ずっと手探りの状態だったので他のものに比べてだいぶ短いです。
※簡単な主人公の説明
・13歳。なのは達と同年代で仲良し。魔法は前衛型。
本日の授業が全て終わり、担任の話を聞きながら帰りの準備を進める。
放課後になれば早速駄弁る姿がチラホラ見られるが、俺はその横を通り過ぎてさっさと教室から出た。
……別に友達がいないわけじゃないよ?
今日は用事があって時間に余裕がないだけだから。少ないけど俺の相手をしてくれる人もいるから……って自分で言ってて悲しくなってきた。
男女別学となった私立聖祥大附属中学校で、俺は間違いなくぼっちに片足を突っ込んでいる状態にある。だからといって友達がいないというわけではない。
ただその比率が女の子に傾いているだけである。小学校の頃は共学で、俺はなのは達のグループにいた。幼いと性差をあまり気にすることもないものだから、俺にとってはそれが当たり前だと思っていた。
それに加えて9歳の頃に『魔法』の存在を知り、その事件に関わっていくと、どんどん女性の知り合いばかりが増えていくことになった。当初はそれもあまり気にしていなかったのだが、中学に上がる時にハタと気が付いたのだ。
――俺、学校の男友達っていないんじゃ……。
エスカレーター式のこの学校において、外から新しく生徒が入ってくることは少ない。だから6年生になる頃にはグループはすでに完成しており、そこに入る隙間は存在していなかった。
何とか努力して小さいところにいれてもらいはしたが、まだまだ仲良しとは程遠い。
そう考えるとなのは達がいた頃は楽しかったなあと思う。
当たり前のように側にいたし、気まずい状況というのがまずなかった。
中学校に上がってからは人間関係に気を遣うばかりで、気苦労が多い。それも社会には必要だとしても、俺はまだ遊んでいたい年頃なのだ。
しかし遊ぶ仲の者がいない。客観的に自分の立場を考えると中々にしんどくなり、落ち込んだままトボトボと帰宅することになった。
家に帰ると早速テレポートの準備を開始する。
向かうのは時空管理局本局の無限書庫。そこにいる旧知の仲であるユーノに会う予定だ。
ユーノ・スクライア。俺達に魔法を教えてくれた張本人で、本局に勤務するようになった今でも親友としての付き合いが続いている。
彼も同性の友達が少ないので、非常に話が合う。
疲れた俺を癒してくれるのはユーノしかいない。今から会うのが楽しみだ。
「やあいらっしゃい、みずは」
「久しぶりユーノ」
半日程度の航行の後、俺は本局に着き早速目的地に向かった。
無重力空間で浮きながら本の整理をしていた金髪の男の子が俺に気付くと、こちらへ近づいて来てお互い握手を交わした。
その時髪がフワリと広がる。ユーノは昔は短く切っていた髪を今では首元まで伸ばしている。男だというのに、その中性的な容姿と相まって女性と見間違う時が多々あった。
「? 僕の顔になにか付いてる?」
「あいや、ごめんごめん。なんでもないよ」
「そう? それじゃあ休憩室に行こうよ。ゆっくり話もしたいしね」
「ああ、そうだな」
ユーノの言葉に従って彼の後を着いていく。すると、前から良い匂いが鼻をついた。
「あれ、ユーノ香水変えた?」
「そうなんだよ。よく気が付いたね」
「なんかいつもと匂い違うなあって思ってさ」
ユーノが香水をし始めたのはいつの頃からだったろうか。
俺が小学生の頃はやってなかったような気もするし、そうしたら中学校に上がってからのことだと思う。
それについてとやかく言うことは何もない。俺はそこら辺詳しくないだけで、こういったものもおしゃれだろうから。
ただし、ユーノが使っているのは甘い香りのもので、女性用のものだと言っていた。男性用のものは匂いが独特であまり好きじゃないのだとか。
どこの物なのかと聞いたことがあったのだが、企業秘密だとかで教えてくれなかった。
「あはは、みずはに気が付いてもらえると嬉しいなあ」
(……うーん、本当に男だよな?)
言ってることとか仕草がいちいち俺の感情を揺り動かしてくる。ユーノが男じゃなかったら今まで何度勘違いしまくっていたことだろうか。
入口を出てすぐ横には書庫の利用者のためのスペースが設けられている。俺達はそこの一角を借りて座ることにした。
ユーノがお茶を持ってきてくれた。感謝の言葉を告げながらカッブを手に取ると、彼も向かい側に座る。
「頼まれてた資料はこれと、これかな。いやあ、数年前の事件の資料なんて何に使うの?」
「隊長から、お前は経験が足りないんだから調査の仕方頭に叩き込んでおけって言われてさ。来週から中間試験なのに無茶言うよな……」
「ああ、もうそんな時期なんだね。勉強の方はどうなの?」
「ボチボチかなぁ。任務もあって学校休むことも多いし何とか追いつくのでいっぱいいっぱいだよ」
マルチタスク鍛えてなかったら危なかった。なのは達は平然とこなしてるけど、凡人の俺じゃあんなに複数の物事をこなすことなんてできない。それでも勉強時間の短縮にはつながっているので非常に有難いのだが。
一息つくためにティーカップを傾けると、甘い液体が舌をなぞっていく。良い香りだなあと考えていたら俺はピタリと止まった。
甘い。とても甘いがなんというか複雑な甘さだ。俺は大丈夫だが人を選ぶお茶なのではないだろうか。気になるしあとで聞いておこうかな。
「そっかあ、みずはも大変だね。僕は学校行ったことないけど、ここにいても興味のないことを頭に詰め込むのって大変だから分かるよ」
「そうそれ! 好きな科目だった良いけどさ、苦手なものはとことん覚られないのがしんどい。といってもユーノの方が大変だろうけどさ」
「いやいやそんなことはないよ。みずはだって学校と管理局の任務両立してるわけだしね」
「俺は体動かせる分まだストレス発散にはなるけど。ユーノは書庫にこもりっきりだから気も滅入るだろ。休み取れるなら地球で気分転換でもしないか?」
「それは良いね。海鳴市にもほんとしばらく行ってないから……。皆とまた温泉にでも――」
「ん? どうした……?」
ユーノが突然止まった。顔がじゃっかん引きつっているようにも見える。
「ああいや、ちょっと嫌なこと、じゃないけど思い出さないようにしていたことがね……」
「え、なんかあったの?」
彼はカップを持って一口含むと話し始めた。
「去年旅行に行ったことあったじゃない?」
「ああ~行ったなあ。遊園地に寄った時フェイトが迷子になってたっけか」
たまには休暇も兼ねてということで、クロノやリンディ艦長らも呼んで皆と遊びにいったことがあった。
俺も男友達ができないことに落ち込んでたから、クロノとユーノと久しぶりに会った時は2人が女神のように思えた。男だけど。
「そうそう。それでね、僕はなのはの家に泊まらせてもらったんだけど、なのはが折角だしお風呂に一緒に入ろって誘われたんだよね……」
「あ~……」
あの
なのは的には久しぶりに会った友達とスキンシップを取りたかっただけかもしれないが、ユーノからしてみればそりゃあ複雑な気分になるだろう。
「いや、うん。誘われたことは嬉しいけど、なんかこう色々とね……」
「わかる、わかるぞユーノ。俺もなのは達のお泊り会に一緒に参加しないかと誘われたことがあったからな。そんなとこ行けるわけないだろと叫びたかったけど我慢したよ」
5人の女の子がいるところに男1人で突っ込めるほど俺は無謀ではない。
しかし彼女達もちょっと嫌だなあとか意思表示すればいいのに、「たまにはええんとちゃう?」とか言っちゃうし。勘弁してくれとと思ったが、ありふれた理由でその場は凌いだ。
「あはは、みずはも経験あるんだね。ちょっと安心したかも」
「俺もユーノのおかげで自分だけがおかしいわけじゃないと分かってよかったよ。やっぱり男として見られないっていうのも嫌だよなあ」
「……そんなこともないけどね」
「え、ごめんなんて言ったんだ?」
ちょっと暑いなあと考えていたら、ユーノからの返しの言葉が小さくてうまく聞き取れなかった。だが彼は笑顔で顔を上げる。
「そうだよねって言ったんだよ。だから今度地球でまた旅行でもするならみずはの家にお邪魔させてほしいんだけど、良いかな?」
「俺は構わないよ。ユーノが家に来たことってないから楽しみだね」
「ほんと? 僕も今から楽しみにしておくよ」
そう言ってユーノは柔らかく笑う。
それからも俺は彼と楽しく談笑していた。久しぶりの再開で積もる話もあったし、更に女性関連で大変だったことの話題を出し合っている。
お互い男友達が極端に少ない同士。境遇が似てるということで女子会ならぬ、プチ男子会みたいになっていた。
この『同性の友達少ないの会』にはあとクロノも混ざってくるのだが、あいつはリンディ艦長の後任として徐々に引き継ぎも行ってることからまた忙しくなって、なかなか直接会うことはできない。
皆で休みを取りたいなと改めて思った。
2人で盛り上がっている内に、ふと時計を確認して驚く。
「お、もうこんな時間か。悪いなユーノ、仕事の邪魔だったろ」
「まさか、みずはと話せて僕も楽しかったよ。……ところで、今日はこれからどうするの?」
「どうって、明日帰る予定だし適当にホテルに泊まろうかなって思ってたけども」
「そっか。なら僕の家に来ないかい?」
「ユーノの家に?」
彼は立ち上がって身を乗り出しながらこちらに提案をしてきた。今までそんな誘いはなかったから珍しい。
「うん。ホテルにお金払わなくて済むし、まだみずはと話していたいからさ」
「俺もそう思ってたけど……うーん、でもなぁ」
「僕の家は嫌? せっかく来てくれたんだからおもてなししようかなって考えてんだけど……」
なんだか普段では考えられないくらいユーノの押しが強い。いつもだったらそもそも家に呼ぶようなことはしなかった筈だ。
しかしユーノの言っていることも分かるので、お邪魔してもいいならお願いしようかなとも考えた。
落とした目線を彼へ戻した時――俺の体は瞬間的に硬直してしまう。
「どうかしたかい?」
前のめりになるような体勢のユーノ。そのためか服が下へ垂れてその隙間から彼の首から鎖骨までが露わになる。
俺の視線はそこへ釘付けとなり、体の暑さが一気に高まったのが嫌でも感じられた。なんだかユーノからの匂いが強くなったような気がして、次第に鼓動が早くなって呼吸が苦しくなる。
これは不味いと、警鐘を鳴らした俺の脳が、咄嗟に言い訳を口に出していた。
「い、いや、実は基地の方にも寄りたいなあって考えててさ。そしたらこっちまで戻ってくるには時間が足りなくなるんだよ。だから次の機会じゃ駄目かな?」
「……そっかあ。それじゃあしょうがないね」
「う、うん悪いな。次はちゃんと予定立ててくるから。それじゃあ」
そこまで言い切って早足で無限書庫から飛び出した。
巻き付くように俺の周りに漂っていた香水の香りから抜け出すと、途端に思考がクリアになっていく。
未だに熱は引かないが、余裕はできてれた。
今のは何だったのか。ユーノの体を見たら体が驚くほど心臓が高鳴った。
まるで女の裸体でも見た時のような感覚だ。ということは、俺はユーノに欲情したとでも言うのか。
……いや、いやいや。それは流石にないだろう。
仮にもユーノとは男同士であり、俺はいたってノーマルな人間である。いくら姿かたちが中性的で香水を使ってるといえど彼を女だと思うようなことはできない。
温泉に入った時もちゃんと性別は確認した。だから彼への認識は絶対に覆らない。
だというのに、俺はユーノのちょっとした仕草に緊張が走っていった。それがショックでならない。
ひょっとしたら俺はそっちの
(これからどんな顔してユーノに会えば良いんだろう)
俺は航行艦の乗り場に並びながら、悶々として考え込んでいた。
とりあえず次会ったら頭の中で謝罪しながら彼の家に行こう、とそう決めて思考を切った。
・
・
・
「うーん、逃げられちゃったかあ」
1人になった無限書庫の休憩スペースでひとりごちる。
残されたのは僕と、すっかり冷めてしまったティーカップが2つ。中身は微妙に異なる色のお茶が入っている。
残念だという気持ちもあるが、同時に彼の忍耐力に感嘆した。
彼に恋心に抱いたのはいつの頃からだったろうか。自覚したのはつい最近のことだけど。
彼に出会った当初は助けてもらった恩人だった。でも常に前に立って戦う彼を見て、僕も彼のようになりたいと思うようになっていた。
それは無理だとすぐに諦めは着いたけども。
彼と僕の魔法資質は正反対のものだ。どうあっても僕は彼にはなれない。
だから、彼のために後方からサポートとしようと考えた。無限書庫で働くことを承諾したのもそのため。彼から感謝されたいという一心で今までやってきた。
そこまでして、僕はようやく彼への想いを自覚することになる。
最初は当然苦悩した。男の僕が彼にこんな気持ちを抱いてしまっていることに。自分でも気持ち悪いと思っていたのだから、周りからも当然そういう目で見られるだろうと考え、誰にも相談できなかった。
でも、なのは達を筆頭に可愛い女の子を見ても、僕は何の感情も浮かんでこなかったのだ。だから僕は最初から男しか愛せないということ理解してしまった。
なんだかそこまで考えたら逆に吹っ切れてしまった。
嫌われても何をしてもどうせ彼に拒絶されたらお先真っ暗である。だったら行くとこまで行ってしまおうと。
彼を手に入れるためならなんだってやってみせる。
彼の好みに合うように髪型も変えた。服装も変えた。
そして今日のために媚薬効果のある香水とお茶を、誰にも見つからないように用意しておいた。
彼に襲われないかと期待もしたが、バレにくくするようにとちょっと希釈しすぎたかもしれない。
「まあ、またの機会に新しいのを試せばいいよね」
失敗を悔やんでもしょうがない。どうせ当たって砕けるしかないなのだ。もし男としての僕が受け入れられないのなら躊躇せず性別も変える。
それは最後の手段だとしても、次に会う時はどうしようか。もっと強い媚薬を使おうかとも思う。
要は既成事実を作ってしまえばいい。
責任感の強い彼なら僕の傍にいてくれるようになってくれるはず。
まだ時間はあるのだからじっくり考えよう。彼の隣に自分がいることを思うと胸が高鳴る。
「それまでは君をずっと見ているよ」
自分でもだいぶキャラ崩壊させたなあと思っております。
ということで献身的(?)な男の娘のユーノを書いてみました。
面白そうだと思って書き始めましたが、精神がガリガリと削られていって長く書けませんでした(´・ω・`)
結論:私にBLはムリ