最後までお付き合い有り難う御座います。
書いていて色々思う事が有りましたが、作者的に一番計算外はリーゼロッテです。
買収され、コタツで偉そうにゲームしてる堕落した引き篭もりのニートになるはずが、ちょっと気の迷いで強情張らせたらどうしてこうなった?
出したら便利な事、電話機代わりに教師役、恵里の代わりに慰撫する役、なんでもこなす万能キャラ。
キャラが勝手に動き出すとはこの事か?
奥の部屋から、独立した命令系統に属する上級使徒であるため、汚染されていないエーアスト、ツヴァイトが現れ、恵里達に砲撃をぶちこんできた。
クラウディアと弟子の香織の二人掛かりのディストーションフィールドが砲撃をねじ曲げ、天井を直撃して大穴を開けた。
瓦礫が降り注ぐ中、銀羽をシャワーのように乱射しながら、双大剣をかざして斬り込んできた上級使徒達。
砲撃と違い限定的な誘導が可能な羽攻撃は、進路をねじ曲げるだけのディストーションフィールドでは防げない。
恵里が灰羽を同じく乱射して迎撃し、羽同士が対消滅して消えていく。
だが数の力で半分の銀羽が突破したのを、百一人浩介大行進が迎え撃つ。
宝物庫からショットガンを取り出し、十人の分身が鉄砲隊のように筒先を揃え、一斉にショットガンを発砲、散弾の弾幕で銀羽を消滅させる。
続く九列の戦列と次々と交代して尽き事の無い弾幕に全ての銀羽が消滅した。
触れた物を何でも分解して消滅する羽攻撃の欠点を突いた恵里のアイデアだった。
砲撃と羽を防がれたが、心を持たぬ使徒は動揺せず双大剣を振り下ろす。
ハジメと雫、リーゼロッテが迎え撃った。
エーアスト一人でハジメと雫を相手取り、ツヴァイトがリーゼロッテを引き付けている。
上級使徒のステータスはオール二万二千、リーゼロッテは互角だが、二万に及ばぬハジメと雫にはキツい相手だ。
それでも原作のハジメなら必ず勝てた。
地獄の底から毎回ギリギリの戦いを切り抜けてきた原作のハジメは、単純なステータスで計れない技を、機転を、戦術センスを、不屈の意思を磨き上げてきた。
だがこちらのハジメにはその地獄の経験が無い。
恵里が良かれと思って、毎回様々な準備を整え、楽に勝てるように手配りしてきた事が完全に裏目に出ていた。
二人掛かりでも逆に押され始めて、遂に雫が大剣を防いだ所を蹴り飛ばされた。
「ガハッ」内臓をやられ血を吐く雫に、回避しようのない至近距離からの銀羽が襲う。
恵里が灰翼を間に差し込んで辛うじて防ぎ、クラウディアと香織が雫に治癒をかけ、回復させる。
だがその間に雫の盾となったハジメが「神炎」で灼かれ深傷を負った。
「ガアアアァ」
「人の子ごときが良くやりました。
本気を出させ、魔法を使わせた事を誉めてあげましょう。
だが無意味な努力です、見なさい」
エーアストの後ろに銀色の魔力が渦巻き始め、三人の人影が実体化しようとしていた。
「後三人の上級使徒が参ります。
人の子よ、己が偉業を誇りなさい。
貴方達を滅ぼすのに、五人の上級使徒を必要としたのですから。
これからこの部屋の力で、主はトータス全ての人間を魔力に変え、その力で悪魔を滅ぼし貴方達の地球を支配になられるのです。
主に敗北はあり得ません」
その言葉を聞きながら、やっと動けるようになるまで自己修復したノイントは、自分の理解出来ない行動を訝しがった。
なぜ自分は取るに足らない神官を庇ったのだろう?
神官を盾にして自分の機能を維持するのが正しい行動のハズ・・・、ああ、そうか!私がやりたかったコト、成りたかったモノ、それは・・・。
ノイントは流れ込んでくる想念から自我を形成している。
ではどんな想念が流れ込んでいたのか?
他の使徒もそうだが、基本神山に滞在しているノイントには特に当てはまるのが、神の御使いという者に対し、トータスの人々が持つイメージだろう。
キリスト教徒が持つ天使のイメージが近いかも知れない。
慈悲深く、善を助け、悪を挫く。
人々を温かく見守り、人々を滅ぼそうとする者を打ち砕く。
そうした想念からノイントの自我は形成された。
ならば為すべき事は、ただ一つ!!
ノイントはエーアストとツヴァイトに後ろから大剣を突き刺し、全ての力を振り絞り分解を掛けた。
信じられない物を見る眼でノイントを見て、胴体を分解され破壊された二人を無視して、恵里が叫んだ。
「ごめん、お兄ちゃん耐えて!
合体技を掛ける!
グラビティブラストを!!」
「グウウゥ」重傷のハジメも力を振り絞って立ち上がった。
七人の力を一つに合わせ、かって小島を消滅させたハイパーグラビティブラストが、三人の上級使徒と信仰吸収魔法陣をバラバラに引き裂いていった
最後の希望だった教会の魔法陣が破壊され、信仰の力を失ったエヒト神は悪魔に捕縛された。
だがエヒト神は戦争の敗北にも関わらず、泰然としていた。
肉体を持たぬ精神体であるエヒトは、悪魔の七王の前に強力な結界で囚われ、逃げる事が出来ない。
七王の玉座が臨時に据えられた謁見の間には御簾が張られ、七王のシルエットだけが見えていた。
悪魔側がエヒトを生かしておくからには、自分に何等かの値打ちを見出だしているのだろう。
ならば自分には幾らでも時間が有るのだ。
何万年先かわからぬが、いつか立場を逆転する事も不可能ではない。
そうエヒトは思っていた、悪魔達が浮かべている奇妙な笑みの意味に気付くまでは。
御簾の後ろから七王の一人、ルシファーの声が響いた。
「大公爵アガレスよ、此度の狩りに於けるそなたの功績は第一である」
畏まるアガレスにアスモデウスが功績の内容を讃えた。
「そなたはあの小娘から情報を引き出し、新天地トータスへの道を切り開いた。
そのお蔭で我等は再び肉体を取り戻し、子を成す事が可能となった。
更に小娘を働かせ、使徒とやらいう羽虫どもまで片付けた」
マモンが恩賞を告げる。
「その功績に報いたいがそなたは既に最高位の大公爵であり、これ以上爵位を上げる事は出来ぬ。
よって、そなたに今回の狩りの獲物を好きに切り分ける栄誉を与えよう」
悪魔達のどよめきと「ジュルリ」と舌舐めずりする音が響いた。
中世ヨーロッパに於いて、狩りの獲物を切り分けるのは君主の権利である。
臣下の誰に旨くて上等な部位を与えるか、好きに出来るからだ。
そしてこの獲物はただの魂では無い。
前代未聞の神の魂、それもトータスの無数の人々の苦しみ、怨念で真っ黒に染まった極上の魂だ。
少し味わうだけで、大幅にパワーアップする事は間違いない。
今後何万年生きようが、二度と味わう事が出来ない珍味なのだ。
それの分配を差配すれば、今後何百年にも渡り、悪魔貴族社会に絶大な影響力を及ぼせるだろう。
「勿体ない御言葉に御座います」
アガレスは満面の笑みで深々と七王に一礼すると、魂の切り分けナイフを持ちエヒトに近付いて来た。
悪魔達の笑みが深くなり、ギラギラとご馳走を見る眼でエヒトを見る眼、眼、眼。
「ま、まさか、私の魂を食べるというのか?!
やめろ!やめるんだ!やめてくれえ!!」
悲鳴を上げ、哀願し、無様に命乞いするエヒトをアガレスは嘲笑った。
「屠殺される豚ごときが陛下の御前でさえずるでないわ」
悪魔の宴が始まった。
エヒトは人として生まれ、神となり、豚として死んでいった。
エヒト戦役終結後、神域を新たな居城とした七王はトータス全ての掌握に乗り出した。
天空に神域から巨大な映像を投写し、エヒトの最後と新たな支配者としての君臨を告げ、各国に悪魔貴族が行くので、異議ある者は戦いを挑めと脳筋丸出しの宣言だった。
最初に見せしめとして選ばれたのはヘルシャー帝国だった。
たった一人のマルコシアス侯爵に王族貴族悉く叩きのめされたのまでは、悪魔側の予定通りだった。
トレイシー皇女が予想外の奮戦をして、マルコシアス侯爵に気に入られたが、それは問題では無い。
問題は最も強き者が皇帝になる、ヘルシャー帝国のルールだった。
気が付いた時にはマルコシアス侯爵はヘルシャー帝国皇帝に就任させられており、死んだ目で書類を処理している自分を発見した。
幸いというか、最強の帝国をたった一人で下した悪魔に表立って逆らう国は無く、遍く七王にひれ伏した。
悪魔側は人間の直接統治などという面倒を嫌がり、各国の支配層を中間管理職として残して統治を丸投げした。(除くヘルシャー帝国改めマルコシアス帝国。
なぜか上位悪魔が帝国に絶対来てくれないので皇帝陛下は負けて交代する事も出来ず、時々トレイシー皇妃に金棒で頭を殴らせ、これは夢でないか確認していたそうである)
悪魔が望むのは、エヒトに代わり人間の想念を吸い上げ、かつ恵里との契約に違反しないように、魂を食べる事が出来る死刑を言い渡された罪人を安定供給される事だ。
とりあえずイシュタル教皇を始めとする、神官達のかなりの部分がエヒトに与した戦犯として魂の供給源となった。
死刑を増やすため刑罰は厳しくなったが、冤罪をでっち上げられる事はあまりなかった。
独立した種族になった元使徒の天使族五十万人が、常に見張っているからだ。
「誰もいないと思っていても、どこかで天使がいつでもどこでも眺めているぞ」と悪人に恐れられる事になる。
天使達には何処かから、変身アイテムやステルスアイテムが供給された結果、「愛の戦士キューティーノイント」などと名乗り、悪人を楽しく成敗していた。
もちろんパラディサンの布教の成果だ。
純真な天使達は格好の餌食だった。
なおノイントは後日元ネタを知り、引きこもってしまったそうである。
ハイリヒ王国は国王が引退、リリアーナが女王として即位し、光輝は多くの人々を救った功績で王配として認められた。
その傍らには常に神子の巫女が支えていた。
光輝が思い込みで悪い方へ行きそうな時は、シアが先回りして修正するので何とかなっている。
王国の多くの土地が放射能汚染されたが、愛子先生が植物を使い、放射性物資を吸着させ除染していった。
彼女は地球帰還後、国内のみならず、チェルノブイリなど世界中の汚染地域から引っ張りだこになる。
清水はティオを伴い、いったん地球に帰還したが、トータスに移住予定だ。
改造人間にはなったが、責任は別の形で取る事にしたそうだ。
解放者達はエヒトの最後を見届けたが、悪魔の動向に不安があるため、まだしばらくはゴーレムの身体で存在し続ける事にした。
ミレディは恵里の嫌がらせのセンスが気に入り、ウザさの後継者にしようとしたが、ハジメが嫌がったので断られてしまい、今度はシアを狙っている。
エヒト戦役の後始末もそこそこに、恵里達は悪魔の造ったゲートを通り、地球に戻った。
日米英三国による、この事件の全世界公式発表のため呼ばれたのだ。
発表会の段取りを聞かされた、恵里と雫とクラウディアは絶望し、壁に頭を打ち付けた。
全世界同時中継のテレビカメラの前で変身を披露し、ネコレンジャーの姿でインタビューを受けなければならないのだ。
「アアアアァ」「恥ずかしくて生きていけない~」「浩介さん、私もうだめかも」
頭を打ち付けながらゴロゴロのたうち回る三人に、リーゼロッテが呆れ顔で言った。
「あなたたち何を騒いでいるのかしら?
コスプレイヤーにとって最高の舞台じゃないの?
どうしても嫌なら、未成年を理由に仮面を着けてボイスチェンジャー使えば良いだけじゃないの?」
「「「ソレだー!!」」」
何とか気持ちを立て直して、参加した三人に渡された仮面は愁の会社の新作ゲームのキャラのだった。
このゲームは出来は今一に関わらず、空前の売上を記録した。
三国同盟による発表は、世界に凄まじい反応を引き起こした。
その圧倒的多数の反応は三国同盟への強烈な非難だった。
地球の代表に選ばれた訳でも無いのに、勝手に人類が初めて接触した異世界と戦争を始め、核兵器まで使用した。
勝つためとはいえ、悪魔と手を組み、トータスの人類を悪魔に売り渡したと非難された。
エヒトの邪悪さについては、証拠は信用出来ない。
悪魔がでっち上げた物だと叩かれた。
中国とロシアはアメリカを非難出来るチャンスを逃さず、EU諸国はイギリスがEUを離脱したのは異世界の利権を独占するためだったのだと邪推して非難した。
非難する国々は国連を大義名分に、三国に対しトータスからの撤退、国連による査察と門戸解放を要求した。
そうした国々も要求が受け入れられるとは思っていない。
三国が拒否したら非難するネタにして、少しでも異世界へのアクセスを手に入れるつもりだった。
彼等の計算違いは反発の強さを読み違えた事である。
中国情報当局内からの大量亡命と大粛清が無ければ、ここまで事態が悪化しなかったと言われている。(課長が逃げ、それを予測していた幹部達も逃げ、怒った総書記が粛清始めた)
これに強烈に反発したのはアメリカ国民だった。
邪神から世界を、人類を救ってやったというのに、何もしなかった国々がイチャモンを付けて、利権を掠め取ろうとしていると受け取った。
アメリカ国民は、国連(直訳すると連合国)など自国が昔造ったつまらない組織ぐらいにしか思っていない。
飼い犬が手を噛むというのなら、そんな犬はいらぬ。
いやそもそも一つ一つが地球サイズの多数の異世界との通商が出来るのならば、地球の国々との関係維持は必要だろうか?
アメリカは国連からの離脱を決断、日英を巻き込み新たに地球連邦(テラン)を結成した。
随分派手な名前だが、異世界と外交をするのに地球を代表している名前が必要だったのだ。
地球連邦(三国同盟)対国連(連合国)の冷戦構造が誕生した。
いや地球連邦は地球上の国々を無視したというのが正しいだろう。
三国は異世界に経済進出を全振りし、地球内の資金の流れがおかしくなり、経済混乱が広がっていった。
中国とイギリス抜きのEUだけでは全地球の必要とする資金を賄えなかった。
三国は異世界から資源を輸入するようになり、地球上の国々から買わなくなったため、資源価格が暴落しロシアを始めとする資源国は困窮した。
オイルマネーも減少し、資金不足に拍車が掛かる。
異世界の国々のほとんどは魔法を中心とする技術体系のため、地球が必要とする資源のかなりを使っていなかった。
そして接触出来た異世界はどこもかなり悲惨な状況になっており、切実に食糧を必要としていた。
アメリカの膨大な余剰食糧が輸出され、代価として安価な資源が輸入された。
その分地球の食糧価格が高騰し、中国にダメージを与えた。
日本は好景気に沸くアメリカ市場を他の国抜きで独占し、肉体を持ったはいいが、必要な生活用具がまるで無い悪魔に輸出していた。
国連諸国は資金不足、食糧不足、資源は売れず、軍事費増大に喘いでいた。
戦争に訴えようにも、三国は開発に成功した拡散グラビティブラスト砲台に守られ、弾道弾攻撃も効かない。
媚びを売ろうにも、アメリカは非難に加わった国々を絶対に許さなかった。
後世の歴史家は地球連邦結成を日米英鎖国時代の始まりと書く事になる。
その後リーゼロッテは売り込みに携わり、悪魔に色々な「文化」を広め、パラディサンとメイド教を布教している。
クラウディアとリーゼロッテと浩介はお互いに分身を分かち合い、いつも一緒にベタベタしていた。
まるでバルタン星人のように、しょっちゅう分身が造られては消えるので、回りのみならず本人達も混乱していた。
いつも賑やかすぎで笑顔が絶えない家だ。
一方恵里はこの政治の激動のせいで、誘拐やら暗殺やら散々来て鬱陶しいので、南の無人島を買って南雲家専用リゾート兼ハジメの秘密基地に造成して一家で移り住んだ。
島の周囲は結界を張って異界化したので、外から入る事はおろか、見つける事も出来ない。
日本との間は転移ゲートを繋いであるので、仕事も買い物も困らない。
日本で動く愁と菫のために、護衛がいるのでノイントを雇った。
命の恩人であるノイントが、悲惨な境遇にいるのに腹を立てたハジメが、何度も何度も訪れて、黒歴史を誰も知らない場所で、一からもう一度やり直そうと熱く説得して口説き落とした。
別の意味でも気付かないで口説き落としてしまったようだが、ハジメだから仕方がない。
雫はエーアストからハジメに命懸けで救われた事で完全に堕ちた。
お姫様みたいに守って欲しいという願望を叶えて貰えたのだ。
恵里は雫を大歓迎で迎え入れた。
元々恵里は何度も助けてくれた雫だけは仕方ないと思っていた所に、ハジメとの夜を一人で受け持つ身体の負担に耐えきれなかった上に妊娠したのだ。
近くのサンゴ礁の無人島でのハネムーンで毎日毎晩愛されれば時間の問題だった。
ハネムーンで普通の観光地?旅客機には爆弾、食事には効きもしない毒や睡眠薬、自爆テロのオンパレードは御免である。
その後エクスカリバー、ノイントとやっとハジメにデレて来たユエが家族に加わり、産まれた子供達が賑やかした。
焦った香織はどんな事でもするので、ハジメの所に来たいとごねたので、魂魄魔法で恵里とハジメの人生を前回込みで追体験させ、自分がどう見られていたかたっぷり理解させた上で、渋々受け入れた。
その後の歴史の断片を記す。
大公爵アガレスの手記より抜粋。
どうして、こうなった?!
悪魔の未来は揚々とした物だった筈だ。
我等の世代は小娘との契約に縛られているが、新たに産まれた世代は縛られておらぬ。
若者が当主に代替わりすれば、地球を征服してトータスの人間共の魂と地球人の魂の味を食べ比べて楽しみ、全ての世界に君臨する栄光の未来が訪れる筈だった。
それを今の若い連中ときたら!
なにが魂を食べるなんて野蛮だだと!
トータスの人間共を慈しみ、地球と仲良く文化の花を咲かせましょうだと?!
挙げ句の果てに人間のメイドと駆け落ちだとう?!ふざけるなあ!!バカ息子があ!!
あんな百年も保たず、すぐ死ぬカブトムシと変わらん下等生物の何処がいいというのだ!
最近は七王陛下まで毒されてきて、生類憐れみの令とやらを出すという噂!
悪魔は?!我が家はどうなってしまうのだ?!
アガレスは最後まで気付かなかった。
恵里の置き土産の対悪魔用言語兵器が散りばめられた様々な作品がトータス全土にバラ蒔かれていた事を。
メイドが歌う子守り歌に、歌手が歌う恋歌に、兵士の軍歌に言語兵器が潜んでいた。
偏屈で人付き合いの悪いアガレスはまだ感染していないが、外に出たがる若者は全滅である。
皮肉な事だが悪魔が霊体だった時は脳が存在しないため効かなかった言語兵器は、受肉して無敵な程強くなった悪魔達を総嘗めにしていた。
言語兵器は脳の言語中枢をウイルスプログラムのように犯す純粋物理兵器のため、魔法防御無効で悪魔達の脳に入り込み、常識を書き換えていった。
悪魔達が詩を楽しむような高度な文化を持っていれば、気付けたかも知れないが、大戦で文化のほとんどを失った悪魔には無理な話だった。
??「歌はいいね。
心を癒してくれる文化の極みだよ。
プー、クスクス、リーゼロッテにメイド本バラ蒔かせた甲斐があったねえ♪
アンノウンをけしかけてくれたお礼だよ、ザマア♪」
リーゼロッテは檻の中の熊みたいにウロウロして、クラウディアに窘められた。
「お姉様、いくら待望の浩介さんの出産だからといっても、少しは落ち着いて下さい」
「だって、やっとまた浩介に会えるのですわ。
この日をずうっと待っていたのですわ。
皆いなくなってしまって寂しかったのよ。
あの根性曲がりでさえ懐かしく思えますわ。
クレアだって待ちきれないでしょうに。」
「人目があるから、恥ずかしいと言っているんです!!」
二人は産婦人科の建物の前でウロウロしていた。
老衰で亡くなった浩介の生まれ変わりを、長きに渡り待ち続けていたのだ。
もちろん、見ず知らずの人ん家の子供なので、出産には立ち会えない。
二人の地獄耳イヤーが産声を捉えた。
「イヤッホー、産まれましたわ!!
あ~、これでまたあの甘い日々が帰ってきますわ!
こっそり浩介の魂をわたくしの魂と鎖で結んでおいた甲斐がありましたわ!
赤ちゃんや幼児時代の浩介は写真でしか知らないですけど、リアルで見て愛でる事が出来るなんて夢のよう!!
ショタサイコー、今な亡き同志パラディの言葉は正しかったデスワ!!」
通りすがりの小学生低学年ぐらいの女の子が一言言って走り去った。
「キモッ、変なオバサン」
「なっ、なんですってえ!!」
「お姉様!だから言ったじゃありませんか!
人前で騒ぐのはやめて下さいって、私言いましたわよね!
ここはコミケ会場じゃ無いんですよ!
お姉様わかったって、言いましたよね!
見にいくのは、後でこっそりです。
でないと、浩介さんの家族に嫌われてしまいますよ!」
「わ、わかりましたわ、それにしてもさっきの子供、何処かで見たような?」
女の子は公園に走り込むと、年上の男の子に飛び付いた。
女の子は友達がいなかった。
他人と違う身体のため、親も同級生も女の子を避けた。
家は裕福なため、食事は与えられたが宅配の物ばかりで、親は無関心だった。
だから女の子を避けず、普通に話してくれた初めての相手に執着したのだ。
男の子と手を繋ぐと灰翼を拡げ、砂場目指して跳ぶように二人で駆けていった。
女の子は己が半身と再び出逢った。
実は恵里が買った島が南アタリア島(マクロスの最初に監察軍の宇宙戦艦が墜ちる島。
それを奪い合う人間同士の戦争が始まる)というネタも有りましたが、蛇足かと思ってやめました。
子供にハジメの主人公補正が受け継がれたため、ハジメと恵里は平穏な人生を送れるでしょう。
その分、子供の方は超電磁砲の主人公並みに苦労しそうですが。
多分アガレスの子供あたりとつるんで暴れているでしょう。
次はリクエストの有りましたこの二次のR18を短編で、その後は別の恋姫✕まどマギのクロスオーバー予定です。
短編はハジメと恵里のぼかして書いた結婚式の話で、これだけ凄まじいステータスと特殊能力を持った者がしたらどうなるかという話になる予定です。
新作は例によって、滅茶苦茶展開が原作と変わる話になります。
戦の無い恋姫、魔法少女にならないまどマギ、需要があるかわかりませんが、興味のある方はどうぞいらっしゃいませ。
あっ、敵やキュウベエはちゃんといます。