―アベロン領・セーファ―
「ユリア!
また、テュフォー要塞へ向かおうとしていたわね!?」
ユリアは、ぎゅっと目をつむった。
「ごめんなさい、お母様…」
相手は、さらに声を張り上げた。
「ユリア司祭、『聖王』と呼びなさい!
私は、母であるけれど、あくまでも『聖王』なのよ!
何度言えば、わかるのよ!」
聖王なる女性は、ユリアに張り手をしようとした。
当たる直前!
その手を止めた男性が現れた。
「………ローザ・テレーズ聖王陛下、いくら
アウリアス様が見ておられますよ」
「ジャセン様…」
ユリアは、アウリアス聖騎士団団長の名を口にした。
「………しかし、ジャセン。
あなたも知っているでしょう。
ユリアは、聖なる存在…私の跡を継ぐ聖王となるべき存在なのですよ。
そんなユリアを戦線へ向かわせるべきではありません。
ユリアがいなくなったら、一体誰が私の跡を継ぐのですか?」
ローザ・テレーズの言葉に耳を傾けたジャセン。
「……ユリア殿、なぜそんなにも…?」
「……私も司祭です。
異教徒にアウリアス様の福音をもたらすのが我々司祭の使命だと、戦線に向かわれたリーリナ様も仰っていました。
私もリーリナ様の後を追いたいのです…」
ジャセンは、ユリアの瞳を見て、言った。
「ユリア殿、……あなた様のお気持ちはよくわかります。
しかし、まだあなた様は未熟です。
もう少し鍛練なさってください。
そうすれば、リーリナ殿もあなた様をきっと呼び寄せるでしょう」
「でも…」
「ユリア、ジャセンも言っているでしょう。
今はまだ早いのよ」
「…わかりました」
―1ヶ月後―
「ユリア殿!
リーリナ殿からの手紙を持って参りました」
ジャセンがひとつの手紙を携えて、セーファに帰還した。
それは、テュフォー基地への召喚状だった。
「お母様!
もう私も一人前と認められたのです。
どうか司祭としての使命を果たさせてください」
ローザ・テレーズは、しばらくの沈黙の後、穏やかな声で答えた。
「………戦場は、あなたが思うよりもずっと危険な場所なのですよ」
「それは、よく分かっています」
「本当なら止めたいところなのですが…。
ユリア・テレーズ司祭、第140代聖王として命じます。
テュフォー基地に赴き、異教徒にアウリアス神の福音をもたらすのです。
そして、この戦争を我らアベロンの勝利で終わらせるのです!
………あなたにアウリアス神の加護がありますように」