転生したらプリキュアだった件 ~助けてくれた女神様の世界をプリキュアになって守りたいと思います!~ 作:Yuukiaway
(………場所はわかっている…………
だが、なぜ動かない………!?
彼女の作戦か………… 兎にも角にも待ちに徹する他ないか……………)
レンジは防御の構えを取ったまま思考を巡らせていた。
対戦相手、リナが何を策していようと 自分に出来るのは盲目拳法だけだ。
(………さぁてどうする? 盲目拳法家さんよ。
あんたにゃ目が見えねぇ分の感覚があるかもしれねぇけど、こっちにだってジジイが教えた空気の流れを感じる技があんだよ!!!)
空気の流れを感じる技術 【
これは、龍の里の長老 リュウ・シャオレンが編み出した技の一つである。
空気の微細な流れを感じ取ることにより、視界に入らない相手の動きや死角からの奇襲にも対応できる。
龍の里を出て、
それはリナにも継承されていた。
***
『り、両者動かない!!!
全く動かないまま、既に5分が経過しようとしています!!! 両者 待に徹した構え!! つまり、先に動いた方の圧倒的不利は明白なのです!!!!
この緊張感の中、先に動くのは 果たしてどちらか!!!!?』
蛍、そしてハッシュまでもその緊張感の波にもまれていた。
会場の声は一切遮断され、試合会場は静寂に包まれている。
そして、リナの身体が少し傾いたのをハッシュ、そしてレンジは見逃さなかった。
……………ズザッ…………………………
「?」「??」
場内は戸惑いの色を見せた。
リナのあまりに奇妙な体勢によって。
リナは極端な前屈体勢を取ったのだ。
地面に着いているのは両足のつま先、そして腕は腕立ての姿勢で両手のひらが付いているだけである。
陸上競技のクラウチングスタートとも、相撲の立ち会いの構えとも、完全に一線を画していた。
『リ、リナ選手 構えを変えましたが、これは一体何だ!!? 奇妙!! 格闘とは完全に違う!! まるで、【前に進む事】しか考えていないような……………!!!』
そう。これはリナ・シャオレンが切り札としている構え、もとい
アナウンサーの推測通り、前への突進以外の事は全く考えない 【超推進特化型】の体勢である。
しかし、レンジが感じ取れたのは彼女が【両手を地面に付けた】程度のことで、彼女が何をするつもりなのかは感じ取れなかった。
そして、それが命取りとなる。
ニィ………
(終わりにしてやるぜ!!!!!)
ッッッボォン!!!!!
リナが全身の力をフル稼働させて地面を蹴飛ばした。
「!!!!!」
レンジは咄嗟のことで一瞬 反応が遅れる。
『行ったァーーーーーーーー!!!!!
リナ・シャオレン、対戦相手に一直線だ!!!!!』
そのまま全体重を乗せた飛び蹴りを見舞う。
猛ダッシュによる土煙でリナとレンジは完全に隠れた。
聞こえるのはまるで機関銃を乱射したかのような打撃音だけだ。
『リナ・シャオレンの猛攻だァーーー!!!!!
いや、猛攻と言うにはあまりに苛烈!!! 凄惨!!!! 絶対的ィーーーーー!!!!!
これには万事休すか!!!? レンジ・クリスタ!!!!!』
蛍は言葉を失ってその猛攻を見ていた。
忘れてはならないのが、彼女 リナは【目隠しをした】状態で攻撃を行っているという事だ。
『連蹴り 連蹴り 連蹴り!!!!
リナ・シャオレン 怒涛の猛攻撃だ!!!!
これは為す術無しか!!? レンジ・クリスタ!!!
━━━━━━━━い、いや!!!!!』
土煙が晴れて見えた光景に、場内にいた全員が言葉を失った。
『レンジ選手 躱している!!!!
そのディフェンスは、リナ・シャオレンの全力の猛攻すらも通用しないのか!!!!?』
(………そう。これこそが盲目拳法の真髄。
たとえどれだけ強く、どれだけ速くても 気配さえあれば躱すのはやって出来ぬことではない。
…………そしてッッ!!!!!)
レンジは見つけた。 リナの猛攻が一瞬止む隙を。それに合わせて渾身のカウンターを打つ。
(もらった!!!!!)
『レンジ選手のカウンターが行ったァーーーー!!!!』
呼吸音から、彼女の顔の場所は分かっている。狙いは顎。 女性を一撃で昏倒させ、倫理的にも見栄えの良い完璧な勝利。
それこそがレンジの立てたシナリオだった。
が、
ガッ!!!! 「!!!!? こ、これは━━━━━」
突如、顎に謎の感覚が走った。
『リ、リナ選手 レンジ選手の顎を掴んだ!!!』
「ま、まさか━━━━━」
「かかったな。
こちとら拳法家っつったろ。
拳法家はな、
そのまま全体重をかけ、レンジの身体は宙を待った。
(………………一瞬 読み違ったか…………
これがリュウ・シャオレン殿の血を引く者の力……………
恐れ入った。)
ズッダァン!!!!!
レンジは頭から叩きつけられた。