転生したらプリキュアだった件 ~助けてくれた女神様の世界をプリキュアになって守りたいと思います!~   作:Yuukiaway

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72 龍の里のサラブレッド! リナの秘策 龍之顎(りゅうのあぎと)!!

会場は依然として緊迫に包まれていた。

ハダルが本気を出すと宣言した時点でそこにいた全員が『これから殺し合いを見ることになるのだ』と理屈ではなく本能で理解していた。

 

『素性、経歴 一切不明!!

そのハダル選手の変則的な蹴り技を受けきったリナ・シャオレン!!!

竜の里が産んだサラブレッドが遂に腹を括った!!!!

 

決勝の舞台で 戦ウ乙女(プリキュア) ホタル選手とぶつかり合うのは、果たしてどちらか!!!?』

 

 

***

 

 

「………どんな目にあっても後悔するなよ。先にふっかけたのはお前の方だ。」

「ケッ! うだうだ抜かしてねぇでさっさとかかって来やがれ!!!」

 

それが両者の間で交わされた最後の会話だった。

 

ハダルがゆうゆうとリナとの距離を詰め、間合いに入った瞬間 その脚を構えた。

 

『ハダル選手が前へ出た!

 

━━━━━━━━━━━━━ああっ!!!!』

 

足元を狙った蹴りをリナは飛んで躱した。

すかさずハダルは空中のリナ目掛けて更に蹴りの追い打ちをかける。

 

「…………………………

!!!?」

 

その時、ハダルは奇妙なものを見た。

自分の足首にリナが まるでアシカが曲芸でやるような逆立ちをしていたのだ。

 

「………悪ぃな あんちゃん。

こいつで終わりだ!!!!」

 

リナはハダルの脚を踏み台にして跳んで 彼との距離を詰めた。そして、一瞬出来た隙をついてその手首を掴んだ。

そしてそのまま全体重を彼の上半身にかけた。

 

「オルァッッッ!!!!」 「うぉッッ!!!?」

 

ハダルの身体は地面にうつ伏せに倒され、その左腕は上に挙げられて組み伏せられた。

 

「何!!!? 今の!!」

「何だ? 関節技か??」

 

「【龍之顎(りゅうのあぎと)】じゃ。」

「!!? あ、リュウさん!!」

 

一瞬 たじろいで振り返ると後ろにリュウが立っていた。特等席を外してわざわざここまで来てくれたのだ。

 

「何ですか? その、【龍之顎(りゅうのあぎと)】って」

「それはわしが大昔に考えついた 技 じゃ。」

 

 

龍之顎(りゅうのあぎと)

それは、龍の里を出て贈物(ギフト)の恐ろしさを痛感したリュウ・シャオレンが真っ先に編み出した技の一つである。

 

相手の手首を掴んで絡みつき、関節を取った状態で自分の全体重を乗せて地面に叩きつける技である。

この状態に入ると自力での脱出は不可能であり、強制的にギブアップを強いられる。

 

 

***

 

 

『き、決まったァーーーーーー!!!!

まさに一瞬の出来事!!!

今、リナ選手が()せたのは見まごうことの無い【龍之顎(りゅうのあぎと)】!!!!!

リュウ・シャオレン長老の真髄が今、時空を超えてこの竜神武道会の場に、復活したのです!!!!!』

 

蛍を含め、会場にいる全員がリナの勝利を確信して沸いていた。ただ1人の例外を除いて。

 

「やった!!! これはリナちゃんが勝ったでしょ!!」

「…………………」

「ん? どうしたの ハッシュ君?

何か気になることがあるの?」

「………いや、僕もあのリナの勝ちだと思うんだけど、それにしてはあのハダル、

何と言うか 余裕と言うか、何ともないと言うか、何か 静かじゃない?」

「え? そうかな……………。」

 

「蛍!!!!!」

「!!!!? 何、フェリオ!!!!」

「あれ!!!! あれを見るファ!!!!!」

「な、何を━━━━━━━━━━━━━

!!!!?」

 

 

***

 

 

『こ、こ、こ、これは━━━━━━!!!!!』

「…………………!!!!!

う、嘘だろォ…………!!!!?」

「な、何と………………!!!!!」

 

ハダルは残った右腕だけで倒立をし、リナを乗せたまま 完全に地面と垂直になった。

そして体を振るい、腕にリナを掴ませたまま 立ち上がってしまった。

 

『り、【龍之顎(りゅうのあぎと)】敗れたりィーーーーーーーーーー!!!!!

何とハダル・バーン あの脱出困難な体制から、右腕一本で逃れてしまった!!!!!』

 

「………………………!!!!!」

 

リナは愕然としていた。

自身の最大の切り札だった関節技をいとも簡単に破られた事を受け入れるのは容易では無かった。

 

「…………悪いけど 姉ちゃん。

これで終わりだよ。」 「!!!!?」

 

リナの身体は腕に引っ張られて無防備のままハダルに引き寄せられた。

そして

 

 

ズドォン!!!!! 「!!!!!」

 

その無防備な腹にハダルの膝蹴りが突き刺さった。リナの意識は闇に葬られ、地面に突っ伏した。

 

「し、勝負ありィーーーーーーー!!!!!」

『む、無念!!!!

龍の里のサラブレッド リナ・シャオレン 散る!!!!

準決勝で、 謎に包まれたダークホース ハダル・バーンの力の前に、屈しました!!!!』

 

 

「…………………フン。」 「!!!?」

 

観客席にいた蛍はハダルの横顔に不気味な笑みを見た。そしてその時、彼女の頭に1つの《予感》がした。

 

(!!!!! まずい!!!!!)

 

彼女の身体は勝手に試合会場に向かっていた。無意識のうちに戦ウ乙女(プリキュア)に変身していた。

 

ズザァッ!!!! 「!?」

『な、一体 何が!!!?』

 

蛍 改めキュアブレーブはリナをお姫様抱っこの要領で抱えてハダルと距離をとって外枠に着地した。

 

『こ、これは一体どうしたことだ!!?

キュアブレーブ ホタル・ユメザキ選手が 突如として会場に乱入して来た!!!』

 

「………どういうつもりだ 戦ウ乙女(プリキュア)

これは立派なルール違反だぞ。決勝を辞退したいのか?」

「………彼女に、リナちゃんに何をしようとしてたの!!!!?」

 

ハダルの問いかけに答えること無くブレーブは啖呵を切った。

 

「…………答えようとしないのか?

それとも何か? 今すぐ決勝戦を始めたいのか?」




龍人武道会編 完

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