聖女は死んだッ! もういない!!!   作:おーり

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ゴリゴリのチョッパヤで仕上げた3話目
おまえの事が書きたかったんだよ!という主人公くんの詳細
オリジナルはオリジナルですけどもー、という男子です


クロスオーバーの その先

 【煌咬縅凱(こうごういがい)・シャングリオン】、それが熨斗柄 燦の手にある【魔神機】。

 正しくは幾体もの魔神機が戦いの果てに統合を果たした、この世に2体のみ現存する【統合機】である。

 

 銀座事件が起こるより僅かに先立って、ある中学生らが修学旅行中にひとクラスだけ行方不明となった。

 彼らの行方が判明するよりも先に異世界との邂逅が成され、大きく被害を齎された日本にとっては33人の中学生が消えた『程度』の事件は早々に人々の戸口から立ち消えていったのである。

 

 燦はそんな被害者(彼ら)の中から唯一こちらへ戻って来れた只一人の【帰還者】だ。

 彼の証言によって彼らが連れ去られた先が似た様に『異世界』であると判明したことで、政府は彼らの事情と燦の身分と立場を隠蔽することに決めたのだ。

 

 無論、そうすることで生じる様々な摩擦や誤解、例えば被害者遺族への配慮などという些末ながらも重大な問題に『正面から向き合う気が無い』という中々に下種で無礼な勘繰りも招くような選択を取ったのだと伺えよう。

 しかし其処には倫理や人道に反しながらも、呑まねばならないほどの衝撃的な事情が絡んでいる為であると断言できるはずであった。

 

 

 異世界へ拉致された中学生らが遭遇したのは、【アマデウスコード】なる唯一神へ至る為の試練の闘技場。

 年端も行かぬミドルティーンに課せられた試練とは、『神の力』をも凌駕する巨大ロボ【魔神機】を駆りて、ひとつの次元を横断するほどの広大な闘技場で、殺し合いと蟲毒を強いられる喰い合いの連鎖によるバトルロワイヤルであった。

 

 魔神機は1体1体が数多くの神の『嵩ね合わせ』の果てに形成された、絶大的な質量とエネルギーの具現だ。

 それらが残り2体になるまで統合されたそれは、片方だけで恒星に匹敵するほどの存在性をその形へ押し留めているに過ぎない。

 シャングリオンは事実、太陽と同等の質量とエネルギーを『機体』という枠に押し留めている状態である。

 概念とかエネルギーの一端を引き出したとか、『よく耳にする』程度では収まらない『そのもの』こそがそれなのだ。

 

 その機体を駆る以上、不可能なんて事象は無い。

 何せ元来魔神機の操縦者、彼らは【同調者】と呼んでいるが、その同調者になった時点で魔神機が傍に居なくとも性能と性質を遠隔的に引き出すことが出来る。

 そしてシャングリオンは全長200メートルの所謂『巨大ロボ』だ。

 巨大ロボの操縦者にまで隙が無いことは、完全に自明の理であった。

 

 尚東京タワーより低いとはいえ直立されれば目立つのは仕方がないので、現在は自衛隊の演習場をなんとか空けて横にして安置している。

 初めは光学迷彩(機体能力などではなく『そう出来る』ことも可能な性能)で姿を消して山にでも体育座りで控えさせておこうか、との声が(本人)から出たのだが、それだけの巨体で姿が見えないという方が国側が不安を抱くとの意見で現状である。

 ちなみに調査に関してはゴリゴリ削って構いません、との許可まで下した燦であったが、本体の多少の傷程度なら放っておけば再生するからとの認識での許可であった。尤も、幾ら工具で削っても欠片もどうにも剥がれず劣化もする気配もないのが現実であったので、燦の配慮は些か無意味になってしまったのであったが。

 

 もうひとつちなみに云うと、魔神機は同調者が呼べばすぐさまいつでも物理的に飛んで来る。

 瞬間移動も斯くやという光並みの速度で巨大建造物が飛来するので、同調者だけは守られるが周囲への影響は計り知れない被害を齎す。

 つまり呼び出せばIS学園が死ぬ。何気に何時でも押せる爆発物の起動スイッチを片手にしたよりも『酷い』危険人物が、無事入学を果たした瞬間であった。

 

 

 最後の1体になるまで、つまり【アマデウスコード】へ至る事こそが彼らの闘争の理由であった。

 だが燦は、その最終戦に臨む前に次元より弾き出された。

 唯一残った『友人』と対峙することなく、最初で最後の裏切りを受けたのである。

 

 だからこそ、彼はもう一度アマデウスコードを目指さなくてはならない。

 現状でどのように強大で絶対的な存在と性能を誇って居ようとも、それは逃れられない宿命にも似た矜持なのだ。

 だからこそ燦は遺るもう1体の統合機【跼天残照(きょくてんざんしょう)・ポラリウス】とその機体の同調者たる『友人』に再び出会うために、異世界探索の枠を自ら手にしようとしていたのだから。

 

 

 そんな彼は、目の前に現れた女神を名乗る少女に困惑していた。

 ちなみに死闘の末に仲間になりつつも強大な敵相手には咬ませになるような斃され方をしそうであった車田墜ちで吹っ飛ばした少女もまた『少女』だ。

 年上っぽい感はあるのだが、少年から見ようとも学園に通う年頃である以上は『少女』というカテゴリで問題は無いのだ。

 なので彼女の喩えは『少女』でも間違いはない。

 

 問題なのは、彼女はそんな自信満々に決済を降せるような立場にいるのだろうかという懸念だ。

 学園最強が云々、と車田墜ち少女がなんか言ってた気もするが、燦にとっての絶対的なライバルであり『敵』とは『友人』オンリーだ。

 こんな狭い世界(学園)のサル山を気取る気は毛頭無く、どちらかと云えば伊丹耀司という『英雄』が勤務するから着いてきたというスタンスの方が強い。

 別にホモではない(直球。

 

 で、だ。

 

「……とりあえず、アンタなんの神?」

 

 実のところ、神云々と云う部分には疑いの目は向けていなかった。

 氾濫からこっち、人間に概念存在や英霊をぶち込んだ存在は珍しくも無い。

 そもそもが『そういうの』を改めて集めたのが此処だから、かつての偉人や艦隊を名乗る少女が居ることくらいは燦も把握していたのだから。

 しかし、彼女は名乗った『アクア』と。

 

 そんな神は聴いたことも無い。

 

「水の女神アクア様よ! さぁ崇めるが良いわ!」

「直球過ぎるでしょ、宗教はもっと細分化して表してるのになんで大雑把に全部乗せを造るかな……」

 

 本日のお前が云うな、であった。

 『太陽そのもの』を扱えるヤツがなんか言うとる。

 

 改めて云っておくが、燦に信心は無い。

 そも本当に宗教的な神として何らかの守護者が居るのであれば自分たちが拉致られることがそもそも起こっていなかったであろうし、概念とかエネルギーの『格』を樹立させ『神』として擁立した33体の巨大ロボでバトルロワイヤルを遣る破目になったのだから。

 これで神を崇められるとなったら最早狂信者を通り越してサイコである。

 付け加えるならば、燦は神を『崇める方』ではなく『操る方』に値するのも加味されるが。

 

 燦は生き残るために、それらが『どういったものなのか』を学習するだけの下準備は欠かしてこなかった。

 そうした知識の大元は『友人』準拠なのだが、色々と凝った趣味にも傾倒していた彼からすれば魔神機の名前や特徴だけで『これこれこういう神でこんな逸話が』と諳んじることも容易かった。

 尚其処は異世界であったのだが何らかの近似性まで備えていたのかそれらの知識が無駄になることは余り無く、幾体もの魔神機を統合して往き装備や大きさが変化した中で其処に命名を嬉々として応用利かせたのも『友人』である。

 『友人』がこの世界へ戻って来ていれば、英霊や艦隊や航空機なんかの人類史に様々な小噺(詳細)を掻い摘んで貰えたのであろう。

 燦の『友人』は異世界漂流に強すぎる。

 残念無念ながら、燦にも実のところあまり興味も薄いカテゴリであるので、『そちら側』は邂逅でもしない限りは資料頼りであったが。

 

 話を戻すが、而してそんな『友人』の影響は少なくなく、此方の世界の【古今東西神様の名前】に多少は詳しくなったのが今の燦だ。

 シャングリオンで斃し統合した機体の中にも水系の神を冠する神格があったりもしたので、同じようなモノに遭遇する可能性も踏まえて改めて学び直した事項でもある。

 そんな数多くの神格の中には、彼女が名乗ったような直球過ぎる名前を付けた神なんぞ聴いたことも無い。

 

 まあ、そんなお蔭で『対峙』ではなく『呆れ』という精神性で迎えてしまえたのは未だ幸福な方なのだろう。

 女性権利団体が仕掛けたのかと僅かな疑いを抱きつつ完勝した試合直後に『自称神』に吶喊掛けられたのだから、下手をすれば問答無用で天高らかに巨大ロボを呼び出していても可笑しくない。

 幾体もの神を降し下にこそ見ていても、決して侮っては居ないのが燦という少年である。

 ちなみに斃した魔神機の名前は【水豪氷星・ネプチューヌス】だが余談過ぎるので割愛する。

 

「彼女はフランスの川の女神よ……」

 

 よろり、と立ち上がりつつ語るのは先ほど撃墜した車田墜ち少女であった。

 

「もう一本逝っとく?」

「軽いノリで試合を誘わないで頂戴、エネルギーが足りないから今日はもう無理……」

 

 ところでISのエネルギーとは何を使用しているのだろうか。

 電気ならば交換性能が頗るオーバーテクノロジーな産物なのだが、原子力とか答えられるとまた別の団体からヘイトを集め兼ねない。

 未知のエネルギーだとしても猶更だ。玩具に転換してないでもっと有効に活用しろとしか言いようがない。

 

「出来れば神としては紹介を求めたくないんだけどなぁ……」

「……? あぁ、そっか、そういえば普通の認識だとそうなるのよね。でも、この学園じゃ『そう』呼ぶのが常識になっちゃってるから、其処は了承して貰えないと会話も面倒くさいわよ?」

 

 数多くの神格や霊格や概念をそれぞれ混ぜたとはいえ、そういった存在らは指折りとまでは行かずとも限りの在る『歴史』だ。

 なので『量産』も見込まれているし、実際に適用された者もあったりする。

 全員の容姿がそれで一律に収まるということは流石に無いが、神格によっては比較の難しい方向に似通うことがままあったりも。

 特に艦隊の少女らや、伝説の武器を身に収めた少女らは顕著だ。

 彼女たちの様な『戦闘型』は日本各地の『危険地帯』に率先して配備されているので、連絡を取り合うと同じ顔をした少女らが互いに居る状況も偶に起こるらしい。

 

「まあいいや。で、このヒトにそこまで権限が?」

「ないわよ」

 

 ないのかよ。

 懸念が消えたのは良いが、ならばこの騒動は何なのかと燦は辟易とする。

 

「信者を集めないと神レベルの娘たちは実力を底上げできないし、最悪『揺り返し』で権能まで喪失することもあるらしいわ。彼女は結構マイナーな女神を降ろしているから、潜在的には強いけどそれを発揮するための下地が足りてないのよね」

「信仰心不足かぁ……」

 

 可哀そうなモノを見る目で、青髪の少女を見つめ直す。

 へぅぅ、と自称『アクア様』は一歩下がった。弱い。

 

 そもそも、それが狙いならば信仰心の欠片も無い燦では完全に役不足だ。

 誤用的な意味で。

 

「あと彼女クラスメイトなのよね。そこそこ私相手にも突っかかってくるから、私を降した貴方を自分の派閥に加えれば手っ取り早く底上げできると思ったんじゃないかしら」

「どちらにしても浅はかすぎる」

 

 女子のマウントの取り合いに巻き込まれた男子の気分だ。

 間違ってはいない。

 

「ふ、ふん! そこまで言われたら引き下がれないわね! 貴方私を崇める信者になりなさい! 今なら宴会でちょっと盛り上がれる水芸も覚えられるし、この『飲める洗剤』も付いてくるわよ! 転校生がデビューするなら宴会は必須よね!?」

 

 解説する車田墜ち少女に怯んでいた自称女神であったが、特別欲しくも無い特典で篭絡に懸かって来た。

 転校生、確かに間違ってはいないのだが、燦としてはやや仕事寄りの編入なので其処までの意識はない。

 

「其処まで勧誘するなら、大雑把な『水の女神』を自称するんじゃなく正確な『神名』で誘ったらどうなの?」

 

 なので直接断るのではなく、彼女たちが正しく成長できるような正論で糺すことにした。

 一応は『折るな』との命だけは受けているので、不完全燃焼を避けるのが燦なりの『促進』である。

 

「せ、正式名称……?」

 

 まさか知らないということもないだろう。

 勢いの緩急が激しすぎる少女は、若干恥ずかしそうに身を引き始めていた。

 

「な、なんのことかしら? 私は水の女神よ? 人々の安寧と命を司る流れゆくように透き通った、」

「正確に水神ならビッグネームがゴロゴロしてるんだ、安直なAQUAで押し通せるほど神社会は甘くないぞ」

 

 此れまでの彼女の勧誘は、傍から見ても偽名でコミュニケーションを執ろうという詐欺師の所業だ。

 はよ名乗れや、とせっつくのも無理の無い話である。

 

 ちなみに両性具有どころか無性の【クタァトアクアディンゲン】が今のところ『神会』の最大信仰だ。

 日本では無くアメリカでの実存最前線少女だが、同率系統の【クトゥルー】は成長途上らしいので。

 

「……名乗らないんならこっちに訊けば良い話じゃないか?」

 

 ぐぬぬ、と何時まで経っても切り出そうとしない『アクア様』から、車田墜ち少女へと水を向けた。

 ちょ、あっ、と止めようとする女神を尻目に、苦笑した彼女はあっさりとネタバラシを敢行するのであった。

 

「彼女は【ボイーン】、フランスの古い『川の女神』を降ろされた娘よ。潜在能力はあるのよねー」

 

 洗剤(潜在)だけに……?

 益体も無い冗句も連想できたが、くだらなすぎるので口に出すのは憚られる。

 

 それよりなにより、余程言いたくなかった『真名』を明かされた少女(女神)が真っ赤になって震えてしまっているので、宥める心算で燦は優しく声を掛けるのであった。

 

「ぁー……、まあ、でっかくなりそうじゃないか、気にするなよ」

「うわーーーーーーん!!!」

 

 逆効果だった。

 




※【アマデウスコード】
 原作 中西達郎、漫画 東まゆみ、メカニカルデザイン 小箱とたん という豪華な組み合わせで製作された打ち切り漫画。連載中に東先生が緑内障治療のために執筆が出来なくなり、2・3話しか未だ公開されていなかったためにコミックスにすらならずに打ち切り。原作者個人サイトの作品紹介にも載ってない不憫な漫画。検索を掛けるとマッグガーデンの過去サイトに今でも墓標のようにページだけが残っているが、1話目すら読むことは出来ない
 原作では24人の少女たちが巻き込まれたわけだが、今話で説明した『巨大ロボでバトロワ』の設定は変更していない。別位相の並行世界で同じ境遇に遭遇した生き残り(帰還者)が『熨斗柄 燦』だった、というオリジナル設定でしたー☆というオチが付く。話があまり進まないうちに打ち切りしちゃったからオリジナルで妄想膨らませるくらいは見逃して欲しい。【魔神機】という名称も変更していないが、性能と根幹がこの通りだったのかと問われるとわっかんね☆
 グレンラガンで引っ張ってくれば? と言われそうだけど、そっちだと安直すぎるし他の人が沢山書いてるからいいでしょうよ。俺はマイナーなの書きたいッッッ!!
 ちなみに機体全長200メートルはスパロボ参戦ギリギリの大きさだそうです。へー、へー

※【煌咬縅凱・シャングリオン】
 縅は『い』とは読まない。命名は『友人』。漢字の意味を調べると作者の意図が届くと良いなぁ、という宿題にしておこう。今決めた

※【ボイーン】
 実在する


まあそんなわけで、オリジナル主人公ですけどこれくらいはね?
かなり居ますもんね、そういう設定で話し造る人たち
この世界に居たらどうだった、みたいなのの延長上
腕を掲げて『シャングリオーーーン!!!』って叫ばせたいのが夢だったの~。あ、ロボの名前は検索しても出ないけどなんか聞き覚えあるのを作成したよ

アクア様はまあ当然ながら『ご本人』では無いですけど、
二次創作だから、という理由じゃ無しに、
なんやかんやあって『この世界内』で生まれた『そっくりさん』を多分これからも出します
その場合はクロスで合ってるのか…? 葛藤は続く

とりあえず下地と大まかな設定は大体書いたので、この調子で次もやります
応援よろしくぅ

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