TS転生して吸血鬼になったけど創作欲しか思い出せない   作:石化

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第2話

 

自分の前世?のことはわかった。

だが、わかったからと言って、この状況に対する手立てが考えられるわけではない。

 

気づいたらここにいたというのが正しいのだ。

異世界という可能性もあるかもしれない。

ただ、盗賊の武器も服装もあまりに貧相だった。

異世界としても古代だろう。

 

古代かあ。古代はなー。ちょっとなあ。せめて中世くらいであって欲しかった。

 

おそらく吸血鬼に類するものに転生したと思うので、食事に関しては問題ないはずだ。

でも、文化的なものが何一つないと考えられてしまう。

 

例えば、本とか。⋯⋯ない気がするな。

日本最古の物語が竹取物語でしょ。あれ、平安か奈良時代のことだと思うけど、見た感じ、そんなに発達しているようには見えない。都会に行けばまた違うのかもしれないけど。

 

最終目標として、究極の本を作るというものがある以上、少なくとも製本技術があるのかどうかに関しては確かめた方が良い。

 

とりあえず、都会に向かうか。

 

どっちが都会なのかわからないけど、さっきのごろつきの言葉がわかったので、最低限の話は通じるだろう。

聞いていけば良いや。

 

幸い、この体の戦闘力はかなり高いと考えられる。

よっぽど不注意でなければ、死ぬことはないだろう。

 

とはいえもう夜だ。昼よりも明るく見えているから、このまま歩いて行ってもいいけど、その場合、あてもなく彷徨うのと変わらないな。

 

ここは適当な民家の戸を叩いて、宿を借りて、それと同時に都会の場所も聞くことにしよう。

 

 

藁葺き屋根の民家のドアを叩くと、訝しげな顔をした男が顔を出した。やっぱり貫頭衣だ。

もうこれは中世だと思うことを諦めた方が良さそうだな。

 

「すみません。道に迷ってしまって、一夜の宿をお貸し願えませんか?」

 

俺は下手に出た。ほとんど何もわからない現状、一番大事なのは情報収集だ。

友好的に接するのに越したことはない。

男は驚いた様子で、こちらをまじまじと見つめた。

 

そういえば、濡れたままだったな。

 

「急な雨で。ひどい目にあいました。」

 

「どおりで。わかった。一晩泊めてやろう。⋯⋯ 好都合だな。」

 

最後にボソリと呟かれた言葉はよく聞こえなかった。

 

中に入ると、彼の家族らしい女と子供がいた。土間に座っている。むしろ土間しかない。原始的だな。覚悟していたが、やはりか。

 

「妻と娘だ。」

 

手みじかに紹介される。

 

なかなかに口数の少ない男のようだ。

 

娘だという少女の目の中に、かすかな恐れの色があった。

女同士だから、そう恐がることはないと思うのだけど。

 

⋯⋯ ひょっとして、盗賊たちの血が付いてるとか?

 

血を残すような下手は打たなかったはずだ。

むしろ、全ての血を吸わなければもったいないと思っていたような感覚が残っている。

 

多分、別件だ。

 

 

「用事を思い出した。外に出てくる。お前たちは話し相手になっていなさい。飯は俺が戻ってからだ。余計なことは話すなよ。」

 

「大丈夫ですか。この暗い時間に。」

 

「慣れているから問題ない。」

 

大丈夫だと強調して、男は出て行った。

明かりが全くない時代だから、暗闇の密度がすごかったんだが、人間はすごいな。

慣れていればそれくらいできるか。

 

 

手持ち無沙汰になったので、自己紹介をすることにした。

 

「初めまして。私は⋯⋯ 。」

 

そして名前がないことに気がついた。

えっ。どうしよう。なんで俺は自分の名前を考えずに自己紹介を始めようとしているんだ。

考えなしにもほどがあるだろ。

 

「ええと。⋯⋯夜。そうだ。夜です。」

 

単に今の外の状況から連想しただけだけど、まあ、悪くはない名前だと思う。

 

俺は夜。俺は夜。よし。刷り込み完了だ。

 

 

「ご丁寧に。私はテナヅチと申します。こちらが娘のクシナダです。」

 

母の紹介に合わせて娘もぺこりと頭を下げる。

 

よしよし。第一コミュニケーションは良好だ。

 

「あの、お聞きしたいことがあるのですが、都はどの方向でしょうか。」

 

「都、ですか。」

 

「はい。私はそこを目指していまして。」

 

「聞いたことがないですね。」

 

首を捻っている。

 

⋯⋯ うーん。都という概念がないのか?

まだ国ができていないとか。

ありえるかもしれない。

 

じゃあ、これを聞こう。

 

「なら、大きな街は知りませんか?」

 

「ああ、それなら。」

 

ガラリと、戸が開いた。

 

「戻った。あまり話をするなと言っておいただろう。」

 

「ごめんなさい、あなた。」

 

「まあいい。お前、客人の飯にこれをふりかけておけ。」

 

出て行ったとこにはなかった巾着を、タナヅチに渡している。

あれを取りに行ったのか。

 

「それはなんですか?」

 

「調味料だ。客人をもてなさないわけには行かないからな。」

 

ぶっきらぼうな口調の人だから誤解していたのかもしれない。

かなりいい人だ。

 

ただ、街についての情報を遮ったのだけは許せない。

後少しだったのに。

 

まあ、貴重な調味料をわざわざ手に入れてくれたのだから、文句をいうのもお門違いだろう。

ご飯も用意してくれるみたいだし。

普通のご飯の味がどうなっているのか知りたいところだったので、ありがたい。

 

玄米に木の実、それに何かの肉。彼らの住居から考えると、かなりのご馳走のはずだ。

それを道に迷っただけの一客人に振る舞うとは。

暮らしに余裕があるのかな。

 

それにしては顔色が悪い気がするけど。

 

まあ、いいや。ありがたくいただくことにしよう。

 

謎の調味料のかけられたご飯に箸を伸ばして、咀嚼した俺の意識は、次の瞬間途切れた。

 

 

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