BLEACH 死神になった少年   作:桂ヒナギク

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1.死神誕生

 少年の名は、矢澤(やざわ) 恵一(けいいち)

 空座町(からくらちょう)に住む高校一年生だ。通ってるのは空座(からくら)第一高校である。

 学校を終え、帰路に就く恵一。

 帰宅の途中、仮面を被り胸に穴を開けた、(ホロウ)という怪物が恵一の背後を取る。

「ウマソウダナ」

 虚が恵一に迫る。

「ん?」

 気配に気づき、振り返る恵一。

「ば、化物!?」

 恵一は驚くと同時に悲鳴を上げて逃げ出す。

「うわああああ!」

「マテマテ。俺ハオ前ガ食イタイ」

「来るなあ!」

 恵一は角を曲がるが、行き止まりに追い込まれてしまう。

(し、死んだ?)

「イタダキマース」

 虚が恵一を掴み上げると、その肉体から魂魄が抜け出した。

(な、なんだ? すげえ体が重い)

 恵一は胸に繋がる鎖に気づく。

(これは……?)

 鎖の先を目で追うと、地面に恵一の肉体が倒れていた。

「死んでるやん!」

「ギャアギャア喚クナ」

 虚が大口を開けて恵一の魂魄を飲み込もうとする。

 そこに、刀を(たずさ)え、黒い死覇装(しはくしょう)を身に纏った赤毛の女の子が現れた。

「はあ!」

 赤毛の女の子は虚の腕を刀で切り落とした。

「ギャアアアア!」

 激痛に悲鳴を上げる虚。

 解放される恵一。

「き、君は?」

 彼女は阿散井(あばらい) 苺花(いちか)。死神の阿散井(あばらい) 恋次(れんじ)と同じく朽木(くちき) ルキアの娘である。

 苺花は痛みに悶絶する虚には目もくれず、その体を斬魄刀で真っ二つにして消滅させる。

(すげえ……)

 斬魄刀を腰の鞘に差し込むと、苺花は恵一の方に体を向けた。

「抜けちゃったのね」

「え?」

 苺花は恵一の魂魄を掴むと、半ば強引に肉体へと押し込んだ。

「えっと……」

 苺花を見る恵一。

「君は一体?」

「なによ、あんた。私が見えるわけ?」

「見えてるから聞いたんだろ」

「阿散井 苺花。死神よ」

「死神?」

尸魂界(ソウル・ソサエティ)ってところから来たの。あなたは霊的力が常人と比べて強いみたいだけど」

「ああ、うん。霊とかよく見るけど。ていうか、あの化物なに?」

「あれは虚と言って、普通の霊が悪霊になったものよ」

「君はその虚とかいうのと、いつも戦ってるのかい?」

「うん」

「怖くないの?」

「そりゃ、怖くないわけないけど、それが護廷十三隊の仕事だから」

「そうなんだ」

(護廷十三隊?)

「しばらくあなたのボディガードしてあげる」

「ボディガード? なんで?」

「あなた、霊力が高いから虚に狙われやすいのよ。私が虚から護ってあげる」

「ほう、死神がいるとは」

 その声に振り返る苺花。

「……!?」

 振り返った先には別の虚が。

「二人ともうまそうだ。食わせろ」

 虚が苺花に襲いかかる。

 苺花は攻撃をかわす。

破道(はどう)の三十一、赤火砲(しゃっかほう)!」

 苺花は虚に対して鬼道による攻撃をしかける。

 虚は赤火砲を自らの拳で打ち消してカウンターを苺花に浴びせる。

「ぐわ!」

 吹っ飛び、塀に突っ込んで破壊する。

 虚が苺花の目前に迫る。

「やば!」

 逃げ出せず、死を覚悟する苺花。

 恵一が苺花目掛けて駆け出すと、虚の攻撃から彼女を救出する。

「ちょっとあんたなにやってんの! 命が惜しくないの!?」

「か弱いレディに傷を負わせたくないんで」

「か、か弱い……?」

 苺花は頬を赤らめた。

「さて、ここからは俺が相手だ」

 恵一は塀の向こう側にあった人様の金属バットを手に取る。

「うりゃ!」

 恵一は振り回したバットを虚に叩きつける。

 だが、反撃を受けてバットがひしゃげてしまう。

「そうか、お前から食われたいか」

「やべえ」

 恵一は後ずさる。

 虚は恵一を殴り飛ばした。

「うわ!」

 衝撃で魂魄が肉体から飛び出す。

「二度と生き返れぬようにしてやる」

 虚が恵一の鎖を掴み、引きちぎった。

「あの野郎!」

 苺花が虚を斬魄刀で切りつける。

 断面から血飛沫が上がる。

「トドメ!」

 怯む虚を頭から真っ二つに切り裂く。

「ぐわああああ!」

 虚は光の粒子となって消滅した。

「ごめん。私が弱いばかりに、君を護れなかった」

「何言ってんだよ。さっきみたいに重なればいいだけだろ?」

「それが無理なの。胸の因果の鎖が断ち切れると、その人は完全な死を迎える」

「え?」

「つまり、あなたは死んだの。尸魂界に行かないといけないの」

「そんな……」

 断ち切れた鎖を手に取る恵一。

「まあ、生き返る方法の一つとして、死神になるっていう手もなくはないけど……」

「俺が死神に?」

「うん。だけど、無謀な賭けよ」

「どうすればいいんだ?」

「浦原さんのところへ行きましょう?」

 恵一は苺花と共に浦原商店に移動した。

「事情はわかりました」

 帽子を被った中年の男、浦原が言う。

「では、矢澤さんの死神化計画を始めましょう」

 二人は浦原に地下へと案内される。

 そこはかつて、黒崎(くろさき) 一護(いちご)が死神の力を取り戻すために使われた修行の場である。

「では」

 浦原が杖で地面を叩くと、穴が開いて恵一は落下した。

「72時間以内に死神になってそこから這い上がってきて下さい!」

「無茶言うなよおっさん!」

「赤がヒントですよー」

「赤? なんのことだよ」

 ガジガジ、と何かを噛み砕くような音が聞こえる。

 恵一が音の発生源を見ると、鎖が侵食を始めていた。

「なんだこれ!? 鎖が鎖を食べてる!」

「その鎖がなくなると、あなたは虚になります! もしもそうなったら、私はあなたを殺しますので!」

「なにー!?」

 驚く恵一。

「つってもなー」

 そうこうしているうちに、71時間を無駄に過ごしてしまう恵一。

「矢澤さん、まだ死神にはなれないんですかー? 諦めて尸魂界に行きますかー?」

「うっせえ! てか飯くれ!」

 骨付き肉が投げ込まれた。

 恵一は肉を腹一杯平らげた。

 侵食する鎖はもうなくなる寸前だ。

 そして、鎖は完全になくなった。

「ん?」

 恵一の魂魄に変化が起きた。

「あ?」

 虚化が始まったのである。

「消しますかね」

 浦原が杖から刀を抜こうとすると、苺花がそれを止めた。

「待って。虚化に魂魄が抵抗してるわ」

「……………………」

 次の瞬間、一筋の光が恵一の魂魄から放たれた。

 光が消えると、二人の前に仮面をつけた黒い死覇装姿の恵一が立っていた。

「なるほど。仮面の軍勢(ヴァイザード)でしたか」

 

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