TS転生して吸血鬼になったけど創作欲しか思い出せない   作:石化

11 / 21
第11話

 

 久しぶりに高天原から出る。

 この雲の道を行くのは何年振りだろうか。

 あそこ時間感覚が曖昧だからよくわからないけど、100年くらい経過していても少しも不思議じゃないと思う。

 

 この前足止めを食らった八本の道が交差するところには、やぱりあの猿面の男がいた。

 

「これはこれは。あなたが噂のニニギ様ですね。私は猿田彦。葦原中国までの道案内はお任せください」

 

 随分俺の時と態度が違うな⋯⋯。俺は彼を半目で見つめる。

 

「なんでしょう。夜様?」

 

 その様子を目ざとく見咎められる。うん。やっぱりこの人、油断できない。

 

「かっこいいね!」

 

「そうかなあ?」

 

 ウズメの感性は人と違っているからなあ。

 まあ、仕事人みたいな雰囲気は感じる。見ようによってはかっこいいのかもしれない。

 

 ウズメは道案内する猿田彦にくっついて歩いていた。猿田彦の方も嫌がっているようには見えない。

 

 へーえ。

 

 俺は友人の意外な一面に驚いていた。あんなに積極的だったんだ。

 

 さしあたっては、ウズメが取られて悔しそうなニニギに、ラブコメというものの素晴らしさを布教しておこう。ニヤニヤしながら眺めるのはいいものだよ。

 

 ●

 

 

 俺たちはでっかい山の上に降り立った。

 天孫降臨の地としてふさわしい地だな。

 

「アメノウズメ。猿田彦に礼をしなくてはならないから、彼について行きなさい」

 

 ニニギは非常にニコニコしながら言った。

 

「良いんですか?! やった−!」

 

「私に感謝しときなさいよ?」

 

「なんで夜に?」

 

「私の布教のおかげだから」

 

「んー? よくわからないけどありがと!」

 

 うんうん。幸せになりなさい。彼女には迷惑をかなりかけられたけど友人として好きだったからな。

 

 ウズメの積極的な攻勢にタジタジな猿田彦は見ていて面白かったのでもっとやってほしい。

 

 ●

 

 地上についてからの手配はオモイカネがいろいろやってくれた。

 さすが知恵の神だ。

 

 てっきり地上を観光してこい程度の命令だと思っていたのだが、ニニギに国を作らせるらしい。神の国か。まあ、高天原の書物のある文化が流入するのなら歓迎するべきだろう。

 

 そう思ったので俺も協力することにした。

 

 

 周辺の力のある豪族を従え、勢力を拡大していく。腐っても神の孫だ。ニニギは高スペックだった。やっぱりエロゲ主人公じゃないか。

 どっかに出かけてきたと思ったら、コノハナサクヤヒメとかいう儚げな美人を嫁として連れてきた。やっぱりエロゲ(ry。

 彼女の父のオオワダツミという神が言うには、姉のイワナガヒメを娶れば永遠の命が約束されたのに儚いコノハナサクヤヒメを選択したのだから、ニニギの寿命は短くなるらしい。

 エロゲ主人公が選択肢ミスって死ぬやつじゃん笑う。

 

 まあ、短くなると言っても普通の人間と同じくらいはあるらしくて、ニニギはそれでもいいやと公言して憚(はばか)らなかった。

 純愛系ラブコメを布教しすぎたかな。

 人外系ラブコメを布教すべきだったか⋯⋯? 

 まあ、いいや。

 

 オモイカネは有能すぎるので、宰相的な役割を受け持ち、ニニギは自ら陣頭に立って剣を振るって勢力を拡大していった。俺は暇だったので、時折やってくる暗殺者に女だと油断させてはボコボコにする仕事に従事していた。

 久しぶりに血が飲めるので満足である。

 

 

 ●

 

 地上に降りて、書物の普及している勢力範囲を広げるのはいいんだが、今の所、公文書以外に紙が使われているのを見たことがない。

 

 確かに、抵抗勢力はごまんといるから物語を書くと言う方向に紙を消費するのは難しんだろうと思うけど、やっぱり勿体無い。

 せっかく紙があるんだ。誰かが描いた作品を読んで読まれて切磋琢磨したい。

 

 そのために、やっぱり勢力拡大が不可欠だ。

 

 この辺りの地方は大体片付いたんだし、そろそろもっと広い領域に目を向けるべきなのではないか。

 

 俺はそんな感じで、目的をぼかしつつ、ニニギのひ孫のカムヤマトに進言をした。

 

 そう。ダラダラしている間にいつの間にか代替わりが行われていたのだ。ちょっと時間感覚がおかしいような気もするけど、俺の中では普通だな。

 長命種族特有の時間感覚だろう。ちなみにオモイカネは国が軌道に乗ったらいなくなっていた。いや俺を置いていくなよ。

 仕方ないのでまだここにとどまっている。居心地は悪くないしな。

 

 ひいおじいちゃんの代から生きている謎の女性と思われているらしい俺の意見は、普通に通った。顔色を伺われていたりビクビクされていたりするようだが、そんな怖い人じゃないからね。誤解しないでね。

 

 にっこりと微笑んだら、カムヤマトの顔が青くなった。解せない。

 

 

 ●

 

 カムヤマトは無事に東征を果たして、天皇という称号を作った。

 天皇家。前世の記憶が曖昧だが、前世でもあったような気がする。

 薄々気づいているけど、これ異世界じゃなくて、過去だよね? 

 

 いやでも、俺みたいな存在は想像上の生き物だったはずだし、神様なんていなかったはずだし⋯⋯。うん。やめよう。細かいことを考えるのは。

 

 

 とりあえずこれで、初めてきちんとした国ができたんだ。まずはそれを喜ぼう。

 

 ようし。小説書くぞ! 

 

 えっ? 
 紙が足りない? 

 

 そんなあ。

 

 仕方がないから紙を作っているところに行って、もっと生産量を増やすように言ってみよう。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。