に父か兄の言う事だったな。)」

 

通話を切ったギリスの頭の中には一つの懸念があった。

 

(………田舎町 か。ツーベルクに敵が来るかどうかで情報が漏れているかどうかはっきりするな。様子を見て動かないかバレていると割り切って攻めに来るか。

とはいえ断じてあいつらを餌にする訳じゃない。万が一に備えて救援する準備は整えておくとしよう。)

 

いつ不測の事態が起こっても良いようにギリスも準備を進める。その理由が言い訳がましい事も分かっていた。

 

 

***

 

 

《ツーベルク 近辺の森》

太陽が山の中に沈もうとしている頃、木々の隙間からツーベルクの様子を覗いている者がいた。

 

(…………あれが勇者共が雲隠れしておる《ツーベルク》か。辺境に建っているにしては大きな教会じゃ。ここからでも見えるとはな。

フッフッフッフッフ。

見えるわ見える。あの小生意気な勇者共の青ざめた面が見えるようじゃ。)

 

フォラスは明日の事を頭の中で思い描いていた。(あわよくば)自らの欲を満たし、悦に浸っている蛍達の心も突き落とす事の出来る様子が浮かび上がっている。

その様子が現実たり得る根拠は彼の背後にあった。彼の背後には数十体のチョーマジンが同じようにツーベルクを凝視していた。

 

 

 

***

 

 

《蛍とは別の宿の一室》

フォラスが勝ち誇ったように高笑いを浮かべている頃、一人の男が一人きりの部屋の中で座り込んで()()()()()の最終確認をしていた。

今日の昼、蛍達より一足早くツーベルクの教会を訪れ、笑みを浮かべていた眼鏡をかけた男だ。

 

(━━━━フッフッフッフッフ。明日だ。

明日になればこのクソッタレのツーベルクを恐怖のどん底に叩き落とせる。

俺がやるんだ。俺が、俺が━━━━━!!)

「ハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」

 

部屋に一人きりである事をいい事に、男は天井を仰いで高笑いを上げた。

しかし彼は知らない。その計画が思いもよらない身勝手な相手によって尽く打ち砕かれるという事を。

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