恵里は今日も壁に頭を打ち付ける(完結)   作:コミッサール

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エリリン劇場第八幕をお送りします。
これでストックが切れるので、次の公演は時間がかかりますので、しばらくお待ちください。


第八話 ニンジャってナンジャ

ハジメと恵里は両親に連れられて、警察に紹介された八重樫道場を訪れて、・・・困惑しきっていた。

ハジメは首を傾げた。

(どうして、道場の人達は皆お揃いの変な黒い服着て覆面してるんだろ?

紹介してくれた警察の偉いオジサンまで服は制服だけど覆面してるし、訳が分からないよ。

おまけに父さんも母さんも奇声をあげて一緒に踊り出したし、ここ本当に大丈夫なのかな?)

困惑しているハジメと恵里に道場主の八重樫鷲三が話しかけた。

「話しは聞いたよ、ハジメ君、恵里ちゃん、逆恨みした愚か者と闘うため、剣道ではない実戦的な護身術を学びたいとの事、ならば忍術が最適だ。

最初はまず身体をつくるため、剣道の皆と共に鍛練を一年間してもらい、その後忍術の修行に入るとしよう」

そして、フッと笑い、ヒュパッと天井裏に消えた。

 

ハジメはパチパチと拍手し、恵里はコテンと首を傾げ、無表情に聞いていたが、内心は荒れ狂っていた。

(アイエエエー、ニンジャ、ナンデ、今の時代にイルー?!)

その場ではショックが大きすぎて、口もきけなかったが、家に帰り、頭を壁に打ち付けて夢で無いか確認すると、幾つかの疑問が生まれた。

(夢みたい、夢みたいだけど、夢じゃ無い。

ああ畜生、光輝君と一緒に通えると思って、浮かれていたらこの有り様だよ。

まてよ、前回八重樫の奴、忍術なんか使ってなかったよね。

隠してた?イヤ、そんな余裕有るわけないだろ。

まさか、この世界が前回と違う平行世界て事はないよな?

八重樫と接触して確認しなきゃ。

後、漫画ネタぐらいに思ってたニンジャが実在してるなら、他のトンデモネタと思っていた物も実在してる可能性がある?

UFO、超古代文明、超能力、神、悪魔、魔法、・・・・・何を馬鹿な事言っているんだボクは?

神も魔法もボクは実在を知っているじゃないか。

そうだ、こちらの世界でも魔法が使える以上、魔法が地球にも存在していたのは確実だ。

という事は、他のも実在している可能性は充分有る。

ヤバイ、これだけネタになっているのに、ほとんどの人達が信じてないって事は情報操作か意識操作されてる?

危ない、危ない、危うく地雷原でタップダンスを踊る羽目になるところだった。

クソッ、後で情報収集キッチリやらないと、どこかで足をすくわれるぞ

逆にそういう存在とエヒトの脅威を理由に手を組めれば、切り札が増やせて大分楽が出来るかもしれないね。

ヨシッ、今はまだ絵に描いたモチだけど、悪くない。

いずれにせよ、こんなガリガリの身体じゃ話しにならない。

たくさん食べて、運動して身体をつくるのが第一だね)

 

 

恵里とハジメは道場で剣道の入門者達と鍛練に励んだ。

元々高レベルの恵里は少しずつ力を取り戻し始め、ハジメはいずれ襲い来る事が確定している犯罪者から必ずや妹を守らんと、鬼気迫る様子で毎日他人の何倍もの時間を鍛練に費やしていた。

 

此処から問題が発生してしまった。

同期の入門者達の中で最も才能があるのは、当然光輝であり、前回もトップを走っていた。

しかし才能があるという事は、謂わばキャラクターの経験値に成長ボーナスが有るような物である。

逆に言えば、成長の初期段階であればまだ大きな差が無いため、特定のキャラクターだけプレイ時間を増やす事で強さをひっくり返す事が可能だった。

結果、ハジメという亀が光輝という兎に勝利してしまった。

これが、小学生時代でなく、もっと後だったら勝つ事は不可能だったし、ハジメ亀が何年間も剣道をやっていたら、やはりいずれ追いつかれ敗北しただろう。

だがハジメ亀は、一年後には忍術修行に移ったため勝ち逃げしてしまった。

これを光輝兎の立場から見れば、道場でヒーローになっていたら、突然中途で入って来た余所者があり得ない速度で強くなり、自分をボコボコに負かして去っていったという物である。

まるで道場破りである。

おまけに道場の師範達から特別扱いを受けているように見える。

当然光輝兎はハジメ亀をひどく嫌うようになり、ハジメ亀の妹であるという理由で恵里亀も嫌うようになってしまったのだ。

これが前回の「勇者」化した光輝兎だったら、正義に基づいて恵里亀まで嫌うのは自制していたろう。

だが、現在の光輝兎は恵里亀を「救った」経験をして居らず、謂わばスネ夫君でしかなく、意固地になっていた。

道場で、光輝兎との仲を深めようと企んでいた恵里亀にとっては大誤算、涙目である。

恵里亀は光輝兎に懸命に媚びて、関係を修復しようとしたが、ちっとも上手くいかなかった。

このぐらいの年頃の男の子が、好き嫌いで意地を張るのはよくあることである。

 

(ウウウ、どうして、こうなった?

恋愛ってこんな難しいモノだったのか?

前回のお兄ちゃんなんか、息を吐くように次から次へと落としてハーレム作ってたのにい。

ええい、焦るなボク、まだ時間はたっぷりあるし、リカバーは充分可能だ。

それに、どうにもならなくなっても、縛魂という最後の切り札が有る。

最後に笑うのはこのボクだ)

 

ここで恵里に、第二の誤算が発生する。

恵里が一生懸命光輝と仲良くしようとしているのに、理不尽に嫌われ続けている状況に雫が怒ったのだ。(ハジメは恵里に強く釘を刺されていたので、動けなかった)

親から恵里の境遇を聞かされていた雫は、元々恵里に深く同情していた。

これまでは親に口止めされていたので、道場の皆に説明できず、依怙贔屓と思われないように介入を我慢していた。

しかし嫌われても、嫌われても、光輝と仲良くなろうと下手に出ていた恵里に、暴言を光輝が吐いたので、我慢の限界に達したのだ。

雫が光輝に事情を説明して散々説教し、光輝が恵里に謝罪して手打ちとなったが、わだかまりが残り、雫と光輝の間は疎遠になった。

逆に雫と恵里、ハジメは仲良くなり、雫はよく恵里やハジメとお喋りするようになった。

特にハジメは雫が恵里を庇ってくれた事を恩義に感じ、好意的になった。

雫はハジメから恵里の事をよく聞かされ、恵里の悲惨さに比べれば、自分の悩みなど贅沢な物だと考える様になっていった。

見違えるように素直に感情を見せるようになり、明るく変わった雫。

そうした付き合いの中から、雫がニンジャの事を教えてもらっていない事が分かり、雫の家族にハジメが直訴して、雫もハジメ達と一緒に忍術コースに入ることになった。

雫の天職が剣士になる事はもう無いだろう。

 

(あれえ?結果的に光輝君からライバルを一人ひっぺがす事に成功したけど、ボク何もしてないんだけど?

これがバタフライ効果って奴?

マズイなあ、前回の知識が役立たなくなってきている。

これからの戦略を一度、根本的に見直さなきゃ。

まあ、雫がニンジャ知らなかったのは家庭の事情だとわかったから、平行世界じゃ無いと、安心できたのが最大の収穫かな。

プラスもあれば、マイナスもあったけど、今の所は悪く無い。

先は長い、一歩一歩進んで行こう。

 

ところで、恵里ちゃん守り隊てナニ?

お兄ちゃんも雫ちゃんも、恥ずかしいから変なもん作らないで!)

 

 

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