最終一話手前になります。
これまで出番のなかった原作キャラ達もちょこっと出てきます。
ライセン大迷宮は人の立ち入らぬライセン峡谷のど真ん中にある筈だ。
窪みの奥の入り口は普通なら簡単には見付からない。
だが今回は見逃しようがなかった。
迷宮入り口にははっきり人が存在する証拠があった。
入り口の回りに無数の足跡が有り、ゴミが落ちていた。
だが軍隊にしては足跡の大きさが不揃いだし、冒険者にしては数が多すぎる。
何よりも頭が痛いのは、迷宮の看板のプレートに貼ってある「只今改装につき休業中」の紙だった。
首を傾げた恵里達は、慎重に中の様子を伺うと、中から微かにザワザワとした声とガガガという喧しい音が聴こえてきた。
警戒しながら入り口を開けると、中にはウサギさん達がワラワラいた。
一瞬の間、凍り付いたウサギさん達は悲鳴を上げて、奥に逃げていく。
元は十メートル四方だった部屋は、作業用ゴーレム達が絶賛拡張工事中で倍以上大きくなっている。
更に奥の通路からもガガガやらガラガラといった工事の音響が響いていた。
「あー、ちょっと待って」
恵里はこけた男の子のウサギさんを捕まえた。
「ちょっと教えてくれないかな。
ここはライセン大迷宮でいいんだよね」
目付きの悪い恵里に笑顔で聞かれ、
「ひっ、ひいっ、助けて~」
男の子が悲鳴を上げると、奥の通路から明らかに戦闘用のゴーレムが、ガシャガシャとやってきて武器を向けた。
ハジメ達も身構え、一触即発の空気の中、恵里は両手を上げて進み出た。
「オルクスの方から来ました。
ミレディ・ライセンさんはご在宅かな?」
ゴーレムの一体の視覚器官らしい部分が赤くチカチカと点滅した。
「へえ!オルクスをクリアしたんだ!
大歓迎したい所だけど、見ての通り改装工事中なんで、先に他の迷宮へ行くか、後一ヶ月経ってからまた来てくれないかな?」
「あー、ボク達は迷宮攻略に来た訳じゃないので。」
「?、重力魔法はいらないのかい?」
「もう、自前で習得済みなので、今日はオスカー・オルクスさんと話をして欲しくて来たんですよ」
ゴーレムは腕を組んで首を傾げ、考え込む仕草をしていたが、ポンと手を叩いた。
「これはミレディちゃんもしてやられたよ!
オルクスの方から来たという言い方、さては詐欺師、ズバリそうだろ!」
「え、トータスにも消防署詐欺有るのか?
じゃなくて、オルクスさんを降霊術で呼び出して、メイドロボを依り代にしてあげたら、引き籠ってしまったんだよ」
ゴーレムの全身がプルプル震え出し、手足をジタバタ振り回して転がり回り始めた。
「アハハハ~、あのメイド趣味のオー君がメイドロボに?
サイコーだよ、キミのセンス!
是非行こう、絶対行こう、こんなユカイな物見損ねたら大損だよ!」
「ところで、このウサギさん達は?」
「いやあ~、難民でね、異世界との物凄い大戦争が起きて、地上が焼け野原になるからって、避難してきたんだよ。
彼等の為に居住スペースを拡張している所さ。
もちろんキミ達は知ってるよね、異世界人なんだろうからさ。
重力魔法を学べる所なんて、エヒト以外では、そこ位しかないからね
まっ、細かい事はオーちゃんと一緒に聞くよ、も・ち・ろ・ん・話してくれるんだろ?」
恵里は無言で頷いた。
ミレディは端末ゴーレムの一体を恵里達に同行させ、オルクスに向かわせた。
それを中央制御室で見送りながら、ミレディの本体ゴーレムは、脇に立つウサギさんに問い掛けた。
「シアちゃん、これで未来は少し変わったかい?」
ウサギさんは天を仰ぎじっと宙を見ていたが、溜め息を吐いた。
その拍子に身体のあちこちに付けられた腕輪、足輪、様々なアクセサリーがシャランと音をたて、宝玉を煌めかせる。
その煌めきに呼応するように、部屋の全ての壁面に刻まれた魔法陣が発光する。
「まだほとんど改善されていないですう。
彼等と戦う未来よりはマシですけど」
「イヤイヤ、それだけでも充分だよ。
駆け込んで来たシアちゃん達を保護した甲斐があったよ。
あの時はビックリしたよね。
シアちゃん必死で世界もエヒトのクソ野郎もみんな滅びるから、一族避難させて欲しいって訴えてきてねえ、頭おかしいのかと思ったよ」
「でも、ミレディ様信じてくれたじゃないですか」
「そりゃあ、あれだけ先読みの実演見せられちゃあねえ。
ここに逃げ込む以外、どうやっても全員死ぬ未来を見たなんて戯れ言でも信じざるを得ないよ。
でも大丈夫、シアちゃんの予知があれば、きっとマシな未来が掴めるさ」
「でも、私付いていかなくて良かったんですか?」
「ここでも遠隔で話に加われるし、行かない方がいいよ。
命に関わらないから予知出来ないんだろうけど、オーちゃんは極度のメイド趣味で、シアちゃんなんてかわいい子を見たら、絶対「ウサミミメイドキター」とか言って大喜びするだろうね。
そして「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン、ウサミミメイドになあれ!」とか言って杖を一振して、メイドに変えられてしまうよ」
「ひいっ、なんて恐ろしい、私ミレディ様のような優しい立派な方に助けて貰って、本当に良かったですう」
(う、うん?優しい?立派?エ~トどういう意味だったけ?思い出せないや)
オルクス大迷宮に戻ると、ミレディの端末ロボを引き連れ、恵里達はオスカー・オルクスの私室の前に来た。
強力な魔法錠もミレディの前には無力だった。
ドアをバンと開け、ミレディロボは凍り付いたメイドロボ姿のオスカーの前に仁王立ちになり、腰に片手を当てて高笑い。
ロボットがロボットを笑うシュールな光景である。
「なっ、お、お前はミレディ!」
「やあ、オーちゃん久し振りぃ!
メイドスキーが嵩じて、自分をメイドにするとはミレディちゃんもビックリだよ!
親切な人達に教えて貰って、これは是非見てあげなきゃと思ってキタヨー!
プー、クスクス、ねえ今どんな気持ち?
潜入に必要とか言って、ミレディちゃんにまでメイド服着せて喜んでたんだから、自分が着られてさぞや嬉しいんだろうね。
いっぱい画像記録しておいて、あ・げ・る☆」
煽りまくるミレディにオスカーは暫く俯いていたが、いきなりガバリと顔を上げた。
「僕は間違っていた!
メイドを愛すると言いながら、自分はメイドになろうとしなかった!
そんな中途半端な愛で、メイドスキーを名乗れようか?
そうだ僕は今こそ、この素晴らしい身体を誇ろう!!
今日から僕の名はメイドガイだ!!」
「「グハッ」」
ハジメと浩介の心に特大のブーメランが突き刺さった。
女性陣は二人に優しくしてやろうと心の中で決め、ミレディちゃんは口の端を引き攣らせながら、話題を変えて話を逸らした。
「まあ、オー君の素晴らしい宣言は記録出来たので、今後の事に話を進めるよ~。
オーちゃんを復活させ、ミレディちゃんまで呼び出してキミ達は何をしたいんだい?」
恵里はゆっくりと語った。
「ボク達はエヒトにオモチャとして、そしてエヒトの依り代になりうる存在として、異世界から召喚された。
だけど、ボク達は召喚される事を前もって知っていたんだよ。
だから異世界の神に近い種族、悪魔達にエヒトの侵略計画を教えて、トータスに攻めこんでエヒトと戦うようにそそのかした。
例え、ボク達が今死んでも、彼等悪魔族のトータス侵攻はもう止まらない。
そしてエヒトに勝ち目はほぼ無い。
概念魔法を使うエヒトクラスの大物だけで七人、その下の神代魔法使える大幹部クラスだけで数百人いるからね。
数十万の使徒や何千万の魔物対何百万もの悪魔、史上最大の戦争が始まるわけさ。
まあ、流れ弾だけで、トータスの被害は凄まじい物になるだろうね。
君達の望みの一つは叶うわけさ」
「オーちゃん、この子達の言ってる事は本当だと思うよ。
うちの所にいる未来視能力者が、トータス全てが人外の大戦争で焼き尽くされる未来を見たんだよ。
それがエヒトと悪魔とやらの戦争の事じゃないのかな?」
オスカーは首を振って言った。
「僕達がエヒトと戦ったのは、トータスの人々が自由に生きていけるためだ!
だが君達のやり方ではエヒトを倒すために、トータスの人々を皆殺しにしてしまう、本末転倒だ!!」
「悪いがボク達の世界の安全が第一なんでね。
だけど、出来ればトータスの人達の被害を減らせればとは思っているよ。
トータスが悪魔だけの世界になると、将来色々困るんでね。
地球とトータスで第二次異世界大戦は勘弁して欲しいのさ。
その為にボク達に協力してほしいのさ」
「選択肢が無いじゃないか?
何をしようと言うんだ?」
「なに、簡単な事だよ。
エヒトの戦力が戦争前にがた減りして、早く戦争の決着が着けば、トータスの被害は大幅に減る筈だ。
その為に使徒を一体捕獲する必要が有るんだが、ボク達だけじゃキツいんでね。
君達解放者全員の協力を仰ぎたい」
ミレディはシアに未来を見させて確認し、オスカーは厳しい顔で恵里達を睨んでいたが、彼等に選択肢は残されていなかった。
恵里達はまず各地の大迷宮を回り、解放者達を次々と降霊術でゴーレムに憑依させ復活させていった。
先に復活した解放者そのものが触媒に出来るので、後半に成る程降霊は楽になっていった。
そのついでに、恵里達がちゃっかり神代魔法や素材をゲットしていたのは言うまでもない。
各大迷宮ではハルマゲドン時にトータスの人々のシェルターにするべく、拡張工事が大規模に行われ、ウサギさん達も従事していた。
迷宮巡りのついでに、ハジメは単独で弟子の清水にこっそり会いに行った。
オスカーにハジメがメイドスキーだとバレたため、このままではメイドガイ二号にされてしまいそうなので、一時待避する事にしたのだ。
その道中では魔法で顔を変えて変装し、気の毒な女の子助けたりしながら、王都に入った。
既に光輝からハジメ達の生存を聞かされていた清水は師匠に会えて大喜びだった。
王国の錬成士達を動員してのガンダムと一般兵用のジムの量産体制の成功について話し、今魔物にレールキャノンなどを組み込むゾイド計画について熱く語った。
清水がテイムした魔物達を改造強化したいのだが、アイテムと魔物の融合がうまくいかず、暗礁に乗り上げていた。
それを聞いたハジメは、ニヤリと笑うとあの憧れのセリフをドヤ顔で言った。
「こんな事もあろうかと!そうこんな事もあろうかと!僕が秘かに作っておいた変性、生成二つの神代魔法の両方を組み合わせた魔物改造キットだ。
ついでに素材も色々付けとくよ。
これさえあれば融合も簡単さ」
「おおっ、流石師匠っ!
これさえあれば、俺の夢がかなうっす!
決戦の時は当てにして下さい!」
ハジメが帰った後、清水は上気した顔で倉庫の扉を開け、そこに収納されていたモノを見る。
「師匠見てて下さい!
俺の夢、デスザウラーを!!
ブレスの炎をプラズマ化して収束、加速して発射するプラズマ砲!レールキャノン!ミサイル!を身体に融合!色も黒で丁度良し!コイツに乗って魔物のゾイド軍団を指揮して、師匠の援軍に行くっす!待ってて下さい」
「グルルルル(泣)」
「うん、最初に目覚めた時の吠え声がやかまし過ぎて、鼓膜破れるかと思ったから、唸り声以外声出すなって命令したのは、正解だったよな。
咆哮ってカッコいいと思っていたけど、現実は非情だなあ。
さあて改造手術始めようかな♪」
「グルルルル(大泣)」
「そうか、お前もきっと嬉しいんだな。
最強の魔物にしてやるからな。
いやあ、俺が魔物テイムしに行った先で、たまたまお前が寝てたなんてどんな偶然?
俺とお前は運命で結ばれていたんだよな!
大勢の人を救って、デスザウラーの名前をトータス中に轟かしてやるぞ!」
「グルル~(らめ~)」
恵里は解放者達と相談し、光輝を囮にオルクス大迷宮に使徒を誘引する事にした。
大迷宮内ならばエヒトの目が届かないからだ。
ユエを囮にする事も検討したが値打ちが有り過ぎて、エヒトが使徒の大軍送って来かねないので、ボツになった。
オルクス大迷宮に光輝を籠らせて、レベルカンストすれば依り代として使えるようになる。
突然レベルカンストすれば、エヒトは不審に思ってノイントを調査に寄越すだろう。
「という訳でレベリングRTA始めるよ~」
「うわあああー」
わずか一週間で無理矢理カンストさせられ、魔物を各種食べさせられた光輝は、ハジメ謹製の強化装備を与えられた。
光輝がカンストしたと知らされた王国は、お祭り騒ぎでリリアーナ姫と婚約させようという計画が出て来たが、光輝が真オルクス大迷宮を発見したと言って、迷宮から出てこなくなったので騒然となった。
情報は教会に届き、ノイントが動き出した。
「フム、捜索犬位には使えるかも知れませんね?
主も大いに笑わせた事ですし、魔物にでも改造して連れて行きますか」
ミレディはシアの未来視を強化増幅しています。
レベリング、ポーション、アイテムでパワーアップさせ、能力増幅する魔法陣が描かれた部屋に籠らせています。
これにより世界の未来をある程度見る事ができる巫女になりました。
原作で戦闘面に向かったバグウサギの努力が、全部予知に向けられたとお考え下さい。