地球での最終決戦第二回開始。
(ヤラカシタ~!!)
とても白い空気だった。
((((オマエは一体何をいっているんだ?))))
隣の秋畑梓も、跪いているヒデ達も心は同じ、((((訳がわからないよ?))))
恵里は自分のドジぶりに頭を抱えた。
大体の問題が片付き、後はたかがヒモ男と安心していた所に、更に弱い連中のおかわりで、恵里は気が弛みまくっていたのだ。
其処にいきなり、こんなヤバい物を見せられ、キレて口を滑らせてしまったのだ。
だが吐いた唾は飲み込めない。
ならば開き直れば良かろうなのだっ。
たとえ、オタク女とか厨二とか、言われようが・・・そういえばボクは中二だった。
クラクラとしてきたので、そばの注意書きの看板に頭を打ち付け、気を鎮める。
「公園の物をこわしてはいけません」
と書いてある所がベコリと凹んだが、気にしない事にした。
全員に向き直ったら、とても残念な人を見るような目で、恵里を見ていた。
一瞬、羞恥心に耐え兼ねて、逃げ出したくなったが、咳払いをして誤魔化す。
「コホン、あー、お、お前ら、五体満足でいたかったら、このクスリどこで手に入れたか、とっとと喋れ」
全開で威圧を掛けているが、真っ赤な顔でプルプルしながら言っているので、効果激減である。
「えっ、で、でも、喋ったら、兄貴に殺されちまう」
「安心しろ、お前ら、アタイは秋畑組の組長の娘だ。
お前らみんな保護してやるから、安心して喋れ。
口だけじゃ信じられないだろうから、今組から何人か呼ぶから、大船に乗った気でいな」
秋畑梓にヒデ達との話し合いをまかせ、恵里は彼等に聞こえないように距離をおいて、ハジメに電話をかけた。
「お兄ちゃん、マズイ事になってる。
魔法で製造されたヤバい麻薬が出回っている。
こんな物を大量に作って、犯罪組織に流すなんて真似が出来るのは、地獄しかないと思う。
地獄が地球に麻薬をバラ撒いているなんて話が知れ渡ったら、条約の話が壊れかねない。
もうボク達だけで、どうにか出来る話じゃない。
みんなを集めて、話をしよう」
「わかった、八重樫家で集まろう。
浩介を呼んで、父さん、母さんはネットで参加してもらう。
恵里ちゃんも八重樫家に向かってくれ」
通話を終えた所へ秋畑梓がやって来た。
「おう、吐いたけど、何言ったかは悪いけど、アンタには教えられない。
後の始末はウチの組に任せときな。
これ以上はもう、カタギのアンタが関わる事じゃねえ。
いいな、危ねえから関わるなよ」
ドラッグも寄越せと言われたが、警察に届けると言い張って拒んだ。
恵里は表向き手を引く事を了承したが、教えてくれないなら、手を打つだけである。
さっそく、秋畑梓に屍虫をくっ付けて盗聴し、組長への報告から内容を把握した。
市内の廃ビルの拠点に、ドラッグは何処からか運ばれ来て、ヒデ達が売り捌く。
ヒデ達は、ドラッグがどこから来てるか、何も教えられておらず、廃ビルにはヒデ達に指示を出している幹部と取り巻きがいる
ヤクザ側はしばらく監視し、どこから来てるか調べるつもりのようだ。
なお梓は組長から危ねえ事に首突っ込むなと拳固を頭に喰らって、膨れていた。
秋畑組はしばらく監視を続け、情報を吸い取る事にした。
八重樫家に集合した面々に、恵里は状況を説明した。
「麻薬を魔法で少量作成する事だけなら、どこの勢力でも可能だ。
でもこんなに大量に作成するには、大量の魔力が必要、魔力が枯渇している地球上では無理だ。
そうなると、地獄しか思い付かない」
師範として、公権力との関わりが深い八重樫鷲三は、事態の危険性を直ぐ理解した。
「悪魔との条約は、今はイケイケの空気が出来ていて、表立って反対する奴は少ない。
だが只でさえ異種族、それも悪魔と軍事同盟を結ぶ事に対する反発はとても根強い。
そこに悪魔が日本国内で麻薬をバラ撒いているなんて話が広まったら、やっぱり悪魔は悪魔だったと、条約が白紙に戻りかねない。
そうなれば、エヒト相手にバラバラに、足を引っ張りあいながら当たる事になり、敗北もあり得る」
「地獄からかどうかキチンと確認するのが先よ。
大公爵閣下、娘の無礼を御詫び申し上げますわ」
虚ろな目をした悪魔お姉さんの口から、威厳に満ちた老人の声が響いた。
「詫びには及ばぬ、この薬の魔力の特徴は確かに地獄の物に相違ない。
だがこれは七王陛下の意思にあらず。
そちらに悪魔を嫌う余り、条約の破棄を目論む者がいるように、地獄も割れておる。
地球も征服してしまえばよいと考える者達がな」
「こんな魔力の涸れ果てた、地球なんかが欲しいんですの?」
「一つ目には、現状がどうであれ、かって我等の世界を滅ぼした敵国を征服するという事は、偉業には違いなかろう。
二つ目には、精神体のままトータスへ行く事でステータスを上げてから、トータスで受肉するより、地球で受肉してから、トータスに行き、ステータスを上げるほうが、ステータスの向上量が倍以上になる点が大きいのじゃな」
「あら、魔力の碌に無い地球で、そんなに大勢受肉出来るんですの?」
「何を言っておる。
出来ぬからこそ、良いのではないか」
「「「「????」」」」
「それはこういう事かな。
征服に参加した奴等だけが、地球の残る魔力を使いきって受肉し、トータスで受肉するしかない残りの悪魔達に、圧倒的なステータスの差を着けて、無敵の支配階層として永遠に君臨する。
そういう事を目論んでいると」
「小娘、聡いの。
付け加えれば、我等悪魔にとって重要なのは、エヒトとやらが地球にチョッカイを出す日時と場所のみ。
それさえ手に入れば、人間などどうでも良い。
彼奴らにしてみれば、むしろ人間を始末して魔力に変換したほうが、少しは支配階層を増やせて、支持を集められるじゃろう。
強力な悪魔ほど受肉に膨大な魔力が必要じゃからの。
先程の魔法薬はその実験用の物じゃの」
「ちょっと待ちなさい。
日時と場所は、恵里ちゃんしか知らないし、交渉開始に当たって、恵里ちゃんの身柄の安全の保証は、七王陛下の名前で契約が為された筈よ」
「無論、七王陛下は契約を守られる。
しかし、七王陛下に反逆した者達は契約に縛られておらぬ。
そやつらが小娘に何をしようと勝手じゃ」
「なるほど、そして悪魔側はそいつらを止める気は無いと。
オマケに、なぜかそいつらにボクの情報が渡っていると。
大公爵閣下もお仲間ですか?」
「馬鹿を申せ。
ワシは爵位を頂いた七王陛下を裏切るような真似はせぬし、あんな若造ごときの下に着く気もないわ。
逆賊共が目の前に居れば、止めるとも。
ただ、お前のような小娘が死のうが生きようが、ワシの忠義には関係ないだけじゃ。
まあ、せいぜい足掻くがよい。
まあ、小娘が死んだとて、小娘お得意の降霊術を、我等が使えば日時と場所はすぐわかるからの。
命が惜しくば小娘、ワシに仕えるならば保護下に置き、その半端な改造された魂を悪魔に作り替え、下僕位に使ってやってもよいぞ」
回りが憤激して、机を叩き、立ち上がるなか、恵里だけが座ったまま嗤っていた。
「いやあ、この生死ギリギリの感覚、久し振りだねえ。
大公爵閣下の有難いお申し出への返事は一言「馬鹿め!!」だよ。
もう宮仕えはエヒトで懲りたんでね」
「吠えたな、小娘。
そうでなければ、面白くない。
貴様が何処まで足掻けるか、健闘を期待しておるぞ」
大公爵アガレスは消え、悪魔お姉さんはげっそりとした顔で呟いた。
「なんでわたくしが二大怪獣がやり合う、ど真ん中に毎回居なきゃいけないんですの?
電話機代わりにするのは、勘弁して欲しいですわ」
「さあて、足掻くのがどっちか確かめてみようじゃないか。
みんな、よろしく頼むよ」
翌日、恵里は秋畑梓を屋上に呼び出し、ドアの前に座り、太陽のような笑顔で、灰翼を拡げて、単刀直入に言った。
「頭が痛くなる話と、胃が痛くなる話と、血反吐を吐きたくなる話があるんだが、どれから聞きたいかな?」
梓は引きつった顔で言った。
「ここから、飛び降りるってのは有りかな?」
「そしたら、一緒に飛び降りながら、話をしよう。
何、人間は簡単には死なないよ」
梓は溜め息を吐いて、座り込んだ。
「ああ、アタイは何でコイツに関わっちまったんだ?」
「悪いね、ボクは友達が少ないもんだから、頼れる人は手伝って欲しいんだ。
ボクに出来る範囲で埋め合わせはするよ。
それに君んちにも関係有る話だからね」
「わかった、逃げも隠れもしないから、とっと言えよ」
「済まない、心から感謝する」
南雲恵里は決戦準備を開始した。
閑話
この二回目の世界にも、雫を慕うソウルシスターズは変わらず存在している。
たが雫がハジメと仲の良い様子に、嫉妬し発狂していた。
ソウルシスターズ達はただちにハジメを探り、弱味を探そうとしたのだが、恵里はハジメに色目を使いに接近したと勘違いして、徹底的に迎撃し鉄壁の防御で誰一人近付けなかった。
ソウルシスターズ達は流石に不審に思った。
妹がそこまで必死に兄の事を守ろうとするのは異常だ。
自分も兄がいる、あるソウルシスターズは、兄ごときを守る事自体がありえないと断言した。
何か知られてはマズイ秘密があるのではないのか?
なまじ近付く事が出来ず、情報が入らないため、彼女達の妄想は膨れ上がった。
なんと光輝が時々ハジメの方を熱烈に見ているではないか!(睨んでいる)
そしてハジメは光輝の視線に気付くと、目をそらし、恥ずかしそうに下を向くではないか!(ウンザリして溜め息を吐いた)
膨れ上がった妄想は爆発した。
爆発は誘爆を引き起こし、光輝✕ハジメから、檜山や遠藤君を加え、くんずほぐれずの世界を構築した。
なぜか、妹が兄を守る事を否定したソウルシスターズは妄想を止めようとしたが、蟷螂の斧であった。
この新世界は無慈悲なる大魔王エリリンに滅ぼされるまで栄華を極めていたという。