本日の公演はオセアニア真理省の提供でお送りします。(嘘)
およそ綺麗な表有るところ、裏も有る。
南雲家がスムーズに恵里の養子縁組が認められた美談も例外ではない。
当初、全ての親戚から引き取りを拒否された恵里は、児童養護施設に速やかに引き取られる筈だった。
雲行きが怪しくなったのは、取り調べを受けていたヒモ男が無実を叫び、恵里への復讐を叫んでからである。
大の大人が小学生に返り討ちに会った珍妙な事件として、マスコミに大きく取り上げられ、男の復讐を叫ぶ姿も何度も報道された。
ヒモ男は出所後のお礼参りを公言し、反省無しとして法律上での最大限の刑期が課せられる見込みとなった。
問題はヒモ男の罪状がほぼ未遂の物ばかりである事だ。
強姦も暴行も未遂、実行したのは服を破った器物破損と脅迫ぐらいで、これでは最大限に適用しても、一桁の短い刑期になってしまう。
これで児童養護施設側は子供達がお礼参りの巻添えになる事を恐れ、腰が引けた。
そのうえ恵里が自傷行為をした為、その動きは決定的になった。
恵里が自殺した場合に責任を取らされるのを恐れ、収容人員や予算に余裕が無いと理由を付けて押し付け合いを始め、恵里の行く先は宙に浮いた。
困ったのは病院である。
疫病神と化した恵里から親戚も施設も全て逃げ、引き取り先が存在しないのでは放り出すわけにもいかない。
自傷行為を理由に精神病院に押し付けを考えたが、さすがに寝覚めが悪い。
そこで一縷の望みをかけ、以前見舞いに来た南雲家に事情をぶちまけた。
両親はさすがに悩んだが、ハジメと菫もターゲットになる可能性が高い事と、ハジメが泣かんばかりに引き取りを主張した事が決定打となり、引き受けた。
両親も関わる義務は無いといっても、息子が一度助けた女の子が殺されたのでは寝覚めが悪すぎた。
無論、警察に出所の日程をこっそり流して貰う事を確約させ、その後はパトロールを重点的に行う事を依頼した。
更に警備会社との契約や家の戸口や窓の強化を行い、更にハジメと恵里に警察紹介の道場で護身術を習わせることを予定し、万全を期した。
多大な経費が掛かったが、父親は社長で母親は売れっ子漫画家で余裕があったことで、なんとかなった。
一方、ヒモ男はその後刑務所に収監されたが、囚人達から徹底的な苛めを受けることになる。
犯罪者、特にプロ犯罪者は法律というルールは無視するが、彼等にも彼等なりのルールがある。
力を重視するがゆえに、度胸のある行動を尊ぶ。
そんな彼等から特に蔑まれるのが、幼女への暴行だ。
度胸が無い臆病者だから、抵抗する能力の無い幼女を襲うしか出来ないのだと、半端者と見なされるのだ。
このヒモ男の場合、もっと立場が悪かった。
なぜならたった一人の小学3年生を襲って、返り討ちに会ってツブサレタからだ。
信じがたいマヌケとして、嘲笑、侮蔑され、刑務所内のヒエラルキーで最下層になるのは当然だった。
毎日のように苛めを受け続けたこの男は、恵里への復讐を唯一の生き甲斐とすることで、なんとか正気を保つこととなる。
「殺す!殺す!殺す!俺を嵌めた事、生まれてきた事を後悔させてやる!」
いや、この状態は狂気と言うべきなのかもしれなかった。
周囲の目、裏回