エリリン劇場第二幕をお楽しみ下さいませ。
「あれえ?」恵里はパチリと眼を開くと、コテンと首を傾げた。
周囲をゆっくりと見回し、確認する。
分解され消えた筈の手が、消し飛んだ下半身が存在している。
もっとも身体はガリガリに痩せ細っているが。
そして何よりも、ここは神域ではなく地球の自分の家のリビングだった。
「ナニコレ、夢?」
おまけに回りの家具などがやけに大きく見える。
まるで不思議の国のアリスのようだった。
いや回りが大きいのでは無い、自分が小さいのだ。
恵里はひとつの可能性に気付くと、ゆっくりと身体を巡らし、壁に掛かっているカレンダーを見た。
そこには、恵里が9歳の時の年号が記されていた。
「くふっ」奇妙な音が喉から洩れる。
(まだだ、まだ早い、笑うな、我慢するんだ、記憶が転写されただけかもしれない。もし魂が上書きされているならアレが出来る筈、後少しだけ確認してからだ)
恵里は準使徒化された時、魂魄レベルで改造されている。
その自己メンテナンス機能の一環として自己ステータス確認能力があった。
プログラム始動を念じ、目を閉じた。
「有った、有るぞ!有ったぞ!!出来る、出来るぞ!出来た!!」恵里は歓喜に身を震わせながら灰翼を展開してみた。
だが灰翼は十秒も保たず霧散した。
(あちゃー、魂は問題無いけど、この小さな身体の脳の処理能力が低くて維持出来ないや。
あー、脳に無理させたから頭が痛いや。
レベルは高いんだけど、肉体の能力が低すぎて戦闘能力を使いこなせないや。
極端な例えだけど、ファミコンにWindowsを無理矢理インストールしてるようなもんか?
そりゃ、まともに動かないよね。
普通に体を動かすのに支障が無いのを、感謝するべきだね。
体は小学生、魂は神造人間ってか。
まっいいか、レベルは落ちてないし、魔力は少しずつだけど回復しているし。
時間はたっぷりあるんだから、体が成長すれば使いこなせるようになるよね。
きっと最期の時に、やり直したいと強く念じながら時空の大渦巻きに呑み込まれたから、魂だけこの時点のボクの体に引き寄せられたのかな?
ボクは運がいいなあ、魂が破損せず過去の自分に記憶を完全に保持したまま上書きされるなんて。
おまけに召還されるまでタップリ時間があるから、色々と準備する余裕まであるときたもんだ。
まっ、細かい事はどうでもいいよね♪
この力さえあれば光輝君も手に入るし、エヒトがあんなスカタンだと分かっていれば、やり方次第で倒せないことはないよね。
フッ、勝ったな、やろうと思えば世界征服だって出来るんじゃないかな?
もう何も恐くない。
フフッ、薔薇色の未来だあ!!)
ニタリ、ニタリ、ニタリと満面の笑みが止まらない。
だが、薔薇色の未来に酔いしれるあまり、舞い上がり過ぎた恵里は気付く事が出来なかった。
自分の笑顔がかって神域で見たエヒトの笑顔に酷似していたことを。
そして後ろのドアの所から、母親が自分を化物を見る目で見ていた事を。