エリリン劇場第二十五幕開演致します。
地球での最終決戦第四回目始まります。
なお、前回組長から提案されたアンノウンの名前をキュウベエにする提案はエリリン達に否決され、権兵衛が採用されました。
以前特撮の手裏剣戦隊ニンニンジャーで敵の幹部が味方になった怪しい狐面に対し
「お主名前はなんと言ったか?確かキュウベエと言ったかのう?」
「キュウエモンに御座います(怒)」
という遣り取りがありましたので、戦隊物の世界でもキュウベエは最大の侮辱のようです。
中古車置き場は、大きな山の裾野にある、畑や雑木林に囲まれた平地にあった。
恵里の住む町に合併されるまでは、村だった所である。
人口密度も低く、民家も幹線道路沿いには並んでいるが、それ以外は点々としかない。
コッソリと何かをしたい者には、絶好の場所である。
もちろん襲撃する側にとっても、あてはまる事だが。
中古車置き場で見張りに就いていた、その半グレの男は目を擦った。
「あれっ?」
「どうしたんだ?」
「いや、あんな所に立看板あったけ?」
「ああ、下らねえ事言ってんじゃねえよ。
立看板がいきなり生えてくる訳ねえだろ」
どやされた男は首を傾げていたが、見張りを続けようと別の方向を見て、動きが止まった。
さっきまで何もなかった所に幟が五本立っている。
視線を向ける度に、誰も居ないのに立看板や幟が殖えていく。
男は見張りを放棄して、座り込んでブツブツと呟いた。
「夢だ、俺は夢見てるんだな」
浩介は、果心居士にどやされていた。
「幻術を光学迷彩に使うなど、面白味の欠片も無いわ!
大体、作業する者だけ隠し、設置された看板を隠さんもんだから、不審がられておるではないか!
せめて、一度に現せば、度肝抜かせてやったものを。
ワシが本当のけれんを魅せて呉れようぞ!」
サボリを咎められ見張りに戻された男は、
目を点にして呆然としていた。
ハチマキしたタヌキが大勢で看板や幟を持って、次々に設置しているのだ。
タヌキの大きさからいって、着ぐるみだとしたら幼稚園児が入らないと無理である。
自分の正気を疑い、崩れ落ちようとした時、視界の端にある物が入った
果心居士はほくそ笑んだ。
「タヌキなど時代遅れ?
だからこそ、自分の正気を疑うのだよ。
クックックッ、見よ、弟子よ。
彼奴ら、自分の頭がおかしくなったと思って絶望しておるわ。
人間絶望した所に希望を与えられると、どんな馬鹿げた物にでもすがり付いてしまうものじゃ。
そうれ彼奴ら、武器も持たずに陣地を出て、ぞろぞろやって来よる。
彼奴らは自分が正気だと、確認せずにはいられんのじゃよ。
弟子よ、幻術とは相手の目を誤魔化す物では無く、心を攻める物じゃ。
しかと、覚えておけよ。
新撰組よ、後は任せたぞ」
映画撮影所から借りてきた、新撰組の衣装を着た隊士達が展開しているど真中に、半グレ達はやって来ると、置かれている映画撮影機材を物珍しげに眺めた。
「おう、こりゃ何の映画撮影だい?」
凄い映像を撮るチャンスを嗅ぎ付け、強引に付いてきた、本物の映画監督とスタッフ達が答えた。
「最新鋭の立体映像特撮技術を使った、「新撰組対悪魔王」の撮影だよ」
「へえ、スゲエ技術だよな、あのタヌキ。
目がおかしくなったかと思ったよ。
やっぱり特撮かあ、ホッとしたよ」
「「「ハッハッハッ」」」
次の瞬間、半グレ達は全員新撰組に取り押さえられていた。
中古車の所に残っていた者達もいたが、こちらに気を取られていた所を、八重樫忍者達に奇襲されて、全員意識を刈り取られていた。
唯一ヒモ男だけは、悪魔崇拝者に呼ばれて廃車の壁の中に行っていたため、難を逃れていたが、こうして外郭警戒網は警報を発する事無く、無血で消滅した。
新撰組は通路以外の廃車の壁に、ひっそりと接近した。
「近藤さん包囲できたぞ」
「よし、やるぞ、せえの、そおれ一気、一気、一気」
まるで運動会の玉入れのように、大量に捕獲した手榴弾を、一斉に次々と尽きるまで中に投げ込む。
連続した爆発音と悲鳴が響き、生身の悪魔崇拝者達は大損害を受けた。
死者は少ないが、かなりの者が大なり小なり負傷している。
「うん、さすが新撰組、臨機応変いい対応だね。
でも敵もその点は変わらないみたいだ」
ドローンの映像に、倒れた悪魔崇拝者の体から流れ出した血が、魔法陣に吸い取られていくのが映っている。
負傷した悪魔崇拝者達を生贄に、魔法陣が起動していく。
廃車の城壁の中に突入されて、召喚を妨害されないように、城門のように一ヶ所しかない通路に中級悪魔が陣取り、単眼の悪魔ゲイザーが麻痺させ、ガーゴイルが壁役となって防ぎ、ヘルハウンドが火を吐いて支援する鉄壁の防御を構築する。
普通なら切り札を投入して、強引に突破すべき状況だが、恵里は中級悪魔の攻撃圏内からの後退を指示した。
何としても召喚が終わるまでの時間を稼ぐために通路を守ろうと、廃車の壁を登って上から攻撃しようとする悪魔崇拝者達を、レーザーポインターで潰す事に集中させる。
悪魔崇拝者に憑依する悪魔は、水を通して顕現している。
つまり人体表面で最も水分の多い眼を通路にして現れるのだ。
その眼に高熱をもたらす光、レーザービームをブチ込まれるのだ、たまったものではない。
ドローンのお蔭で、悪魔崇拝者がどこから登って現れるか、前もってわかっている。
そのため、五人掛かりでレーザーポインターを向けている所に現れてしまうのだ。
「よおし、三番隊照射」
悪魔に憑依されたため、赤く染まった眼にレーザービームが突き刺さり、攻撃する暇も与えられず、悪魔崇拝者と憑依していた悪魔両方が、同時に悲鳴をあげて次々に転がり落ちていく。
「アアアアァー、眼っ、眼があー」
召喚儀式を行っていた者以外の悪魔崇拝者達は、何の損害も与える事も無く全滅した。
「歳さん、浪士達相手と違って、歯ごたえが全然無いな。
こんなに楽でいいのかな?」
「近藤さん、これまでの連中は戦った事もロクにない雑魚だ。
御本尊が現れれば、こんなもんじゃ無い。
みんなの気を引き締めておいたほうがいいぞ」
「ん~、こちらの損害も無く、各個撃破が理想的に進んでいるね。
まさか、こちらが召喚の邪魔する気が無いなんて、普通は思わないよね」
攻略の順調な進行にほくそ笑む恵里に、警察のパトカーが来たとの知らせが入った。
手榴弾の爆発音で、近くの民家から通報が入ったのだろう。
「やれやれ、本当に日本はアメコミみたいなヒーローが活動しにくい国だよね。
言語兵器が無きゃ、ボクも警察に捕まっていたかもね」
こういう時のため、戦闘に出さず温存していた八重樫鷲三に応対を御願いする。
「やあ、ご苦労様、パトロールに精が出るね。
爆発音だが、火薬を使っている訳じゃない。
新しく発明された立体映像と、コンピューターで合成した音響で撮影しているんだ。
丁度クライマックスの撮影中なんで、中に入れる訳にはいかないんだか、ここから見ていかないかね。
百聞は一見に如かず。
すごいぞ、ほらこんな風に!」
口をポカーンと開けた警官達は、呆然としていたが、ハッと我に返ると敬礼した。
「失礼しました、是非続きを拝見したい所ですが、パトロールの続きが有りますので失礼します」
立ち去るパトカーの背後で、遂に顕現したアンノ、もとい権兵衛が廃車の壁の上に、悪魔の軍勢と共に姿を見せ、死闘が始まろうとしていた。
新撰組と忍者とエクスカリバー持った勇者が、悪魔王と戦う。
B級映画の極みですね。