転生することになりましたがオリ主とか興味ないので安心して暮らせる特典をいただきました 作:BサインからCサイン
禍の団英雄派アジト。ある日の夜英雄派リーダーである曹操は広い通路にいた。その顔は普段よりもいささか明るい。
なぜなら今日は新しく英雄派に入った人物、諸葛慶の『初』仕事が行われたからだ。
なぜそれで機嫌がいいのか、数週間も立ってなぜ初仕事なのか、それにはいくつか理由があった。
慶は平和主義者…というよりも争いを好まない性格である。戦闘は日頃から避けているしヘラクレスが勝負を慶に挑む姿はほぼ毎日見ている。彼は慶だけでなく他のメンバーにも同じことをしているある種の戦闘狂だ。しかし慶はそれをことごとくかわしている。
ある日は走って逃げ、またある日は窓から飛び降り、またある日は声をかけた瞬間に姿を消し、またある日はヘラクレスとの距離を1m外に保ちながら会話したりと。戦闘を避けているのだ。けっしてヘラクレスが嫌われているということではないだろう。
閑話休題
そんな慶は普段何をしているか。部下たちの訓練の監督である。
過去の英雄、諸葛亮孔明は知将と称えられた『軍人』であり『政治家』でもあった。民に畏れられつつも愛された諸葛亮の公平な政治の才能は管仲・蕭何に匹敵すると多大に評価されており。そして諸葛亮は軍隊の統治にも優れていた。
その才能は子孫である諸葛慶にも受け継がれていた。慶は部下の扱い、対応が巧く信頼もあった。訓練を直々に受けている部下数名の戦闘術はぐんぐんと成長している、慶の指摘が最良のものであったからだ。
そんな彼は普段からアジトから出るようなことはほとんどなく、部下たちへの訓練を終えれば自由に過ごしている。最初に約束した通り、戦闘に関わるようなことは一切させてはいない。
しかし今日はそうもいかなくなってしまったのだ。
SS級悪魔黒歌がこの付近を出歩いていたという情報を掴んだ曹操。しかし彼は今日禍の団全体で行われる会議に参加しなくてはならないため動くことができなかった。仕方がないので彼はいつものようにジークフリードたちに仕事を受け持ってもらいに行った。
しかし今日に限って誰もアジトにはいなかった。部屋にいっても姿は見当たらない。食堂にはジャンヌの姿があったが彼女も別の用事があるという。
一度部屋に戻り予定表を確認する曹操。見れば今日は全員の用事が被ってしまい皆外に出てしまっていた。
訓練場にいる諸葛慶を除いては。
彼は仕方がないとためいきを吐いて部屋をあとにし、通りかかった部下に慶を呼んでくるように声をかけた。
それから曹操は慶に頼み込んだ。慶はもちろん首を横に振った、争いは嫌い、戦闘は勘弁が彼の言い分であった。しかし曹操は引かない、もし誰もいかないのであれば英雄派がはぐれ悪魔によって危険に晒される可能性がある。部下の中でSS級悪魔に適うほど実力を持つ者はいないのだ。
そこで曹操はとっておきの切り札を取り出した。
金と休暇である。
英雄派へ勧誘したときも金で了承した慶、そして最近アジトから出ていない彼に追い打ちをかけるように休暇を与えてみたのだ。これを慶は数秒考え込んだ後、意気揚々と走っていった。
そして彼が夜になって帰ってきた。
こうして現在へと至ったのである。
曹操は慶の実力なら無事に終わらせてきただろうと思い、入り口の近くにある広い廊下でここにくるのを待っていた。
向こう側から歩いてきた慶から報告を聞いた曹操は驚愕した。はぐれ悪魔に襲われていた女性を今治療室で寝かせていると聞いた曹操はその女性の状態を確認した。
「ええ、疲れているようで…ですが目立った外傷は見られませんでしたからすぐに回復するでしょう」
「そうか、よかった。ところでその女性はなぜ襲われていたんだ?(はぐれ悪魔黒歌は女だったはず…まさか食おうとしていたわけじゃないよな……)」
「さあ。ですが彼女を襲おうとしていた悪魔は犯すとか言ってましたし、体目当てだったんじゃないですか?男としてはかなり酷い分類に入るんじゃないですかあれは」
「確かにそうかもしれ____ん?すまん慶、今なんて言った?」
「男としてかなり酷い分類に入るんじゃないですかあれは。といいましたが?」
曹操は混乱した。自分の頭の中の人物と慶の言ってる人物像が異なっていることに。曹操は嫌な予感に冷や汗を流した。
「……なあ、慶。お前が助けた女性の名前は…?」
「?どうしたんですか急に。名前は黒歌さんというらしいです……どうしたんです曹操?おーい」
曹操は驚愕したさっきとは別の意味で。
「…お前の倒した悪魔はどうした?」
「?まだ地面に埋もれているんじゃないですか___ちょっと曹操!どこ行くんですか。話はまだ終わって___」
「聞いてない聞いてない聞いてないぞ俺は何も聞かなかった俺はここで誰にも会ってないし話なんて聞かなかったんだ……」
曹操は逃げ出した。
☆☆☆
それから一時間後、曹操は部屋でうなだれていた。珍しく椅子に座り突っ伏している状態だった。そしてその前にはまったく同じ格好で突っ伏している慶。
___何があったのだろうか?傍から見れば酔っ払いが泥酔しているようにも見えるが、二人の絶望の淵に立たされた光を失った瞳がまったく異なるモノであることを物語っていた。
「……やったな…慶」
「ええ……やってしまいましたよ………曹操ぅ」
慶は顔を上げ拳を強く握った。もう涙目である。
「だいたい曹操が説明不足なのがいけないんですよ!情報は全て伝えなければ成り立たないんですよ!?」
「……なんだと?」
曹操も同じように顔を上げた。
「それを言うなら慶が勝手に走っていったんだろう!争いは嫌いとか言いながら金に眼が眩んだくせに!」
「なっ…なにを言うんですか!食事だってこの服だって金がいるんですよ、それに貯金は老後の生活に欠かせないんです!そのためなら多少の犠牲は仕方ありませんー!」
「言っていることが矛盾しているじゃないか!それなら普段から訓練以外の仕事もしてくれてもいいだろう!!」
「別に私はそれで実績を上げているんですからいいでしょう!曹操は失敗してくるときもありますけど私の方は確実性があるんですからね!」
「お前と俺とじゃ仕事の難易度が全然違うんだよ!?それを加えたら俺の方が役に立ってるさ!この引き籠り!!」
「なんですって!?私はしっかり働いていますから引き籠りじゃありませんー!推測でものを言わないでください、そんなんだから未だに信憑性が薄いんですよ!どうせ今日の会議でも他の派の人に上から見られたんでしょうがこの半端リーダー!!」
「なんだと!?」
「なんですか!?」
両者睨みあう。お互いに机に拳をバンっと叩きつけ身を乗り出す。ただし机のサイズがそこまで大きくないために顔は異常に近い。一触即発とはまさにこのこと。
しかし、もし第三者がこの場を目撃していたのならこう思うだろう。
馬鹿馬鹿しい。
「「………はぁ」」
二人は再び机に突っ伏した。もともとそんな気分ではなかったのだろう、口喧嘩で気力を使い果たしたようである。最初とまったく同じ姿である。
まるで巻き戻し後の映像を見ているようだ。
「……とにかくさ、今回のはマズイと思うんだ」
「…やはりそうですか。はぐれじゃない悪魔を倒すのは…ダメですよね……」
「ああ、だが殺してはないんだろう?だったら謝罪して穏便に済ませたらどうだ?」
「そうですよね……死んでないといいんですけど。とにかく、もう一度さきほどの森に行ってきます…」
「がんばれよー……」
完全にお通夜テンションである。
しかし、数分後慶が帰ってきた後の二人はそれは喜んだ。さきほどの姿はどこへやら、歓喜を露にして肩を組み合った。しかし頭の中では喜び方が違うようだが。
『よかったー!これで賠償金やら保険費やら払う心配はありません!』
『助かった!もし禍の団のことがばれたら全員狙われていた……!』
人間、思いは違えど同じ感情を共有できるのだから不思議である。
しかしその数秒後、部屋に来たジャンヌに『うるさい』と一括され二人はおとなしくなったという。