恵里は今日も壁に頭を打ち付ける(完結)   作:コミッサール

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大変御待たせいたしました。
エリリン劇場第二十八幕開演いたします。
のんびりゆっくりお楽しみくださいませ。


第二十八話 自由奔放 傍若無人

中国政府は震撼していた。

眉唾ネタと思っていた宇宙人の資料が、課長から届いたのだ。

これまでのアメリカから流出したり、チンケな犯罪グループから入手した、まったく真偽不明の物と違い、中国情報当局チームが直接撮影した空中浮遊の動画、そして何よりも人間の物によく似ているが、異様な生命力を見せる細胞標本の入手。

もし宇宙人であれば、何としても中国側に引き込むべく、予算無制限での工作を行えと総書記の直命が下った。

一番力を与えてはいけない男に予算無制限、鬼に金棒、キ印に刃物。

総書記から称賛されたにも関わらず、情報当局上層部は胃を押さえながら、「どうしてこうなった?!」「お前が小賢しい企みをするから」「あんたも賛成しただろ」と責任を擦り合い、右往左往していた。

 

南雲家ご一行は雫、リーゼロッテお姉さん、クラウディア、遠藤浩介、秋畑梓、後戦闘に参加した八重樫忍者達で観光バスを貸切で旅行となった。

一般道場の指導があるので、鷲三、虎一夫妻は不参加である。

京都方面に行くと聞いて、秋畑組に憑依していた新撰組や巴御前、果心居士も今の京都を見てみたいと同行した。

恵里の降霊術で、恵里からあまり離れなければ、憑依しなくても霊体がある程度安定して行動でき、旅行参加者限定で見る事が出来て、会話も出来るようにしてある。

もしも、二階建て観光バスにしていなければ、見える人には車内はすし詰め状態になって見えていたろう。

運転手さんは幸い霊感の無い人だったので、普通に運転していた。

ガイドさんは見える人だったので、最初はビビっていたが、歴史上の有名人達、特に新撰組がいる事に気が付くと、一転してニコニコ顔に変わり、新撰組から隊士間の耽美なお話を聞き出そうとしていた。

 

恵里はハジメの隣で、車窓から景色を眺めてお喋りしたり、サービスエリアで買ってみたお菓子をハジメと分けて食べたり、寄りかかってみたり、イチャイチャしてハジメ成分を満喫していた。

ハジメも恥ずかしがりながらも、満更でも無い様子で、顔を赤くしながら自分から恵里と手を繋いで、サービスエリアで買い物していた。

最後部の席では浩介がリーゼロッテお姉さんとクラウディアお姉ちゃんに挟まれて、甲斐甲斐しく面倒を見られていた。

浩介が死なないように、いかに強化するか話し合われているようだ。

恵里は高いステータスのお蔭で上がっている聴力で、浩介達の会話を聴きながら、ハジメの強化プランを考えていた。

前回の人生の戦闘でも感じていたが、アンノウンとの戦闘で改めて痛感したのは、攻撃力の高さに比べて、防御力の不足だった。

強大な攻撃に対し、防御が紙装甲過ぎて、回避出来ないと一発でやられてしまう。

せめて、戦艦武蔵みたいに直撃を喰らっても平然と反撃し、魚雷二十本以上喰らってやっと沈む位の防御力が欲しい所である。

これまで必要な素材も神代魔法も無かったため、何も出来なかったが、リーゼロッテお姉さんがアンノウンを吸収したため、強力な神代魔法が使え、教えてもらう事が出来るようになった。

ならば、以前から検討していた機動戦艦ナデシコのディストーションフィールドがつくれるのではないか?

ビーム系統の攻撃に特に効力を発揮してくれるだろう。

恵里はハジメを守るためには、なんでもやって見るつもりだった。

 

とあるカラオケルームで中国情報当局チームの会議が開かれていた。

「イヤ~、みんな暑い中、連日の中古屋巡りやネットでの写真集購入と報告書作成ご苦労さん、前回本国に送った資料と標本が大いに評価され、予算無制限で何がなんでも接触して、何か宇宙人の技術を手に入れろとの事だ。

と言うわけで、旅館を買った」

誰も口を開かなかった。

みんなの心はひとつ、コイツは一体何を言っているんだ?

「ソレはひょっとしてギャグで言っているんですかい?」

「ハッハッハッ、そんな筈無いだろう。

実はこの旅館、相当経営が大変で危なかったそうでね、債権を買い取って、今すぐ返済するか、買収されるか好きな方を選んで貰い、我々が所有権を握ったんだ。

勿論我々は素人で旅館運営なんてわからないから、旧経営陣も残してあるから安心したまえ」

「「「安心出来る要素が欠片も無い」」」

「で、ターゲットの話だが、宿泊を手配してきた八重樫さんというのは、裏では日本警察と協力しているトップクラスのニンジャだそうだ。

どう考えても宇宙人の護衛と監視だね」

「は?課長、ニンジャってホントにいるんですか?」

「チッチッチッ、いかんねえ、君達。

いいかい、僕達は宇宙人と仲良くしようとしているのに、たかがニンジャで驚いてどうするんだい?

まあ、百聞は一見に如かず。

八重樫忍者に対抗するために、来てもらった不思議忍者フーマの皆さんを紹介しよう。」

ドアが開き、獅子舞の格好した奴と、巫女服着た浅黒い肌の日本人に見えないお姉さんが入って来た。

「俺の知っているニンジャと違う?!」

「紹介するよ、インドネシアから来たバリさんとフーマ神社で神官やってるグエン・ポーさんだ」

「なんでインドネシア人やベトナム人がニンジャ?」

「皆様、私達フーマは北条氏滅亡以後、まつろわぬ者として、権力に抗って参りました。

皆様の中国の三合会みたいに、歴史と伝統ある由緒正しい反政府、犯罪ニンジャ組織で御座います。

権力の犬の八重樫とは違うのですよ、八重樫とは。

ですから、私達は民族に拘らず、様々な方を受け入れて参りました。

参加資格はひとつだけ、不思議な踊りが踊れるかどうかだけで御座います」

みんな目を真ん丸にして叫んだ。

「「「訳がわからないよ?!

それの何処がニンジャなんだ?

只の舞踊教室じゃないか?!」」」

「まあまあ、実力は確かだよ。

その実力を発揮してもらうために、旅館を改造する事にした。

大船に乗った気分でいてくれたまえ」

 

バスの最初の観光先は、巴御前の希望で大津や宇治などの、木曽義仲最後の戦いの舞台となった場所だった。

もう地形も変わり、かっての面影も無いがそれでも感無量だった。

宇治橋は巴御前の時代にも、今の場所に架けられていたので、巴御前は懐かしげに眺め、巴御前の目で見た木曽義仲最後の戦いの解説をしてくれた。

先頭の巴御前の回りに八重樫忍者達が集まり熱心に聞いていた。

恵里とハジメは最後尾で話を聞きながら、手を繋いで渡っていると、いきなり強烈な殺気を感じた。

バッと背中合わせになり、周囲を確認したが、それらしい相手は見当たらない。

いざという時すぐ助けられるように、手を繋ぎ油断無く橋を渡り終えたが、仕掛けて来る相手は居らず、首を傾げながらバスに乗り込んだ。

??「慈悲を与え、警告したにも関わらず、我が目の前でいい覚悟じゃ、赦しませぬ。

皆の者もそうであろ?」

何処かで、轟くような叫びがこだましていた。

 

一日目の観光を終え、温泉旅館に着いた一行は部屋でくつろぎ、夕方宴会場に集まった。

憑依していた霊達は、食事は取れないので、旅館の近くを散策、警備してくれている。

恵里達も浴衣に着替えて、宴会が始まり、南雲家を代表して愁が挨拶とお礼を述べ、乾杯して酒と料理を楽しんだ。

恵里はハジメと共に子供達で集まり、ジュースを飲んでお喋りしていた。

恵里が苦手なクラウディアはリーゼロッテとお喋りしていた。

盛り上がっていると、旅館のサービスで舞踊を見せてくれるとの事で、宴会場のステージの床が開いてせり上がり、腕を組んだ獅子舞が現れて舞いを披露する。

恵里はのんびり眺めていたが、ふと違和感を感じた。

みんなの、特にハジメの様子が変だ。

これまでずっと、ハジメは恵里の前ではだらしない姿を見せた事は無かった。

恵里を護りたいという強烈な想いのため、恵里がいつ襲われても対処出来るよう、常に自分を律していた。

それがゴロンと横になり、だらしない顔で、料理を摘まんでいる。

見れば大人達も酒が入ったとはいえ、あまりにもだらしない。

そして恵里本人も異様な様子に警戒して、自分から横になって周囲を観察する。

(魔力は感じなかったという事は薬物かな?平気そうなのは、リーゼロッテとクラウディアだけ?

いや、クラウディアには多少だが効いているという事は悪魔には効かないナニカ?

まてそもそも、なんでボクだけは平気なんだ?

まさか!!言語兵器?!あり得ない!ボクが言語兵器を使われて、まったく気付かないなんて!

第一長くしゃべった部外者なんて、・・・

あの舞と太鼓か!!してやられた!

舞と太鼓のパターンが脳に作用して、言語兵器モドキになっているのか。

なら本家言語兵器で上書きすれば、簡単に解除できるから、大したピンチでも無いだろ。

やられた振りして、まず詩文を創らなきゃ、言語兵器は強力だけど、これが一番使いにくい点だよね。

ん~、自制心を弛めて、怠惰に走らせているんだから、詩文に組み込む対抗概念は、ピィャアアア~?!)

 

恵里に恐るべき伏兵が襲い掛かった。

後ろからハジメが恵里を抱き締めて、耳元にキスしてきたのだ。

自制心のタガが外れて寝そべっている所に、目の前に大好きな、大好きな恵里が転がってきたのだ。

まさに猫に鰹節状態、攻撃を受けていると知らないハジメが、我慢出来る訳が無かった。

恵里は狼狽えている間に、竜のパワーでガッチリ後ろから押さえこまれて身動き取れなくなり、耳元で普段ならハジメが言えないような、くそ恥ずかしい愛の言葉を囁かれ、スリスリされていた。

二人っきりでならともかく、宴会場で大勢の前でされているのだ。

こんな状態で詩文を創れるだろうか?無理に決まっている。

耳まで真っ赤な茹で蛸状態の恵里が、羞恥心地獄をのたうち回っている間に、課長達は浩介を膝枕にしてあげて、楽しんでいた悪魔シスターズの所にやってきた。

 

天井が開いて降りてきたくす玉が開き、花びらが舞い散る中、両手を拡げて課長は挨拶した。

「やあ、お久し振りですね、覚えていらっしゃいますか?

コミケで握手をして頂いた者ですよ。

イヤ~、まったく、奇遇ですねえ。

わたくし、この旅館のオーナーをやってまして、リチャード・ウォンと申します。」

「まあ、嬉しいですわ。

こんな旅先でファンの方に会うなんて♪」

「コミケであなた方の麗しい姿を見て以来、ずっと考えていた事がありまして。

どうです、もっと大勢の方達にあなた方の素晴らしさを知って貰うため、アイドルになってデビューして見ませんか?」

何処かで「シャリン」と鈴の音がした

 

 

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