アレェー?
という訳でエリリン劇場第十二幕開演です。
可笑しいな、幾ら休日だって??
その警察上級幹部は恵里が気に食わなかった。
霊媒などという訳の分からないモノに警察が依存し始め、難事件の解決を恵里にすぐ頼ろうという傾向が出て来た事もさりながら、何よりも気に食わないのは、ホンの一瞬見せた恵里の目だった。
「アレは犯罪者の目だ。
小学生がする目じゃ無い、人を見下し利用する駒としか見ていない奴の目だった。
あの歳であんな目をする奴なんかに警察が頼るなんて冗談じゃ無い。
絶対にロクでもない事を仕出かすぞ」
オマケに、入手できた恵里の過去情報は怪しいモノだらけだった。
悲劇の少女というカバーに覆われているが、よくよく考えてみると、ガリガリに痩せて力などほとんど無い筈の小学三年生が大の大人を返り討ちにしてツブシ、母親が突然発狂して、本気で殺そうと腹を貫通する程の重傷を負わせたにも関わらず、大人二人の追跡から数百メートルも逃げおおせているのだ。
人間とは思えない、あり得ない肉体能力である。
オマケに母親は「悪魔の子」と恵里の事を呼んでいたが、精神病院で恵里に会った後から急速に衰弱し始めて死亡した。
この時、そのキリスト教徒の警察幹部の頭に浮かんだのは、以前見た「オーメン」というホラー映画だった。
悪魔の子ダミアンが家族や周囲の人間を破滅させ「不幸な事故死や病死」を撒き散らしながら、権力を掴み、地上に悪魔の王国を創ろうとする話である。
あまりの不気味さに、恵里に頼るのを止めるように主張したが、だったら代案を出せと無茶を言われて相手にされず、恵里関連に関われなくなった。
思わず教会の懺悔室で愚痴を溢し、恵里の事をぶちまけた。
ひょっとしたら本当に悪魔の子ではという思いはあった。
だが、バチカンが完全に本気にして、特殊部隊にしか見えない連中を本当に送り込んで来るとは思ってもみなかった。
彼らを案内しながら、ただ一言思った。
(こいつら銃刀法違反だよな。
どうしてこうなった)
悪魔大公爵アガレスは舌打ちしていた。
悪魔崇拝者達に命じて、せっかく神代魔法への探知能力を向上させるべくあちこちで儀式を行わせたというのに、肝心の神代魔法が使用されないのだ。
「フム、まさか気付いて警戒しておるというのか?
これは油断がならぬ」
全て勘違いである。
原因は恵里が無理をする必要がなくなった事にあった。
降霊術はきちんと必要な触媒が供給されたため、普通の魔法で済み、レベルがほとんど回復したため、戦闘で無理をする必要もなくなったのである。
この状況で節約が身に染み付いている恵里が、魔力をバカ喰いする神代魔法を使う訳が無かった。
その時アガレスの元にオムニブス内部の悪魔崇拝者から一つの報告が入った。
オムニブス精鋭部隊が、アガレスが神代魔法が使用されたあたりと目星を付けているエリアに急いで向かったというのだ。
「フ~ム、つついて炙り出してみるか?
大きな騒ぎが起きれば、何らかの動きを見せるかもしれぬ」
既に七王に対し報告していたアガレスは何らかの成果を出す必要に迫られていた。
アガレスはアジア地区の悪魔崇拝者と顕現している下級悪魔に対し、オムニブス精鋭部隊への尾行と適切なタイミングでの襲撃を命じた。
悪魔の子の企みを打ち砕くべく、闘志を燃え上がらせ、空港の到着ロビーで信者の警察幹部と現地駐在員の出迎えを受けた精鋭チーム。
彼らはまったく気付かなかった。
同じ空港の上の階の出発ロビーで南雲一家がロンドンへ出発しようとしている事を。
政財界に多大な影響力を持つ秘密結社ヒュドラは、自分で直接恵里を招待するような真似はしない。
当然である、誰が「コンニチワ、秘密結社ヒュドラデス。
エリサン、ロンドンヘイラッシャイマセー」などと言われて行くというのだ。
まずスコットランドヤードを動かし、日本の警察庁にテロ対策についての交流を持ち掛け、その一環として噂の霊媒少女を加えて欲しいと申し込んだ。
無論小学生である事を考慮し、家族ぐるみでの招待という形で。
元々英国では上流階級の間でオカルト、特に霊媒が昔から市民権を得ており、日本と異なり霊媒が名士としてパーティーに参加するのも珍しく無い。
有名な話なので、日本側もそうした事情を知っており、英国側に貸しが作れ、なおかつ安心できるタダの海外旅行を恵里にプレゼントして慰労出来ると考え、受諾した。
警察側は恵里の巨大な貢献に対し、表立って予算が計上出来ないため、充分に報いていない事を気にしていたのだ。
財務省に対して降霊術代などという細目の予算請求など出せないので仕方ないのだが、金額が不満とへそを曲げられたら、困った事になるからである。
ヒュドラの方はまず恵里が本物かどうか確認する事と、どんな考え方の人物か見定め、ついでに弱点になる家族を確認して、今後に繋げる積もりである。
いくら様々な犯罪行為を行ってきたヒュドラと云えど、警察交流会で来た賓客を誘拐して、スコットランドヤードの面子を滅茶滅茶にする積もりはない。
後で日本で誘拐すればいいのだから。
なお、信者の警察幹部は精神状態を心配され、恵里に関する件から外されていたので、何も教えて貰えていなかった。
こうして南雲一家は交流会に参加する警察幹部と共にロンドン目指して出発した。
その後、日本国内の同じ県内で起きた連続テロ騒ぎを、南雲一家はテレビで見て、知り合いの安否を大いに心配する事になる。
三大怪獣大決戦不発。
なお無意味な戦闘で消耗して、怒り狂った二大怪獣が恵里の帰りを手ぐすねひいて待つと同時に、八つ当たり先を募集中。