御待たせいたしましたが、エリリン劇場第十一幕開演に御座います。
ハイヤー、ヨロコンデ、オジャマシマス!
恵里は今日も忙しい。
学校に道場、警察からの霊媒の仕事、異界の管理、魔法の研鑽、屍虫を使った盗聴、ネットでのオカルト情報収集、色々な作品や史実計画兵器などからの使えるアイデア集め、今後の計画立案、など、など、など幾ら時間が有っても足りる筈がなかった。
南雲家の面々と雫、タヌキに手伝ってもらわなければ、過労死していたろう。
仕方無く、幾つかの仕事は丸投げした。
異界の管理は真っ先にタヌキに丸投げ、サボるようなら、雫を連れて来てモフモフさせると言ったら頑張ってくれるようになった。
オカルト情報の収集は警察にも情報を回して貰い、ネットでの収集と合わせ、雫に整理を任せた。
真面目にコツコツやるタイプの雫には合っていたようだったが、怪談に嵌まって人に聞かせたがるようになり、あちこちで被害者を生産する事になる。
使えるアイデア集めは、南雲家の団欒の中にそうしたお題を入れる事で、ゲームと漫画とアニメをミックスした高度なアイデアを出してもらえた。
(神言を自分の回りに魔法瓶みたいな真空の壁を造って、聞こえなくすることで防ぐとか、よく思い付くな。
「聞こえなければ、どうという事はない」って三人揃ってドヤ顔で言うのは、引いたけど。
後ナデシコとかいうのに出て来たディストーションフィールドって良いね。
使徒とかやたら強力なビームモドキぶっぱなしてくる奴けっこういるし。
重力魔法の応用で作れそうだ。
ああ、同じ重力繋がりでグラビティブラストも出来るかな?
そして、SF小説に出て来た言語兵器、これは凄い。
神言とは別の方向で言葉を武器にするとは。
言葉そのものをプログラムに見立て、ウイルスプログラムみたいな詩で、相手を操ったり、狂わせる。
魔力を使わずここまで出来るとは、恐れ入ったよ。
これ前回手に入れた技能の言語理解を極めたら、作れるよね?
これ魔法攻撃じゃないから、魔法防御素通りして、エヒトにも効くんじゃないかな?
まあ、効くかどうか保証のないカード一枚に全てを賭けるわけにはいかないから、他の手も用意しよう。
前回お兄ちゃんがバケモノだった理由よくわかったよ。
お兄ちゃん一人の発想であそこまで出来たなら、三人寄れば文殊の知恵をやったら何処まで行けるか空恐ろしいね)
非常に参考になるだけで無く、恵里自体が臨機応変の発想が出来るようになった。
その結果は魔法の研鑽に採り入れられ、成果を上げていく事となる。
霊媒の仕事の警察との交渉は愁にお願いし、降霊術だけに集中できるようになった。
触媒用遺品も警察が用意してくれる簡単な仕事なので、通常の魔法だけで済んだ。
警察からの協力謝礼金は菫が管理し、恵里名義の口座で積み立てている。
こうして恵里の頭脳面での負担は、かなり軽減された。
肉体的にも、南雲家で大幅に食料の質が改善されたうえに(それまでは育児放棄でインスタント食品やパン屋でくれる食パンの耳)、八重樫流の鍛練で運動量も大幅に増加、成長期であることも相まって、恵里とハジメの食べる量がすさまじい事になり、南雲家のエンゲル係数が跳ね上がる事になる。
その結果、鶏がらのようだった恵里は、身長が伸び始め、体型もスタイルのいい引き締まった体に変わり、レベルもほとんど回復している。
高校までいけば、前回の二大美女が三大美女に変わることになるだろう。
ハジメも前回より、かなり身長が伸び、引き締まった筋肉質な体になり、何よりも精悍な顔付きに変わってきた。
恵里を守るという気構えと武道の相乗効果である。
もうハジメが苛められる未来は無い。
誰がシュワルツェネッガーを苛めにいけるだろう。
全て順風満帆、未来は晴れ渡った青空のように思えた。
そのころ、バチカン市国教皇庁第二図書館の一角で緊急の悪魔対策会議が開かれていた。
最近世界的に悪魔崇拝者の活動が活発化しているのだ。
世界全体を網羅するように、これ迄の記録に無い謎の儀式を行っており、特にこれ迄活動があまり無かったアジア地区を中心にしているようだった。
魔界と地球を繋げる為ではないかと、警戒を強め、調査を行っている所に爆弾が放り込まれた。
日本の警察内部の信者から、霊媒の少女が次々と未解決事件を解決し、警察上層部への影響力を急速に増大させてきているのだが、その母親が娘はニセモノであると主張し、「黒い翼の悪魔」と罵っていたという情報が届いたのだ。
更に母親は病院に居たにも関わらず、衰弱死という不審な死に方をしたという。
そして普通であれば同情され、手加減される少女の悲惨な過去は、おもいっきりマイナスだった。
悪魔崇拝者は、世界に絶望する事で堕ちるからである。
教皇庁特務部悪魔対策局「オムニブス」は南雲恵里に対する異端審問を決定し、事の重大性に鑑み、若すぎるにも関わらず聖女クラウディアをも含めた精鋭チームを派遣した。
ロンドン近郊、オカルト秘密結社ヒュドラの首領ジェファーソン オルグレイの屋敷では、優雅な晩餐会が開かれていた。
ジェファーソンはナプキンで口を拭いながら、会話を楽しんでいた。
「聞いたかね、極東の霊媒少女の話。
霊媒が警察に協力というのは、切羽詰まった警察があちこちでヤラカス良くある話だが、迷宮入り事件を次々と八件も解決するとは尋常ではない」
「それに口だけでは無く、目に見える形で霊を呼び出すとの事ですな」
「然り、本物としか思えません。
まあ、万一偽物ならば、我等の手で暴けば良い事。
いかがですか、こちらに招待するのは?」
「皆の意見は同じかな?
では、そうするとしよう。」
入道雲の諸峰は急速に盛り上がりつつあった。
(ウウウ、言語理解だけじゃ駄目で文学的素養が無いと詩が作れないなんて、そんなん有り?
色々な詩を読んで、素養を深めなきゃ。
駄目だ、人間の作品だけじゃ、それ以外の種族のって、無茶言うな!
ここはトータスじゃ無いんだぞ!
ン、そうだ!!)
ある山奥の廃寺跡、自殺志願者を誘き寄せて餌食にしてきた蜘蛛の妖怪は強大なナニかの気配がいきなり目の前に現れたのに絶望した。
黒装束を纏った小柄な人影は、凄まじい威圧で蜘蛛妖怪を金縛りにすると、言い放った。
「ボクに従え」
大蜘蛛は安堵の余り、這いつくばって恭順の意を示し、何を望むか尋ねた。
「俳句を詠め」
「ハイ?」
助命されたと思ったら、辞世の句を要求された大蜘蛛妖怪。
次の瞬間、「最早、これ迄ー」襲い掛かろうとして、速やかに爆散する。
「なんで、この辺の妖怪連中は揃いも揃って偽装降伏で騙し討ち仕掛けてくるんだ?
全くこっちは人外の創った詩が要るから、俳句で良いから欲しいだけなのに」
恵里は首を捻りながら、犠牲者を救助して撤退した。
「お達者でー」
こうしてあちこちで妖怪退治して、救助して回ったため、八重樫道場から「退魔忍」の称号を授けられ、恵里がブチキレるが、それは又別の話である。
オタッシャデー!