草案だけ書いて放置してたのですが、せっかくなので適当に書き足して後日談としました。
「ヨナ君、今日は来てくれてありがとうね」
「いえ、
高町さんの言葉に反応してお礼の言葉を返す。今僕がいるのは無人世界カルナージ。ヴィヴィオ達の合宿旅行に付き合ってここまで遠出をしにきていた。
「あはは、そんなに畏まらなくてもいいよ。せっかくだったらわたし達と同じ航行艦で来ればよかったのに」
「すみません、ちょっと外せない仕事だけ済ませて来ましたので。ですが来たからには皆様の訓練を間近で見られるのを楽しみにしてますね」
「うんうん。あっでも、女所帯になっちゃったのはごめんね。わたしの知り合いってなるとどうしてもね……。でもエリオとは年も近いしきっと仲良くなれるだろうから、良かったらそれから皆と話していけばいいよ」
「はい、ありがとうございます」
「も~、ママばっかりヨナさんと話しててズルいよぉ!」
高町さんとの会話の最中、僕の後ろからヴィヴィオがひょっこりと現れた。嫉妬かなんなのか頬をプクッと膨らませている。
「ごめんごめん、それじゃああとはヴィヴィオに任せるからね」
「はーい、任されました~」
僕の横を通り過ぎる時高町さんからこっそりと耳打ちされる。
「ごめんね。ヴィヴィオ先週ヨナ君がお泊りしたことをよっぽど気に入ったみたいで。あれからもっとヨナ君にベッタリになったもんね」
「……え、えぇ。僕もヴィヴィオに慕われているようで悪い気はしませんが」
「そっか。じゃあ子供達のお
「はい」
先週のことを話題に出されてドキリとしてしまった。何とか取り繕ったつもりだがバレてないようで一安心である。
「それじゃあヨナさん行きましょうか。リオとコロナ達も先に行っちゃってますから」
「そうですね。僕もここは初めてですし、色々と案内の方もお願いします」
「りょーかいです! ヨナさんがこっちに来てくれてよかった~」
ヴィヴィオはこっちの腕を掴んで軽い足取りで歩き出す。歩幅を合わせながら今日と明日の予定を聞き、ロッジの裏の河原へと歩みを進めていく。
だんだん近付いていくと楽しそうな声が聞こえてきて、水場で遊んでいるのが見える。
ヴィヴィオが3人を呼ぶと順々に上がってきたので、並んでもらう。
「それじゃあヨナさんお願いします」
「分かりました。では今から簡単な魔力の操作を教えたいと思います。僕の教えた通りに魔力を練ってみてくだいね」
「「はーい!」」
今回僕が大人組ではなく、子供達と一緒に行動するのは魔法の授業を実施するため。ノーヴェは体術専門であるから、代わりにとお願いされてのことだった。
大それたことを教えられるわけではないが、それでも実戦経験があるならと結構強引にノーヴェから頼まれてしまった。
今日やることは難しいこともないし、ヴィヴィオ達ほど優秀ならすぐに覚えられるだろう。
最初の最初ということで時間は一刻ほど。
案の定、3人ともすぐに魔力操作をものにしていた。
その後は折角の旅行ということでお昼まで遊ぶよう言っておく。全員川の中で競争やボールを使って楽しんでいた。
その様子を手頃な高さの石の上に座りながら見守っている。すると、ノーヴェが近付いてきて隣に座った。
「しっかし意外だったなぁ。ヨナがこういうのに参加するなんてさ」
「意外……ですかね?」
「そりゃそうだろ。こういった皆で集まる行事には全然参加しなかったし、なんか意図的に避けてんのかなーって思ってさ」
思い切り僕の行動の意図を察せられて内心ドキリとしていた。
頭はそんなに良くないと自負してる彼女だが、観察眼というか、人の機微をよく察してるなあと思う。
「ま、まあそうですね。集団の中に溶け込むというのが苦手でしたから……。でもヴィヴィオと接し続けてそういうのも克服していこうかなと考えただけです」
「ハハッ、ヴィヴィオは鉄仮面の神父のポーカーフェイスも解いちまったのか」
「……僕そんなふうに呼ばれてたんですね」
「あたし達姉妹の中でだけどな。だってヴィヴィオ以外のやつにあんまり表情変えないからさ」
事実なのだから何も言い返す言葉が思いつかない。でも結構ひどいあだ名ではないか……?
「ま、今は旅行を楽しんでけよ。なんか最近お疲れみたいだからさ」
「ええ、そのつもりです」
ノーヴェに笑顔で返していると、ヴィヴィオがこちらに寄ってくる。
「ノーヴェ~。リオとコロナが水切り教えてほしいって」
「おお、わかったよ。んじゃちょっと行ってくる」
「いってらっしゃい」
ノーヴェが立ち上がって川辺に近付くと、それと入れ替わるようにヴィヴィオが僕の隣に座った。
「よいしょっと。ふ~、水から上がるとやっぱりちょっと暑いですね~」
「お疲れ様です。ヴィヴィオは休憩ですか?」
「そんな感じです。でも少ししたらまた戻りますよ」
ヴィヴィオは普段皆に見せている
……そう思っていたのだが、僕が横に置いていた手に彼女の手が重なった時はビックリしてしまった。
「えへへ、その間だけヨナさんと2人きりですね」
「いやいや、ちょっと不味いでしょう。すぐ近くにみんないるのに……!」
「大丈夫ですよ。ルール―もノーヴェの水切りに集中していますし」
「それはそうかもしれませんが……」
ヴィヴィオはなおも指を絡めてくる。こんな状況に僕は気が気でないというのに。
高町家での夜、ヴィヴィオに組み伏せられた僕が言い渡されたことを思い出してしまう。
『わたしのお願いはですね、ずーっとヨナさんと一緒にいることなんです』
『え、ほ、他には?』
『何もいりませんよ。わたしが別にヨナさんのこと貶めたりするわけないじゃないですか。こんなにも好きなのに』
本当に好きなら隠し撮りや脅したりなどしないと思ったが、下手に刺激するのも不味い。それに、ただヴィヴィオといることで大惨事にならないというなら、ただ応じる他ない。
『わ、わかりました。それでヴィヴィオが満足するのであれば』
『――本当に?』
彼女の笑みがより鋭くなる。情けない話だが、僕は年下の少女にハッキリと恐怖を感じていた。
『朝起きて朝食を食べて学校に行ってお昼ご飯を食べて教会に行って家に帰って寝るまで、本当にわたしと一緒にいられますか?』
『なっ、そ、それは無理でしょう! ヴィヴィオにも僕にもそれぞれ家があるんですから』
『無理ではありませんよ。ヨナさんがご自宅を教会に返してここに住めばいいだけの話なんですから』
『そんな、僕ではその話を通す権限なんてありませんし……』
とんでもないことになってしまった。まさかそこまで彼女が無茶な要求を通させようとしていたとは思わなかったから。
もうどうすることもできないと思い途方に暮れていたが、ヴィヴィオの笑顔に柔らかさが戻っていった。
『うふふ、ごめんなさい冗談ですよ。ヨナさんに負担かけたいわけじゃありませんから。色々考えてる姿がかっこ良かったのでつい』
『そ、そうですか……』
その言葉にホッと胸を撫で下ろす。
『……でも、わたし中等科に上がったら家を離れようかと思っているんです。そしたらヨナさんもわたしを守るために動かなきゃいけないですよね?』
『え……』
『そしたら一緒に住んでくれますよね?』
それからは何事もなかったかのように明るい様相で振る舞い、一緒に眠ることになった。決して夢見のいいものではなく、少しずつ元気がなくなっていったように感じる。
それに、その後ヴィヴィオから今日の合宿に参加してほしいというところから様々な『約束』をさせられるようになった。
「さっきノーヴェと何を話してたんですか? 前から思ってたんですよね。ヨナさんが他の女の子と話してると、すっごい胸の奥がムカムカするんです。だからですね、わたしといる時以外で女の人と話すの禁止です。約束ですよ」
そう、このように。
「そ、それは無理があるんじゃないでしょうか……。仕事場でも学校でもどうしても必要な時があると言いますか……」
「だ~め。ヨナさんが少しでもわたし以外に気を取られることが許せませんから。絶対ですよ」
今までの彼女だったらありえない要求だ。先週のことが弾みとなってブレーキが壊れたのではないかと感じる。
だが僕はそれを断れない。断ったあとのことがどうなるか想像できるから。
「……わかりました」
ヴィヴィオはにっこりと笑う。
そして徐々に顔を近付けて僕達は――
幼女に手玉に取られてる男、みたいなシチュエーションって良いよね……