恵里は今日も壁に頭を打ち付ける(完結)   作:コミッサール

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エリリン劇場第二十六幕開演に御座います。
長らく御待たせ致しました。
地球での最終決戦決着に御座います。
クラウディアさんが悪魔化したため、聖女用アイテムは使えません。
トータスでは悪魔特効兵器は役に立たないから、悪魔化した方がいいと判断した恵里の判断ミスでピンチです。
それゆえ手段を選びません。


第二十六話 勝てば良かろうなのだ!!

「ここまでの作戦は損害も無く、想定以上にうまくいったね。

これで細かい作業が出来る人間の敵をほぼ潰せたから、切り札を剥ぎとられてしまう心配が大分減ったよ」

ドローンで召喚状況を観察していた恵里の目に、魔法陣から紅い血風が吹き上がってくるのが見えた。

下級悪魔達が風の流れに乗って、魚の群れのように泳ぎ出てくる。

続いて、中級悪魔達が跳びだして来た。

「へえ、用心深いのか、それともかなり弱体化しているのかな?

少なくとも、指揮官先頭というタイプじゃ無さそうだね」

魔法陣から吹き出した燃える闇が、ヒトガタいや竜と人をミックスして戯画化したような姿を形成する

三メートル程の身長で、闇で形作られた身体の眼鼻口からは、地獄の業火のような焔がチロチロと吹き出していた。

異様なのは、腕と脚に嵌まっている金属の分厚い輪と、それに繋がる軍艦でも留められそうなぶっとい鎖だった。

鎖は途中で断ち切られてはいるが、未だソレの行動を制約していた。

ソレは周囲を睥睨すると、捻れた角から稲妻を、晴れ渡った大空に走らせる。

たちまち一天俄に掻き曇り、日の光が遮られると、中級、下級悪魔達が一気にパワーアップした。

 

アンノウンは困惑し、拍子抜けしていた。

「外周警戒網全滅!」「内周も八割が戦闘不能!」「敵は圧倒的勢いで、いつ雪崩れ込まれ、魔法陣が破壊されても不思議ではありません!」

「外との通路は辛うじて持ちこたえていますが、長くは持ちません、一刻も早くお姿を顕し下さい!」

悪魔崇拝者達の悲鳴のような状況報告を聞く限りは、最悪顕現と同時に集中砲火を喰らう事も覚悟していた。

そのため、本来ならもっと時間を掛けて、七王の封印を弛めてから顕現する筈だったのを、無理矢理顕現したのだ。

お蔭で、かなり力や権能に制限が掛かっている。

そこまでしたというのに、集中砲火どころか、敵が見当たらない。

先行して顕現した悪魔達も、所在なさげにウロウロしている。

 

「コレノドコガ、ピンチダトイウノダ?!

コノ、オオボラフキドモガ!」

辛うじて生き残っていた悪魔崇拝者達を殺戮すると、その魂を喰らいながら、足下に転がされているヒモ男に目を向けた。

「キサマニ、ワレニヤクダツチャンスヲヤロウ」

絶叫するヒモ男の身体に中級悪魔が入り込み、身体がボコボコと異形の姿に膨れ上がっていく。

「キサマガニクム、コムスメヲツレテコイ。

ヒツヨウナコトヲヒキダシタラ、クワセテヤルゾ」

「なんか、悪魔というより、怪獣みたいだね。

あんなんとは出来るだけ、直接御会いしたくないから、文明の利器に頼るとするかね。

じゃあ、クラウディアさん台本通り、感情いれない棒読みでいいから御願いするよ」

 

突然空から声が響いた。

「はじめまして、アンノウンさん改め権兵衛さん、南雲恵里です、ヨロシク」

「ゴンベエサン?ニンゲン、ナンダソレハ?」

「お名前が無いと、クラウディアさんや大公爵閣下からお伺いしまして、さぞや御不便かと思いまして、僭越ながら名前を贈らせて頂きました。

こちらに伝わる、名無しの権兵衛という話から取りました」

「キサマ、アガレスノテサキカ?!

フザケルナ!スグニデテコイ!

オトナシク、クラウディアノイバショヲシャベルナラ、イノチダケハタスケテヤルゾ。

デテコヌナラ、シュウイスベテモヤシツクシテヤルゾ!」

「それは大変だね、ここに居るクラウディアさんまで巻き添えで死んでしまう。

いやあ、困ったなあ。

さあ、クラウディアさん、どうぞ」

「私は現在身体に複数の爆弾が付けられており、南雲恵里がリモコンのスイッチを押したり、私が攻撃を受けた場合、爆発します。

私がクラウディア・バレンバーグ本人である証明のため、私が九歳の時起こった事について証言します。」(悪魔は嘘を見抜くから嘘ではないさ、リアクティブアーマー(爆発装甲)なんて悪魔が知ってる訳無いよね。

普通の人間では無理だけど、悪魔化したクラウディアさんの身体なら堪えられる。

強化案の一つ用で米軍から分解の実演の代価で取り寄せておいたのが役立ったよ)

「キ、キサマァ!!クラウディアヲヒトジチニシタノカ?!

セイギトヤラハドウシタ?!」

「お褒めに預かり恐悦至極、正義?ナニソレ美味しいの?」

「ナラバ、クサノネワケテモ、キサマヲサガシダシ、テアシヲモギトリ、ウマレテキタコトヲコウカイサセテヤルゾ」

クラウディアはなおも、ずっと何か言い続けていたが、頭に血が登り、わめき散らしている権兵衛はまったく聞いていなかった。

 

下級と中級の悪魔達が恵里とクラウディアを捜し始める。

クラウディアの声を頼りに捜すが、声がドローンやあちこちに隠されたスピーカーから響いてくるため手こずり、かなり広く散開することで、ようやく中古車の陰に潜んでいたのを見つけ出した。

だが同じく潜んでいた新撰組とぶつかり合い、混戦状態になった悪魔達は、恵里達を押さえる事が出来ない。

苛立った権兵衛は、恵里達の足止めにクラウディアが死なない程度に手加減した重力魔法を掛け、地に伏せさせる。

クラウディアが、浩介が、倒れ、悪魔お姉さんと雫、恵里が膝を付く。

ここぞとばかり、新撰組を突破した悪魔達が恵里を押さえようと襲来する。

だが、ハジメは膝を屈しない。

足が地面にめり込んでいくのも、意に介さず竜化した筋力でエクスカリバーを振り上げ、斬撃を放った。

「僕の恵里に手を出すなァ!!約束された勝利の剣!!」

空間毎切断する斬撃に、上空の黒雲が切り裂かれ、雲の切れ間からの陽光が照らし出す中、権兵衛の角がゴトリと墜ち、重力魔法が中断された。

切断された空間が元に戻る衝撃波で、垂れ込めていた雲が消し飛び、太陽の光が遍くこの場を照らし出した。

中級や下級悪魔達の動きが俄に鈍くなり、耐えていた新撰組が一気に反転攻勢に討って出た。

「歳さん、浪士達と互角位には手強いかな?」

「近藤さん、人より獣の群れと考えた方がいいと思うぞ」

「成る程、総員、手強い野犬の群れと思え!」

闇雲に突っ込んで来る悪魔達を、組毎に連携を取って次々と倒していく。

 

岩石の身体の防御力に物を言わせ、恵里に飛び掛かり、押し倒そうとしたガーゴイルの前に雫が立ちはだかった。

「木曽流剛剣術、金剛斬り」

雫の身長より長い刀、所謂斬馬刀を鍛え上げた剛力で軽々と振るい、ガーゴイルを一刀両断、頭から唐竹割りにする。

大技ゆえの技の後の隙を狙い、ヘルハウンドの群れが殺到するが、リーゼロッテお姉さんがハルバードを水車のように振り回し、弾き飛ばす。

ゲイザーが魔眼を光らせ、麻痺させようとするが、その単眼に浩介の苦無が突き刺さり、絶叫させる。

浩介はクラウディアに手枷を嵌めさせ、拘束しているように見せかけつつ、幻術が悪魔に見透せるのを、逆用して攻撃対象が二重に見えるようにして、悪魔の攻撃ミスを誘っている。

八面六臂の活躍は果心居士との二人羽織あってのことである。

 

頭部にダメージを受けた権兵衛が、怒りの咆哮と共に無数の闇の触手を放って、恵里とクラウディアを分断する。

追い討ちで恵里目掛けて、これまで誘爆を恐れて使えなかった焔の鞭が殺到し、リモコンを破壊しようとするが、ハジメが立ちはだかり、細かく斬撃を放ち防ぎとめる。

恵里は灰翼を拡げ、横や上、後方から迂回してくる触手を片端から分解し、その合間にハジメの斬撃とタイミングを合わせ、権兵衛に灰色の分解砲撃を喰らわした。

魂が繋がっている為、完璧な連携でタイミングを合わせられるのだ。

更に雫が権兵衛目掛けて剛力でガスボンベを投げつけた。

「ホノオガワレニキクカ」嘲笑と共に伸びた焔の鞭がボンベをへし折り、次の瞬間吹き出した白い液体、液体窒素が、焔の鞭を凍らせ、ボロボロに千切れさせる。

互角以上に闘い、勝利も夢ではないように見えた。

 

突如地面が割れ、一匹の悪魔が飛び出してきて、リモコンを破壊するまでは。

攻撃するや、地面に飛び込んで姿を消し、まったく気配を気取らせない、ヒモ男が融合した悪魔が襲い掛かる。

五メートル程の東洋龍のようで、顔だけヒモ男の悍ましい外観の悪魔だが、恐ろしく素早く胴体を伸縮させて攻撃してくる。

遂に恵里の脚に噛み付かれ、毒液を注入され、痺れた身体に巻き付かれた。

「クソガキィ、何年も掛けて、タップリ嬲りぬいて、殺して下さいと懇願するようにしてやる」

背後を守る者が居なくなったハジメに触手と焔の鞭が全方位から襲い掛かる。

全身を焔の鞭に打ち据えられながらも、傷をエクスカリバーの鞘の力で回復させながら奮戦するが、もはや敗北は時間の問題だった。

勝ち誇る権兵衛はリーゼロッテや浩介に引き摺られて、離脱しようとしているクラウディアの所に突進する。

逃げ出した二人には構わず、クラウディアの前に立った。

爪で器用に自爆用爆薬のベルトを切断し、放り捨て、クラウディアを掴み上げた。

ヒモ男はその光景を恵里に見せ付け、絶望する所を嘲笑おうとして凍り付いた。

恵里のこの眼を前に見た事が有る。

ヒモ男を嵌めた時の恵里の目付きにソックリだった。

恵里の視線の先、そこではクラウディアが権兵衛に一枚の紙を差し出していた。

反射的に受け取る権兵衛、次の瞬間権兵衛は絶叫した。

 

「フム、上手く渡せたようですね、ホホホホ」

安全な場所で双眼鏡で眺めながら、秋畑組に紹介された弁護士の喪黒は高笑いしていた。

「いやあ、悪魔との契約で召喚主と契約者が違う?

地球でも似た場合が有りますねえ。

借金の契約で、ハンコを持ち出されて勝手に名前を使われたとか言って、この契約は無効だと逃げようとするとか。

でも、契約の名義人と金を受け取った人間の間に合意が有った事を証明出来れば、契約は有効な物になりますから。

この場合、召喚したクラウディアさんが、アンノウンと契約した男の契約内容を承認して、その事をアンノウンに宣言し、通知書類を渡せば、契約は完全に有効になり、アンノウンは契約違反のペナルティを喰らう羽目になると。

まあ、両親を裏切るような宣言は、身を切られるよりつらかったでしょうが、仇を討てる誘惑には勝てませんでしたね。

本人の精神負担が少しでも軽くなるよう、降霊術で両親の許可を得たり、宣言の文案を練るのは苦労しましたねえ」

 

情報生命体である悪魔にとり、契約違反のペナルティは極めて大きい。

名前で約束した事の否定、すなわち生命としての自己否定だからだ。

前回、ハジメに概念魔法「お前の存在を否定する」をぶちこまれたエヒトのような事になってしまう。

権兵衛は全身から焔を吹き出し、身体がグズグズに崩れ、不定形の焔のアメーバのようなナニカに変わっていく。

自己否定したため、「自分」と云うものを保てなくなり、ただの生命力と魔力の塊に成り果てていく。

 

それを見て呆然としていたヒモ男が、慌てて恵里にトドメを刺そうとしたが、ハジメに首をはねられて、首だけでもまだ生きているのを、雫の苦無でトドメを刺された。

残りの悪魔を新撰組が掃討し、権兵衛の残骸をリーゼロッテが喰らって戦闘は終了した。

 

ハジメにエクスカリバーの鞘で治療して貰いながら、恵里はこれから起きる事に憂鬱だった。

「ホホホ、恵里さん、勝利おめでとう御座います。

ところで、相談料は頂きましたが、成功報酬分はまだですので、こちらが請求書になります。

今後とも喪黒法律事務所を御贔屓に」

「ああ、嬢ちゃん、二億円の請求書だ。

酷い仕事だったが、うちの関係もあるから値引きしておいたぞ、よろしくな。

後、こっちが買い出しした液体窒素やら、レーザーポインターその他諸々の必要経費の請求書頼んだぞ」

「「いつもニコニコ現金払い、支払いは二週間以内に頼んだぞ(御願いしますよ)」」

 

立ち去る秋畑組と喪黒弁護士を、虚ろな目で見送る恵里に、不安になったハジメが尋ねた。

「ねえ、恵里ちゃん、本当に払えるの?」

恵里はお目々グルグルさせながら答えた。

「お兄ちゃん、確認したらヒュドラは大金を税務署にバレないように迂回送金するのにかなり時間が掛かるし、お父さん、お母さんは支払う訳にいかないんだって。

反社会的団体と取り引きしちゃうと、お父さんのゲーム会社が潰れちゃうし、出版社もお母さんの漫画を扱えなくなっちゃう。

だからお兄ちゃん、埋蔵金捜しに行こう!

タイムリミットまで後二週間為せば成る!!

成るといいなあ(泣)

口座にお金が有るのにダメなんて、世界は何時だって、こんな筈じゃなかった事ばっかりだよ、ホントに(号泣)」

 

 

 

 

 

 




恵里は社会人経験が無いので、ヤクザと取り引きすると、どんなに厄介な事になるか知らず、墓穴を掘りました。
なお、埋蔵金を見つけるも、大判小判など短期間に捌いて現金化出来る筈もなく、担保にしてお金を借りる羽目になった模様。
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