あれですよあれ。
あれってなんだっけ…
「先輩がこねぇ…」
俺こと『伊達雪樹(だて せつき)』は前日の夜に強襲科の先輩に当たる『波峰幽(なみみね かすむ)』にばったり会って戦兄弟契約をして欲しいと頼んだら、
『そんなになりたいなら明日の朝に試験してやるから早めに来て待ってろ。』
と言われて今に至る。しかし、待てども待てども先輩が来る様子はない。
「忘れたのかな…」
コンビニ強盗事件で憧れて転校先まで着いて来たのはいいが、いくらたっても足元にすら辿り着けないような感覚に襲われる。だからこその戦兄弟契約だが、試験を受けるまでに半年以上かかっている。このチャンスを逃せばもうあとはないだろう。
「にしても何の騒ぎだよ。」
待っている間に何かしらの問題が起きたようだった。
*****
「間に合った…」
なんとか遅刻せずに済んだ私こと『間宮あかり』は校舎に向かって歩いていたところ、騒ぎに出くわした。
「車両科の女の子が…」
手錠をかけられたヤンキーみたいなのに捕まっていた。
どうにかしようにも一年生の私じゃ…
「動くな。今すぐ投降しろ。」
低く、高圧的な声が後ろから聞こえた。
*****
敵は三人、救出者は二人。このくらいは余裕じゃないと波峰先輩の戦兄弟になんてなれるはずない。
「がっ!?」
近寄って来た一人目を素早く鳩尾にブローをいれて沈める。
「ぐっ!」
近かった二人目をアッパーで沈める。
「らぁ!」
後ろから突っ込んで来た三人目は
「ゲグッ!?」
後ろ回し蹴りで仕留める。
「ふぅ…」
とにかくこの二年間、突き詰めて来たのは一撃で仕留めること。今回がそのいい例になるだろう。
「あっ…」
すぐ後ろにいた少女に今気がついた。
*****
「ふむ…」
あのしつこい新一年生のガキにもそろそろうんざりだ。教室には来るし、コンビニではばったり会って戦兄弟にしてくれとうるさいし、何より俺の戦兄弟とか正気の沙汰じゃない。しかも、
「いないっぽい?」
「うっさいぞ、理子。」
朝から不快なやつに会うし、不幸だわマジで。
「今失礼なこと考えたでしょ!」
「知るか。」
俺はこの時点で踵を返す。
「あれ、待たないの?」
「規則も守らんバカに付き合う道理はねぇんだよ。」
「ふーん…」
などと言いつつ、バカ理子が腕を絡ませて来た。さらには、
「…おい!?」
「あっちに理子たんセンサーが反応反応超反応だよー!」
引っ張られていった。
*****
「雪君(ゆきくん)すごいよ!」
「えっ、いや、こんなんたいしたことじゃ…」
「ううん、すごくかっこ良かったよ!」
「っ!?」
やめてくださいあかりさん。後ろから、後ろから修羅がプレッシャーかけてくるんです!
『あ〜か〜り〜ちゃ〜ん〜と〜』
怖い。あかりと朝から会えて嬉しいことなんだが、ホラー体験も同時なんて…
「おい、バカ理子。いい加減にして放しやがれ。」
「ありゃりゃ。終わっちゃったか〜。」
「何、お前。ぶって欲しいの?」
先輩までこの場面で来るとか…
運がいいのやら悪いのやら。
次回から人物紹介しようかな。