転生したらプリキュアだった件 ~助けてくれた女神様の世界をプリキュアになって守りたいと思います!~ 作:Yuukiaway
「………また布団に入ったらすぐに眠ってからに。」
ギリスは一人 宿屋の一室で一人ぼやいた。
隣ではリルアが口から一筋よだれを垂らしながら能天気な寝顔を浮かべていびきをかいている。
「今日は連絡の約束をしていると言うのに、一体何をやってるんだこいつは…………!」
自分が連絡すべきだと言ったくせに と横目でリルアを睨みながらも懐から水晶を取り出し、机の上に置く。
既に蛍達とは1回連絡を済ませており、この通信では互いの現状報告をする手筈になっていた。
走行しているうちに時計の針が10時を指した。その直後、水晶に光が宿る。
『もしもし ギリス?』
「その声はハッシュか。 問題なく通信はできているぞ。
そっちは今どうなっている? 蛍の奴が龍神武道会に出るとは聞いたが その後どうなんだ?」
ギリスは前の通信で蛍本人から人材を確保するために龍神武道会に出ることになったという旨の報告を聞いていた。
『熱心にやってくれてるよ。 もう僕が教えられることはほとんど覚えてくれた。』
「そうか。 それで、その蛍は今どうしてる?」
『もう寝ちゃってるよ。 特訓は身体に堪えるみたいでね、毎日ヘトヘトになってるから。 ちなみにそっちで起きてるのはギリスだけ?』
ギリスは一瞬たじろぎ、そして自嘲気味に口を開いた。
「………ご名答だ。 リルアももうグースカ 馬鹿面を晒して眠ってしまっている。」
『………そう。』
「………そうだ。」
その受け答えを最後にしばらく無言の時間が訪れた。 その時間に耐えきれずに先に口を開いたのはハッシュだった。
『ところでギリス、』
「どうした?」
『その、前に言ってた加入希望者って、どういうヤツだったの?』
「………あー、 それな…………
どこから説明すれば良いか…………」
『? どういう事?』
ギリスは一つ間を置いてからミーアが採用するべき点とすべきで無い理由を説明した。
『………なるほど。 それでも弓の腕が良いならちゃんと面倒見れば戦力にはなるんじゃないの?』
「それはそうなんだがな………。
あいつはただ普通の冒険者になりたくて田舎からギルドまで来てるから そんなやつをヴェルダーズ共との戦いに巻き込むというのもどうかと思っていてな…………。」
『あー、なるほど。 そりゃ確かにそうだね。 こっちは君と知り合いの人と血が繋がった人って事で上手く行きそうだけど、そうもいかないね。』
「そういう事なんだ。何かいい策でもあれば良いんだがな………。」
『だったらいっその事さ、』
「?」
『僕らが実際にやってる事をバラしちゃえば良いんじゃない?』
「?!!!」
ハッシュの予想外の言葉に『何を言い出すんだ』と指摘するより先にハッシュが言葉を続ける。
『もしそれで彼女がやりたいって言ってくれれば採用すれば良いし、渋ったら不採用って事で他を当たってくれれば良いし、それが一番理にかなってると思うけど。』
「……………!!!
分かった。 考えておこう。」
ふと時計に視線を送ると既に長針が一番下に差し掛かろうとしている。
「それで、そろそろ切るぞ。
明日も依頼を受けるつもりでいるからな。
蛍に武道会 頑張れ と伝えておいてくれ。」
『分かった。 おやすみ。』
通話を切り、ギリスはリルアを起こさないように気を配りながら布団に潜った。そして身体を休めるまでの時間つぶしに考えを巡らせ、そして一つの【悪い可能性】に至った。
(………ここに来てしばらく経つが、最近あいつらが動くどころかチョーマジンの発生すら聞かない…………。
何か、大きな
***
ギリスの予感は当たっていた。
《そいつ》はギリスが泊まっている宿がある町に人知れず着いていた。
「………報告します ヴェルダーズ様。
……ええ。 問題なく配置に着きました。
……はい。 オオガイさん達も指定の場所に着いてるんでしょ? こっちは任せて下さい。
【あいつ】も潜り込むための準備を着々と進めてますし、 まぁ、弱体化した魔王の首を二つ持って帰れれば儲けものでしよ? はい。
じゃあまた後で。」
《そいつ》は通話を切った。
その視線はギリスとリルアの喉笛を虎視眈々と狙っていた。