恵里は今日も壁に頭を打ち付ける(完結)   作:コミッサール

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エリリン劇場第二十一幕始まりま~す。
皆様のご愛顧のお蔭を持ちまして、日計ランキング十位を一時獲得いたしました。
翌日の朝には日の光浴びたキノコみたいに跡形も無く消えておりました。
夢かなと思っておりましたが、ランキングを見て、読んでみたという読者の方がおられましたので現実だったようです。
改めまして御礼申し上げます。
後感想を書いていただいた折房様の感想返しで思い付いたネタを本編に書き込みましたので、折房様には改めて御礼申し上げます。
それではお楽しみ下さいませ。


第二十一話 ピッカピッカの一年生ッ

無事に中学校に進学した恵里は、真新しい制服に身を包み、ハジメと手を繋いで登校していた。

ハジメはすっかり大きくなり、回りの同級生達と比べて頭一つ分抜き出ていた。

精神的にも成長したのか、恵里と人前でくっつくのを恥ずかしがるようになった。

「ね、ねえ恵里ちゃん、中学生になったんだし、流石に手を繋ぐのはもう止めにしない?」

「お兄ちゃん忠告するけど、手を離すと大変な事になるよ。

お兄ちゃんを狙っているのは、ファブリーズだけじゃないからね。

ボクが手を離せば、狩りの始まりの合図になるよ。

もちろん獲物はお兄ちゃんさ。

お兄ちゃんは一度、自分がどれだけモテているか認識した方がいいよ」

「ナニソレ、コワイ」

「まあ、ボクは手を離すつもりは無いけどね。

最初は恥ずかしかったけど、今は手を繋いでいると、とても幸せな気分になれるから、病み付きになるね。

おや、お兄ちゃん顔が赤いよ、どうしたんだい?」

ハジメは恵里の手をギュッと握り、そっぽを向いて、返事をしなかった。

桜の花びらが舞い散る中、二人はゆっくりと歩いていった。

 

授業が終わり、雫と浩介を加えて、八重樫道場に入り、師範に挨拶した。

今日は雫と浩介、クラウディアの強化プランの説明が行われる。

地球にいる内は、強力なアイテムも、レベルアップも難しい。

悪魔側に頭を下げれば、アイテムは手に入るかもしれないが、代価として契約を悪魔有利にされるのは危険だった。

ならば技術を身に付ける事しか無い。

それに丁度いい魔法がある。

前回恵里がメルド団長を自分に憑依させ、剣技を使えるようにした縛魂である。

地球の歴史に名を残す人物達の魂を降霊術で呼び出し、憑依させ、技術を覚えさせるのだ。

前回は憑依させている間しか使えなかったが、恵里の研鑽の甲斐あって、憑依を終えた後も使えるようになっている。

日本政府から借り受けた歴史的遺物を触媒に、魂魄魔法で召喚する。

 

まずは雫に巴御前を魂降ろしする。

縛魂で縛る事はせず、巴御前の魂を木曽義仲の魂と結び付け、輪廻の輪に投げ入れて、いつかこの世で再開させる事を代価として、雫を鍛えあげる事を依頼した。

技術をインストールするだけでは、心構えまでは写せないし、その技術をきちんと使いこなせるかどうかは別問題である。

「人一人斬って初めて本当の初段」という言葉があるが、技術だけではだめなのだ。

そこまでやらせるからには、巴御前に自分の意思でしてもらわないと効率が悪い。

更に巴御前と木曽義仲が転生出来ても、地球がエヒトの侵略で滅茶滅茶にされる危険を伝え、それを防ぐために雫を鍛える必要がある事を理解させた。

「確かに承った、必ずや我が技の全て、使いこなせるようにして見せようぞ」

 

巴御前がまず雫の状態を確認すると、スピードに比べて、パワー不足が弱点だった。

そしてそれを補うため、木曽式鍛練で筋力を鍛え上げる。

歴史書に伝わる巴御前の剛力の逸話に鎧武者の首を片腕で抱え込み、へし折ってもぎ取ったとある。

その剛力を育んだ木曽式ブートキャンプに雫は突っ込まれ、修了する頃にはそのスピードに匹敵する筋力を身に付けていた。

しかし急激に筋力が上昇したため、最初の内うまく慣れて使いこなせず、コップを割るなど物を壊してしまったりする事が、多々あった。

おまけに生来のお人好しから、重い物を運べず困っていた生徒を助けようと、ヒョイヒョイ運んでみせたため、ゴリラ女のアダ名を付けられ、苛めに発展しかけた。

そこへカンカンに怒ったハジメが、すっ飛んでいき、加担した男子達をシメあげた。

噂を流していた女子には、恵里が軽く威圧を掛けてビビらせ、陰で流そうとした者はなぜか四六時中気持ち悪い虫の群れに纏わり付かれ、ノイローゼになって転校した。

校内に南雲と八重樫に手を出してはいけないとの暗黙の了解が広まり、生徒達から畏怖される事になる。

 

「ハジメ君、恵里ちゃん、やり過ぎよ。

でも、有り難う、助かったわ」

「だって雫ちゃんは家族同然、身内だからね」

「そうだね、あのテロリストを倒してくれた事は心から感謝し、忘れない。

それに比べれば、大したことじゃない」

頬を染め、感謝の言葉を紡ぐ雫を見ながら恵里は(やっぱりキノコ生えてきたよ)と心の中で溜め息を吐いた)

 

次に浩介に、戦国時代の幻術遣いとして名高い、果心居士を召喚する。

「小娘、事情はわかったが、なぜわしがお前達の手助けなぞせねばならん?

死んでおるわしには、エヒトととやらが暴れようが関係ないわ。

高みの見物でも、させてもらうわい」

「うん、そう言うと思ったよ。

果心居士さんは凄い幻術を遣えたけど、誰にも求められず、嫌われてしまった。

興福寺からは追放され、信長は幻術の使用を禁止し、秀吉は殺そうとした。

だから人が嫌いになって、転生もしたくない、気持ちはわかるよ。

でもね、時代は変わったんだよ」

恵里はテレビのリモコンを、ポチっと押した。

映るのはマジシャン大会の録画。

マジックの業の限りを尽くし、果心居士にも上流階級と明らかにわかる観客達から、拍手喝采を受けるマジシャン達。

果心居士は暫し無言で肩を震わせていたが、絶叫した。

「な、なんじゃ、こりゃあ?!わしの苦労はなんだったんじゃ!」

恵里は果心居士の後ろから、耳元で囁いた。

「ねえ、果心居士さんは全然報われなかったのに、あんな若造達が持て囃されているのって、赦せるかい?」

「赦せるもんかァ!なんであんな小手先の技しか遣えない、本当の幻術も出来ない連中がデカイ顔しとるんじゃあ?!」

「じゃあ、取引しようよ、浩介君に幻術を教えてくれたら、転生させてあげるよ。

そうすれば、あのマジシャン達が得ている称賛もお金も、み~んな果心居士さんの物になるんじゃないかなあ?」

「よし、わかった!誓紙でも何でも持ってこい!

すぐに書いてやるわ!

あ、いや待てい、但し幻術の基礎までじゃぞ。

でないと、この小僧がわしのライバルになられてはかなわんからの。

なに、力の使い方の基礎は、みっちり教えてやるわ。

後、どう使うかは、小僧の発想次第ぞ」

「チッ、仕方ない、契約成立だねえ、話が早くて助かるよ」

後ろでクラウディアと悪魔お姉さんがヒソヒソと囁いていた。

「今、チッて言いましたよね」

「ホント、悪魔より悪魔らしいですわ」

果心居士の幻術とは、魔法の一種だった。

憑依させる事で浩介は体内魔力の感じ方、コントロールの仕方、といった魔法の基礎を学び、身体強化や幻術といた初歩魔法を使えるようになって、ステルスに更に磨きをかける事になる。

 

「さあて、クラウディアさんだけど、憑依強化はしない。

クラウディアさんは元々強くて、自分の戦闘スタイルが確立しているうえに、女性でクラウディアさんと相性がいい、強化に使える歴史上の人物なんて、神代の人物ぐらいしか思いつかなかった。

神代の人物の召喚なんて、流石に無理だ。

代わりに、クラウディアさんが望むなら、肉体の大幅強化なら可能だよ。

眠っている悪魔の遺伝子を発現させて、肉体を悪魔化する。

必要に応じて、人間体にも戻れるよ、どうする?」

「リーゼロッテお姉さんと同じ身体に、成れるんですか?

是非お願いします」

「もう、この子ったら、ホント可愛い事言うじゃないの。

わたくしがよ~く、悪魔の遺伝子を発現させてあげますからね」

こうして変身すると、翼と尻尾と角が現れる、変身忍者デビルガール・クラウディアが爆誕した。

「こ、これで、お姉さんとお揃いですね」

「身体の使い方も、わたくしがよ~く手取り足取り教えてあげますわ」

悪魔お姉さんとクラウディアは、浩介に悪魔遺伝子が無い事にいたくガッカリし、あくまで善意と好意から、浩介を一緒に飛べるようにしようと「色々な手段」を試みる事になる。

 

ハジメは竜化が少しずつ進行し、肉体能力がジワジワ上がってきている。

ハジメの身体を風呂上がりに恵里がチェックするのが日課となっていた。

パンツ一丁で恵里に視られるのが恥ずかしくて、ハジメはそっぽを向いていた。

「ねえ恵里ちゃん、点検は父さんじゃダメなの?」

「ダメに決まっているだろう。

お父さんじゃ魔法の知識が無いから、点検にならないんだから。

恨むなら、ボクの言う事を聞かないで、剣を抜いた自分を恨むんだね。

ん、やっぱり肩甲骨の辺りが、少しずつ盛り上がってきているね。

翼でも生えるのかな。

早く憑依したアーサーさんに、魔力コントロール出来るように教えて貰わないと、学校行けなくなるよ。

竜人体型と人間体型使い分けられるようにならないと家出られなくなるからね」

 

ハジメは悄々になって、ベッドに転がった。

ハジメの脇に置かれたエクスカリバーを恵里は睨むと、床に放り出した。

「この腐れ剣のお蔭で、要らん苦労だ」

床にぶつかったエクスカリバーが跳ね上がり、恵里の顔面にビタンとぶつかり、ベッドの上に戻った。

「え、恵里ちゃん、大丈夫?」

恵里は肩をワナワナと震わせ、真っ赤な顔でエクスカリバーをどかして、ハジメの隣に転がった。

「お兄ちゃんの隣はボクのだ!」

次の瞬間、放り出したエクスカリバーがハジメと恵里の間に入り込んで押しこくり、恵里をベッドから転げ落とした。

「むっ、コイツ!」

恵里がハジメに引っ付き虫のように張り付いているエクスカリバーを引っ剥がそうとすると、「むっ、コイツ!」と言いたげに剣の宝玉か明滅する。

ドッタンバッタンとベッドの上で暴れていると、遂に南雲家の神が降臨された。

「あなた達、何時だと思っているの?!

いい加減にしなさい!!」

「で、でもコイツが!」

「デモもストもありません!

恵里ちゃん、中学一年生なのにお兄ちゃんのベッドに入るなんて認めません!

そこの剣も恵里ちゃんと仲良く出来ないのなら、燃えないゴミの日に出すわよ!

米軍さんからも実験のリクエストが来てるんですからね!」

「は、はい、わかりました、ゴメンナサイ」

剣も弱々しく宝玉を明滅させ、恭順の意を示した。

南雲家の絶対神、菫に逆らえる者はいない。

母は強し。

 

 

 




菫「えっ?なんで剣に意志があるってわかったか?
そんなの、有るのが当たり前じゃないの?
刀剣乱舞とか、違うの?」
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