それではお待たせ致しましたが、エリリン劇場第十三幕開演でございます。
今回出したアイテムのため、クロスオーバーのタグを追加しました。
ロンドン近郊、秘密結社ヒュドラ本部たるオルグレイ邸では、深夜に集結した秘密結社幹部達が昼間行われた恵里の霊媒実演について、興奮冷めやらぬ様子で議論していた。
「素晴らしい!!あれが本物の霊媒というものなのか!!」
「ウム、これ迄の貧弱な力しか無いモドキとは全然違う!!
我等の予想を遥かに上回る物、もはや本物の神秘と言って良いぐらいだ!!」
「首領!一刻も早く彼女の身柄を確保すべきです。
スコットランドヤードへの配慮など、忘れるべきです。
彼女にはそれだけの値打ちがある。
まことの神秘への道標になり得るのですぞ。
他の組織に押さえられる前に、邪魔な家族を速やかに始末して我等の手に!!」
「へえ(怒)」
「何を言うか!!彼女が能力に目覚めたのは、今の家族に迎えられた後だ。
今の家族こそ能力開発に最適の環境だったに違いない。
押さえるのは、家族丸ごとにすべきだ。
金の卵を生む鶏を殺す愚を犯すのかね」
「どちらにせよ早急に押さえるのは急務です。
我等以外に押さえにかかりそうな組織は、少なくとも三つはある。
幸いまだスコットランドヤード内部しか知らないから、今なら我等が先手を打てます」
「へえ、ボクを欲しがる所が三つもあるんだ」
「そうだ、三つも・・・だ、誰だ?!」
幹部達は狼狽え、周囲を見回した。
シャンデリアの上の場所に、天井から逆さに立っている黒衣の人影、それがテーブルの上に飛び降りる。
「自己紹介は不要かな?」
「オオッ、ニンジャ!!」
「ミス、ナグモがニンジャ!!」
「い、いや、注目する所、そこ?」
「「「「「ニンジャ、ニンジャ、ニンジャ!!」」」」」
「えっ、ニンジャって、そんなに人気有るのか?(汗)
と、ともかく、君達神秘とやらに拘っているようだけど、そんなに神秘が見たいのかい?」
「無論だよ、我等の生涯かけた悲願だ」
「へえ、そいつは良かった。
君達の夢は後五年で叶うよ、喜びたまえ。
君達の大好きな神秘のお蔭でアメリカが天使の大軍に潰されてタガが外れ、世界中戦争とテロだらけになり、幾つもの都市が核爆発で蒸発し、細菌兵器がばらまかれ、全ての者が新たなる残酷な神にひれ伏す、至福のミレニアムの始まりを自分の目で見る事が出来るだろう。
失う物が一杯ある君達は、さぞ多くの物を失うだろうけど、躍り上がって喜べばいいと思うよ」
暫くの間、誰も一言も言わなかった。
ジェファーソンが漸く口を開いた。
「君は一体、何を言っているのかね?
それは君の予知か何かかね?」
「違うよ、五年後に異世界の神様の奴隷になったボクが、偉大なるエヒト神様の御命令で立案する羽目になった地球制圧作戦の内容だよ」
「君は未来の事なのに、過去形で言うんだね?」
「ボクが一度経験した事だからね」
「成る程、君は自分が時間旅行者だと主張するのなら、何か証拠は有るんだろうね。
タイムマシンは何処にあるんだい?」
「魂だけが今の体に上書きされたからタイムマシンは無いけど、代わりに面白い芸を見せてあげるよ。
さっき面白い事を言ってたそこのおじさん、本物の神秘を見せてあげるよ」
恵里が笑顔で灰翼を振るうと、その男は一瞬で原子に分解され、塵となって崩れ去った。
恵里は獰猛な笑みを浮かべた。
「ボクの大事な大事な家族を、始末するなんて愉快な事を言うからさ。
ああ、今人質にって、考えたろ。
ところで、ボクがどうやって君達の事を知ったか教えてあげよう。
ボクの可愛い虫達、三尸虫(中国神話で人の悪行を天帝に報告する虫)が報告してくれたのさ。
24時間君達を見張ってくれる働き者さ」
(こういっとけば、勝手に中国神話のアレと勘違いして、深読みして自重するだろ。
そんなに盗聴に時間使えるかい、ボクは忙しいんだよ)
隊形を組んだ屍虫達を回りに従え、灰翼を全開で拡げ、空中に浮かびながら、恵里は幹部達を見下ろして嗤い、威圧を全開で発動した。
「跪け、これがエヒト神に魂を改造されたボクの姿だ」
威圧で金縛りになり、跪かされた幹部達に恵里は宣告した。
「君達に人類の守護者となる栄誉を与えよう。
子々孫々語り継がれる英雄潭、その主人公にしてあげるよ?
カネも名誉も有るのに、満ち足りなかったんだろ。
だから犯罪行為に手を染めてまで、神秘を手に入れて特別なナニカに成りたかったんだろ。
喜べ、君達の望みは今叶うぞ。
ボクに従え!!」
(まったく、この厨二病患者共は、男はいくつになっても子供だね。
望み通り英雄にしてやるよ。
英雄とは、必ず悲劇で終わるものだけれどさ、本望だよね♪それ、ガンバレ♡ガンバレ♡)
威圧が消えても、幹部達は跪いていた。
悪魔大公爵アガレスはカッと目を見開いた。
「ついに見つけたぞ!!
む、なにゆえ元の地区から斯様な遠く離れた場所で反応が?!
これでは、すぐに廻せる戦力がロクに無いではないか。
いやそもそも、これ迄散々ワシを翻弄しおった程の小癪な奴が、こんなハッキリ分かる反応を見せるとは、妙ではないか?
もしやアイテムか何かを使った囮か?
元の地区から注意を逸らすためかもしれぬ。
ムウ、少数の精鋭に偵察のみを命じて、反応を見ると致すか、いや、それとも、う~む」
アガレスは自縄自縛の勘違いの思考の迷路に迷い込んでいた。
恵里はガッカリしていた。
オカルトの本場イギリスの秘密結社ならば、アーティファクトの一つ位有るだろうと思っていたのに、ロクな物がない。
(チッ、シケてやがるな。
お兄ちゃんや雫に渡せる強化アイテムでもあればと期待してたのに。
アイテム無しじゃ、二人ともトータス行く前だから、ステータス強化されて無くて弱いし、これじゃ当分実戦に出せないじゃないか。
ほんと召還されたという事自体がかなりステータス強化になってたんだよな)
「なんかどっかに無いのかい、大英博物館とかさあ」
「これまで色々調べましたが、バチカンが複数所持している事しか、わかっておりません。
ただあそこは、それを使いこなしている精鋭部隊がいる為、我等の力でも手が出せませんでした。(ホントにあるんだ、バチカン特務局)
後は、ありそうな場所を発掘中ですが、なかなか成果が上がっておりません」
「ふーん、北欧神話に聖遺物にアイルランドの妖精の輪、魔女の森、へえ、アーサー王の墓所だって、良いねえ。
この墓所をうちの観光コースの中に、押し込んでおけ。
ボクが降霊術で発掘を手伝ってやる」
幹部達は深々と一礼した。
数日後、南雲一家はイングランド南部の湖の畔に来ていた。
愁と菫は前夜から大興奮で、よく眠れなかったらしく、アクビばかりしていた。
恵里の前に発掘された当時の生活用品が次々と並べられ、遥かな過去の霊を神代魔法を使って無理矢理呼び出した。
霊達から聞き出した情報から、墓所の場所を特定する。
「う~ん、湖の中って、口を揃えて言っているんだけど、意味がわからない。
船か何かに載せて沈めたって事かな?」
「あー、恵里ちゃん、この湖が多分湖の乙女の場所だと思うから、湖の中に妖精の世界アヴァロンがあるって事じゃないのかな?」
「ああ、なるほど、妖怪の異界みたいになっているのか。
近くに寄ればボクには見えるから、ボートを出して貰えばすぐ見つかるんじゃないかな」
暫くボートで湖の上をウロウロすると、空間の裂目が見つかった。
恵里は用心しながら、腕を裂目に突き刺して抉じ開けた。
磐座の異界より大分大きな異界の入口が姿を現し、ボートでそのまま通過出来た。
用心のため、恵里とハジメだけ乗せたボートで進入する。
異界の中には一つの島があり、林檎の木が生い茂っていた。
島の中央は小高くなっており、縞瑪瑙の台座に一本の剣が刺さっている、それしか無かった。
「あれ、墓所って話なのに柩どこ?
妖精も居ないし、台座の下かな?」
「恵里ちゃん、すごい立派な剣だよ。
見て、見て」
ハジメが何か言っていたが、恵里は集中して考え込んでいた。
(台座が墓標だとしたら小さすぎるし、墓碑も無い。
おかしい、何かが変だ。
いやそもそも、あの剣がエクスカリバーだとしたら、なんで今更岩に刺さっているんだ?
王の選定は別の剣だし、選定自体終わっているよね。
という事は、新しく選定し直すため、刺してある?
あれ?アーサー王って確か過去の王にして未来の王、いつか危機の時甦るって話なのに、なんで選定する必要があるんだ?)
恵里の額から脂汗が吹き出してきた。
(まさか?!これ、剣を抜いた人間が次のアーサー王にさせられて、危機と戦わさせられるシステムか?!
だからアーサー王は不滅?!冗談じゃない!!)
「お兄ちゃん!剣から離れて!!」
丁度剣に手を掛けていたハジメは最初はキョトンした顔をしていたが、恵里の説明を聞いて理解し「うん、わかった」と頷くと、剣を引き抜いた。
「アアアアア?!ナニしてくれてんの!抜くなって、ボク言ったよね!わかったって、お兄ちゃん言ったよね!バカなの?!死ぬの?!」
発狂してわめき散らす恵里に、ハジメは暖かい笑顔で答えた。
「だって、危機が来るからこの剣が現れたんだよね。
だったら僕がヒドイ目に会っても、剣の力で恵里ちゃんや父さん母さんを守れるほうがいいもの」
恵里はユラリと身体を起こし、ハジメの方にゆっくりと俯いて近付いて行った。
「フッフッフッ、分かっちゃいない。
ちっとも分かっちゃいないんだ。
無茶するお兄ちゃんを、ボクがどんだけ心配すると思っているんだい?
ボクの命を救い、パパの件でデカイ貸し作って、普段からずっと面倒見てくれて、散々ボクに恩を与えてるのに、そのうえまだ恩を与えようってか。
フザケルナ、ボクにも少しは恩を返させろ!!」
「え、恵里ちゃん?」
「お兄ちゃんのバカー!!」
ハジメをドンと突き飛ばし、恵里はクルクルと落ちてきた剣を拾って叫んだ。
「クーリングオフゥ」
そのまま剣を振り回し、湖の中に全力で叩き込んだ。
「ヨシッ、悪の欠陥商品は滅んだ!」
「ウワアアア、恵里ちゃんこそナニしてくれてんの?!」
「いいかいお兄ちゃん、良くお聴き、エクスカリバーはね、鞘の方が本体で剣なんてオマケの飾り。
昔の偉い人にはわからなかったんだろうけど、鞘抜きのエクスカリバーなんて、肉抜きの牛丼みたいな物。
こんな欠陥商品と引き換えに、お兄ちゃんが命懸けで戦うなんて、そんな悪徳商法ボクは認めない。
さあ帰るよ、お兄ちゃん」
恵里はハジメをズリズリ引き摺りながら、ボートに乗り込み、異界を出た。
出迎えた愁と菫に手を振りながら、お土産無かったと頭を悩ましていた恵里の耳に、後ろから「ドサリッ」と音がした。
バッと振り向いた恵里の目に入ったのは、鞘に入ったエクスカリバーをボートに放り込み、水中に消える手だった。
「アアァ、この腐れ精霊、押売りはお断りだー」
「でも、恵里ちゃん今度はちゃんと鞘も付いてるから、不良品じゃないよ」
「そういう問題じゃない!」
ギャアギャア騒いでいる恵里とハジメの所に皆が何事かと集まって来て、エクスカリバーは持っていかれてしまった。
愁と菫とヒュドラの皆さんが狂喜して、自撮りしまくったのは言うまでもない。
そして翌朝、厳重に保管されていた筈のエクスカリバーがハジメの寝ているベッドに一緒に入っていて、恵里が発狂したが、ほんの些細な出来事である。
ヒュドラの皆さんが何を考えてあんな事してたかについての、筆者の考えでした。
小人閑居して不善を成す、至言だと思います。