恵里は今日も壁に頭を打ち付ける(完結)   作:コミッサール

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御待たせ致しました。
エリリン劇場第二十四幕開演の時間です。
ごゆるりとお楽しみくださいませ。
地球での最終決戦第三回目ですが、筆者の癖で今回も戦闘は始まらず、派手なバトルにはなりません。
タイトル通り、戦闘より、準備、兵站の方がメインになります。



第二十四話 戦いの勝敗は八割方戦う前に決まっている

秋畑組組長は頭を抱えていた。

頭が痛く、胃が痛く、血反吐を吐きそうな気分の悪さが一度に押し寄せて来る。

全ては娘が連れてきた、トンデモない化物娘のせいである。

今も灰翼を拡げ、宙に浮いていた。

 

「まあ、事情はこれでわかって貰えたと思うけど、警察や自衛隊は使えない。

悪魔との条約を壊さないためには、政府に悪魔が麻薬バラ撒いているなんて、知られる訳にいかないんだよ。

何もかも闇に葬らなきゃならないんだ。

という訳で君達秋畑組の皆さんに頑張って貰いたいという訳さ。

後一日二日の間、八重樫道場の人達と一緒にこの町を守るため、戦って欲しいわけ。

もちろん報酬は億の単位で用意出来るよ」

「嬢ちゃん、色々突っ込みたい事はあるが、この強制徴募、まず儂らに拒否権はあるんかいの?」

「やだなあ、強制なんてしてないよ。

ただ、やらなきゃ世界が滅んで、若い連中も娘さんも、家畜扱いされるお先真っ暗な未来になるだけの事だよ」

「で、人間相手ならともかく、悪魔とやら相手に儂らが何の役に立つんじゃ?」

「安心して、組員のみんなには、ボクが強力な守護霊を付けてあげるから、めちゃくちゃ強くなれるよ♪」

「ウン、余計不安になってきたし、嬢ちゃんが悪魔に見えてきたが、退路が全部塞がれた事だけは、よくわかった」

「じゃ、広間に全員集めてね。

チャッチャッと守護霊付けてあげるから」

 

雫や浩介の強化用に、以前国から片っ端から借り出した歴史遺物を、まだ返していなかったのを流用する。

三十人程の組員に新撰組隊士の霊を召喚して憑依させた。

隊士達には異国の妖怪が日本に攻めて来るので、打ち払うと説明するだけで済んだ。

説明前から、隊士達のやる気が天元突破していたからである。

これは、組員達全員が新撰組にカッコいいイメージしか持っていなかったのが、原因であった。

隊士達はかつて新撰組にいたが為に、ある者は処刑され、生き残った者もお尋ね者扱いで、就職のため偽名で暮らすなど肩身の狭い思いをして生き、死んでいった。

ところがどうだ、今の世は全ての者が新撰組を讃え、憧れているではないか!

自分達のした事は間違っていなかった!!

その新撰組が再び黄泉がえり、大義のため一緒に戦えるのだ。

これで士気が上がらない筈が無い。

組長には近藤勇、若頭に土方歳三を憑依させ、これで組織として高度な連携をして運用出来る部隊が誕生した。

魔法で憑依させたため、武器に魔力が少量だが上乗せ出来るようになっている。

下級悪魔なら充分に、中級悪魔でも連携して懸かれば倒せるだろう。

武器は八重樫道場からと、歴史遺物の中から使えるのを見繕った。

 

頼りになる市街戦特化歩兵部隊が手に入った所で、八重樫道場で作戦会議を開く。

悪魔側の目的は恵里を捕獲又は殺害する事で、エヒトが召喚を仕掛ける日時と場所の情報を手に入れ、講和条約をぶち壊し、地球征服に繋げる事だろう。

ヒデ達からの情報をオカルト視点から再評価した結果、パワーストーンの粉末を入手して送っていた事が判明した。

召喚魔法陣の作成に使われる物で、これと生命力を魔力に変換する魔法薬を組み合わせれば、悪魔召喚が可能になる。

何度もパワーストーンの粉末が、送られている事を考えると、既に召喚は何度かテストを兼ねて、行われていると考えるべきだった。

そして最後に送られた粉末の量は、これまでの五倍にも及ぶ。

下級悪魔を大量にか、あるいは大物を召喚しようとしているのだろう。

唯一わかるのは、彼等に時間を与えるとこちらが不利になる事だけだ。

ならばこれ以上悪魔が召喚される前に、こちらから攻撃を仕掛けるしかない。

だが攻撃には慎重な準備が必要だ。

下手な攻撃を仕掛けて、騒ぎになれば警察が出てきて、こちらが逮捕されかねないからだ。

 

秋畑組の尾行調査で粉末を送った先が確認出来ていたので、その場所を偵察してみた。

まず、ドローンを飛ばしてみて、空中から確認する。

積み上げられた廃車の山に囲まれた中の広場に、巨大魔法陣の作成らしき事をしている人間達が見えた。

廃車の山の回りには、置かれた中古車の合間合間に、銃で武装した犯罪者達が警戒している。

中古車の土塁の真ん中の、廃車の城壁に守られた城のようだった。

更にドローンから発進した屍虫が、城のあちこちに降り立ち、盗聴を開始する。

途中、ヒモ男の顔を見た恵里が、口からお茶を吹くトラブルも有ったが、色々と成果も有った。

何故か彼等がクラウディアを捜しているのだ。

「悪魔崇拝者系の組織かあ。

まあ人間社会に絶望すれば、犯罪へのハードルは低くなるよね。

ソイツらがバチカンの依頼で動く筈無いから、悪魔の方がクラウディアさんを捜しているって事だよね。

クラウディアさん何か心当たりは・・・有りそうだね、その顔、事情を聞かせてくれるかな?

・・・ああ、アンノウンねえ、前にクラウディアさんとお話した時、呼び出した魂がそんな事言ってたね。

炎系統の大物悪魔でクラウディアさんにストーカーしてると。

似たようなヒモ男にストーカーされた身としては、同情を禁じ得ないね。

で、ソイツと関わる破目になった切っ掛けを細かく聞かせて欲しいな。

へえ、へえ、へえ、それ悪魔にとって致命的な契約違反じゃ?

いや召喚主と契約主が違うから、ペナルティ逃げられたのか。

だったら、面白い事が出来るかも」

「組長さん、付き合いのある弁護士いるんでしょ。

ちゃんと相談料払うから、すぐ呼んできてくれないかな。

忙しいって言うなら、倍払ってもいいよ」

「嬢ちゃん、そんなに大盤振る舞いして、金大丈夫かいな?」

「ああ、お父さんがバチカンからたっぷりとふんだくった慰謝料があるし、ヒュドラからも巻き上げているし、全然問題ないね。

後、組長さん、これから言う物を手段を選ばず、大至急調達して貰えるかな?

まあ、とは言っても、出来ればカタギの人相手の場合は、脅しまでに抑えてくれると有難い。

もちろん金は用意するよ」

組長は購入リストをチェックすると、すぐに手分けして、部下達を走らせた。

「次にリーゼロッテお姉さん、悪魔が契約結ぶ時に必要な書式と物を教えて貰えるかな」

「ま~た、碌でもない事を考えている顔ですわね。

そんな物、すぐに用意出来ますわ」

数時間後、弁護士と悪魔お姉さん、クラウディアを交えての法律相談と書類作成を終えた恵里は、魔法陣の作成がほぼ完成してしまった様子が写っている、ドローンからの映像を眺めながら、うそ寒い笑みを浮かべた。

 

「さて、作戦を説明するけど、敵の配置は廃車の山の外側に半グレ連中、内側に悪魔崇拝者になっていると思う。

悪魔崇拝者は召喚に集中したいだろうし、半グレ連中の事をやられて悲鳴をあげて敵襲を知らせる生きた警報器位にしか思ってないだろうから。

あの魔法陣からクラウディアさんのストーカーやってるアンノウンとかいう悪魔が出て来るのは、確実だ。

アンノウン(ナマエがナイヨ)なんて可哀想だよね。

だから、ボクが名無しの権兵衛から名前を取って、権兵衛と名付けてあげる事にしたよ。

((((うわあ、ひっど!!))))

以後、みんなも権兵衛と呼んであげてね。

これでアンノもとい権兵衛のヘイトはボクに確実に向くから、お兄ちゃんとボクで時間を稼ぐ。

その間にクラウディアさんを浩介君とリーゼロッテお姉さんで護衛して権兵衛の所へ送り届けて欲しい」

「あの、アンノウンに権兵衛なんて言っても意味わかるんですの?」

「お姉さん大丈夫、ちゃんと意味説明してあげるから。

それが親切ってものだよね。

ついでに時間稼ぎにもなるし」

 

「嬢ちゃん、回りにいる銃持った半グレや悪魔崇拝者、それに警察対策はどうするんや?」

恵里は悪徳セールスマンのような笑顔で、楽しそうに説明した。

「せっかく、世界の命運を賭けた大決戦のクライマックスの演出を任されたんだし、派手にいこうよ。

まず、周囲に組の方で映画撮影所から借りてきた、「映画撮影中」の看板を立てて、ド派手な現実とは思えないような魔法を使って特撮と言い張れば、警察は短時間なら誤魔化せる。

もちろん周囲に被害を出さない事が条件だけどね。

いやあ、芸能関係は昔からヤクザとの付き合いが必ずあるから、うまく借りられて助かるよ。

次に半グレ対策は遠藤君と果心居士さんの幻術で同士討ちさせてあげれば良いんじゃないかな?

まあ、やり方は天下の果心居士さんに任せるよ。

悪魔崇拝者は幻術効かないかも知れないから、組の人に買い出ししてもらった、中国製の過剰出力のレーザーポインターの集中砲火で、目潰しを新撰組にお願いします。

これって、網膜焼いて失明させちゃうくらい出力があるんだよね。

権兵衛対策の秘密兵器も別に用意出来たし、それ以外に厄介なのが出て来たら、ボク、お兄ちゃん、雫ちゃん、お姉さんで対応かな。

後は高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応しよう」

 

「嬢ちゃん、作戦はわかったが、いくらなんでも名無しの権兵衛はひどいじゃろ。

せめて久兵衛ぐらいにしたら」

「「「「ひっど!!」」」」

「ボクよりひどいのがイター!!」

「え、ワシがこの悪魔よりひどいってナンデ?」

 

騒ぎが終わり、出撃直前の一時、恵里はハジメに語りかけた。

「お兄ちゃん、御願いがあるんだけど、ボクとお兄ちゃんの魂を、死んでも離れないように結び付けてもいいかな?

そうすれば、死んだ後、輪廻の輪の中でいつかまた出逢えるんだ。

い、嫌かな?」

「恵里ちゃん、らしくないよ、どうしたの?」

「怖くて、怖くてたまらないからだよ!!

相手は大公爵より上の、王級だよ!

一撃だって防げるかどうかの相手に、ボクが囮を務めなきゃならないんだよ!

でも、それしか勝つ方法が無いから、やるしかないんだ。

悪魔は魂を食べる事が出来るから、繋がった状態で万一ボクが喰われたら、お兄ちゃんの魂まで喰われちゃう。

でも、それ以外で死んだら、永遠の別れになるかも。」

恵里の頭に、ハジメの拳固がめり込んだ。

「恵里ちゃんのバカ、素直に一緒に死んでくれってどうして言えないの?

今更だよ、生きるも死ぬも一緒だし、そもそも死なせるつもりもないからね、わかった?」

恵里は泣き笑いのような顔で頷いた。

「う、うん、わかった。

じゃあ魂が絶対に離れないように、普通の赤い糸じゃなくて、赤いぶっといワイヤーロープ束ねたので、結んでおくね」

「えっ、見える人には、僕がそれズリズリ引き摺って歩いているのが、見えるワケ?」

「細かい事気にしない♪さあ、けりを付けに行こう♪

もう、何が有っても一緒だから♪♡」




恵里は内心滅茶滅茶焦っています。
完全に予定外の事態に情報漏れも構わず、封印していた物を後先考えず総動員しました。
原作の恵里は最後まで心を許せる人間がいませんでした。
この二次ではハジメと出逢えたため、愚痴や弱音を吐く事が出来るようになっています。
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