恵里は今日も壁に頭を打ち付ける(完結)   作:コミッサール

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エリリン劇場第十幕開演です。
お気に入り百十件越え真に有り難う御座います。
感想も十件も頂き、感激しております。
今後とも、よろしくお願いいたします。


第十話 霊の世界はある!!!ただし世知辛い模様

 

 

霊媒(降霊術士)としての力を見せた恵里の立場は変わったが、大きな変化ではなかった。

警察、精神病院は元々参考人や患者の秘密保持に長けた組織であり、八重樫道場は言うまでも無い。

それに霊媒というだけで、胡散臭い話と思われるので、拡散しなかったのが大きかった。

そして肝心の南雲家では、恵里が色眼鏡で見られる事も、距離を置かれる事もなかったが、置かれた方がマシだったかもしれない。

「恵里ちゃん、恵里ちゃん、これ家康公六歳のみぎりのサレコウベだそうだけれど、召霊の触媒に使えるかな?」

「手塚大先生を漫画を触媒に私に降ろして、未完の作品の続きを書いて貰うのは?」

「僕が留守の時に死んじゃったカブトムシにサヨナラ言えるかな?」

「・・・・・ボクの霊力がカラッポになったので、当分無理」

(きっとボクが後追い考えたりしないように、賑やかしてくれているんだろうけど、・・・・そうだよね?

まさか本気で言ってる訳じゃないよね?

大体六歳の時の髑髏ってナニ?)

 

 

恵里は枯渇した魔力の補充に苦慮していた。

前回霊媒の力を見せた為、警察からの協力要請が殺到しているのだ。

被害者の霊と話せれば、これまで迷宮入りの事件がアッと言う間に解決するだろうから、当然の事だった。

しかも迷宮入りした事件という事は、時効が近いという事でもあり、矢の催促だった。

前回警察に借りを作っているので、ある程度対応しない訳にはいかない。

だが、魔力が無ければ絵に描いたモチである。

これまでのように、自然回復に頼っていては、こなすのは到底不可能。

ならば、どっかから魔力を手に入れなければならない。

それには幾つかの方法が有る。

ひとつは生き物の命を魔力に変換するやり方だが、バレた時のリスクがでかすぎた。

ちなみに高等な生き物ほどより多くの魔力に変換出来る物なので、虫やバクテリアを変換しても無駄である。

もうひとつは何らかのエネルギーを変換するやり方だ。

原作でハジメがやっていた電力変換である。

しかしこれはアーティファクトの作成が必要で、恵里の専門外である。

最後のやり方は地脈、竜脈などと呼ばれる魔力の流れを見つけて吸い上げるやり方、

これなら恵里にも出来る。

と言うわけで、恵里はオカルト本や雑誌と首っ引きでそういう場所を捜し、今日はハジメと雫に護衛して貰い、愁の運転で県内の山に来ていた。

もっとも護衛といっても所詮は小学生、二人がお出掛け気分で浮かれているのを、恵里は生暖かい目で見ていた。

(あー、初々しくてほっこりするなあ。

うん、小学四年生に恋愛なんて早すぎたんだ。

お手て繋いで仲良しこよしの年じゃないか。

ボクは焦り過ぎていたんだな。)

 

さて恵里としては、本当は高野山とか霊山と呼ばれる有名処の山に行きたかったが、警察もニンジャも県外は管轄外で協力が得られないので、仕方無い。

何でもイーガーだの、コーガーだの、フーマだの、あちこちの県に色々なニンジャがいてフシギな踊りをしたり、県警や犯罪組織と癒着しており、県境越えると散々妨害して来るそうである。

まだまだ未熟なニンジャである三人には無理であった。

 

仕方無く最初は県内での有名処の神社やお寺に行って見たが、皆地脈が使われていた。

恐らく創建当時に地脈を使って御利益が出るように設計され、自動的に使われるようになっていた。

これでは破壊しなければ奪えない。

しかも幾つかの寺社では、巫女さんやお坊さんがこちらを監視していた。

(アカン、あれはわかってやっているよね。

宗教団体は魔法使える奴いるんじゃないのか?

やだなあ、裏高野とかバチカン特務局とかあるんだろか?

きっと昔から水争いならぬ魔力争いとかあって、宗教団体の間で利権ガチガチに固めらているんだろうな。

ハア、知りとうなかったよ、そんな世知辛い裏の歴史。

ああ、ほんとボクは何にも知らず、地雷原でタップダンス踊っていたんだなあ。

何れにせよ、現時点では手が出せない。

これ以外の所だと、今は使われていない寺社跡かあ、山奥ばっかで道もろくにないなあ。

待てよ、地図に古代の磐座とか巨石遺跡が載ってるぞ。

これも宗教施設跡には違いない。

流石に縄文時代の利権はないよね?

こっちは文化財という事でアクセスも整備されている。

よし、行ってみよう)

 

たどり着いた古代の磐座はきれいに整備されて解説板に、駐車場まであった。

「あー、ダメだ、こりゃ」

磐座からは欠片も魔力を感じない。

引き返そうとして、ふと気付いた。

(あれ?自然界なら必ず有る、僅かな魔力まで無い?)

磐座の周りをゆっくり廻ると、ハジメがスッと恵里の後ろのバックアップ出来る位置に動き、雫が周囲の警戒に入った。

愁は車の運転席に戻って、エンジンを掛けた。

(地脈がもし存在するならぱ、磐座の下から沸き上がっているハズ。

なのに寺社でも多少はある魔力漏れが欠片も無い!!

驚いたよ、凄い技術だ。

でもやり過ぎたね。

お陰で気付けた。

さあて入り口は何処かな?)

 

磐座の隙間を覗くと、空間の裂け目が見えた。

(神域の異界群と比べたら、豆粒みたいに小さい異界だなあ)

恵里は周辺警戒をハジメと雫に頼むと空間の裂け目に腕を突っ込みながら、エヒトに改造された魂魄の権能の一つを発動した。

使徒に神域の異界群の間をスムーズに移動させるため、与えられた権能である。

異界を抉じ開けて、出入りできる物だが、逆行後、その世界に附属する異界にしか行けず、手近に異界も無いので宝の持ち腐れになっていた。

 

異界に侵入する恵里は、ワクワクしていた。

魔力漏れを完全にゼロにする高度な技術、それでいて極めて小規模な異界の大きさ、

何らかの宝物庫ではないかと。

そして、抉じ開けた恵里が見た物は、ミッチリと妖怪が詰まった異界だった。

まん中に魔力が噴き出す竜穴があり、その周りに妖怪達が押しくらまんじゅうをしながらミッチリと詰まり、「押すな、押すなよ」と声を挙げていた。

妖怪達の数が多すぎるため、魔力は全て妖怪に吸われ、欠片も流れて来なかった。

口をあんぐりと開けた恵里に、妖怪達が気付いた。

「こいつ、人間のクセに少しだけど魔力持ちだ!

このガキを食えば寿命が伸ばせるぞ」

「人を三蔵法師にするんじゃない!!」

恵里は手近な妖怪に蹴りを入れた。

輪の外側の妖怪はろくに魔力を貰えていなかったのでひどく衰弱しており、蹴り一発で吹っ飛んだ。

続けて次々と蹴りを入れて、妖怪達を前へ押しやった。

「押すな、押すんじゃない、フリじゃないんだ、やめろー」妖怪達は悲鳴をあげながら次々と竜穴に落ちていき、魔力に分解されて逝く。

穴の淵にいたが何とか妖怪雪崩を逃れた、強力な鬼の妖怪の一匹が手下を引き連れ、恵里の前に現れた。

「貴、貴様、何と言うヒドイ真似を!赦さん、生かして帰さんぞ!!」

恵里は無言で妖怪達の輪に空いた大穴から流れてくる魔力を味わっていた。

分解された妖怪の魔力も加わり、濃厚な魔力が恵里にすさまじい勢いで吸収されていく。

恵里は殴りかかる鬼の妖怪の拳を天井にジャンプして躱し、その勢いで鬼の頭上を飛び越え、竜穴近くに残っていた妖怪に回し蹴りを喰らわせ、穴に突き落とす。

竜穴を後ろにして立つ恵里に、数に物を言わせた妖怪達が戦列を組んで包囲し、押し潰し突き落とそうとする。

恵里は俯いて微動だにせず、絶体絶命に見えた。

妖怪達が雄叫びを挙げて突進を始めた瞬間、恵里は俯いていた顔を挙げ、ニタリと嗤った。

灰翼を極度に絞り、細いワイヤー状に展開する。

それを鞭を振るように、薙ぎ払った

密集していた妖怪達は灰翼が触れた胴体を分解切断され真っ二つになって全滅する。

小型の妖怪達は背が低いため、灰翼が通り抜けたラインより下にいたため生き残っていたが、士気が崩壊していた。

灰翼の表面積を減らす事で、魔力節約と脳負担の軽減をする、恵里が編み出したささやかな技である。

逃げ腰になった妖怪達に、恵里は肉食獣の笑顔で嘯いた。

「ボクに従うか、糧に為るか選べ」

「ヒイイイー」

自棄になって、襲い掛かる妖怪達を分解切断すると、残りの跪いた妖怪達に命じる。

「ボクの留守の間、ここを管理しろ。」

タヌキの妖怪が顔をあげる。

「あ、あの~、具体的に何をすればいいんでっか?」

「うん、いい質問だね。

とりあえず、君が中心になってこれまで通り、魔力を管理して、外敵に気付かれないようにすればいい。

当分の間、留守の時魔力は好きにしていいが、勿論外の人間に手を出すのは、禁止だ。

ボクは時々やって来て、魔力を補充させて貰う。

ああそうだ、タヌキ君だけはちょっと外に出てもらうかな」

 

恵里とタヌキが外に出ると、心配したハジメと雫が待ちわびていた。

「ただいま、親切な妖怪さんが霊力を分けてくれる事になったんだ。

ねえ、そうだよね、タヌキさん」

恵里に欠片も笑っていない目で微笑まれ、タヌキは体をブルッと震わせ答えた。「え、ええ、そ、そうや」

それを見詰めていた雫が、死角からゆっくりと足音も立てず近づいて来た。

そしていきなり、人差し指を突きだしてタヌキの背中に触れた。

「キャー、キャー、触ったあー」

ピョンピョン跳び跳ね、大喜び。

「な、なにすんや」唖然とするタヌキに反対側からハジメが近づき、ワシャッと頭を鷲掴みにする。

「僕もー、あー、雫ちゃん、すごくモフモフだよ」

「ホントだ、うわー、モフモフー」

「ね、姐さん、助けて呉れへんか?」

恵里は目を逸らした。

「幸運を祈る」

「そないな殺生なー」

(これで補充拠点が手に入ったし、お兄ちゃんと雫の仲も深まったし、今後タヌキは二人から逃げ回るだろうから、機密保持もやり易い、三方良しだね)

「わ、わてはどうなるんやー」

(あーあー、聞こえない、聞こえない。

これで警察に貸しが作れる。

やっと魔力も権力も財力も無い、ナイナイ尽くしの状態から脱出出来た。

ボクの戦いはこれからが本番だ)

 

ある場所にて、まるで王侯貴族のような豪奢な服装で冠を頂いた一人の老人が、呟いた。

「フム、また神世魔法の反応か、あまりに短時間で場所までは掴めなんだが、気になるの。

探知を強化して、次こそ場所を特定するとしようか。

今だ使い手が居ったとは、愉快じゃ」

窓から絶え間無い雷光が差し込んでいた。

 




これまで毎日更新出来ましたが、これからは週一回ぐらいとお考えください。
出来たらもう少し早く出来るかもしれませんが。
よろしくお願いいたします。
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