バルドニア戦記   作:アリス・リリス

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ユリア・テレーズ

「ユリア司祭殿、そんなにはしゃがないでください。

ここは、あくまでも戦場なのですぞ」

 

 

アウリアス聖騎士団・団長のジャセンが諭す。

 

 

「だって、異教徒達の魂を浄化させることができるのだもの!

リーナ教の司祭は、異教徒の救済が使命なのよ!」

 

 

ピンクのローブを纏ったユリアは、興奮しながら言う。

 

 

 

「アベロン兵を見つけたぞ!

アウリアスの一人娘もいるぞ!」

 

「我らが皇帝陛下に逆らう者を殲滅するのが、我らの使命!

アウリアスの娘も抹殺すれば、皇帝陛下もさぞお喜びになる!」

 

アルカナンの歩兵が現れた。

 

 

「ユリア様!

下がってください!

私が相手いたしましょう」

 

ジャセンは、ユリアの前に出て、剣を引き抜いた。

 

「ジャセン様!

私も戦います、アウリアス様のために!」

 

 

ユリアは、持っていた杖を握りしめた。

 

 

「我が主よ!

我に力を!

ブレイズソード!」

 

炎を纏ったジャセンの剣。

 

その剣を自在に操って、アルカナン兵を次々と薙ぐ。

 

 

(ハッ!危ない!)

 

 

ジャセンの背後から襲おうとする兵に気づいたユリア。

 

 

「ホーリー・ソード!」

 

 

すかさず杖から光の衝撃波が飛ぶ。

 

「アウッ!」

 

歩兵は、煙となって消えた。

 

「ユリア殿、すまない」

「いえ、構いませんわ。

お父様と異教徒たちのために祈りましょう。

 

『我が主・アウリアス様、穢れし異教徒達の魂をお清めし、あなた様の元へ送りました。

彼らをお導きください。

 

そして、すべての異教徒にあなた様の福音をもたらすことができるよう、お導きください…』」

 

 

軽く印を結ぶ。

 

 

「さて、参りましょう。

ぐずぐずしていると、日没までに基地に到着できません」

 

 

 

―テュフォー基地―

 

 

「ユリア殿、司祭長にご挨拶なさい」

 

「はい!」

 

ユリアは、真紅の天幕の張られた場所に向かった。

 

 

「………様!

マリナー司教長様!」

 

 

長い赤毛の女性に呼び掛けた。

 

 

「ユリア!

よく来れたね!」

 

「ジャセン様が護衛してくださったお陰です。

マリナー様、私もどうかすぐに戦線に…」

 

「知っているだろう?

我らアベロンと憎きアルカナンとの(いくさ)は、日々悪化している。

そんな場所にアウリアス様がこの世に遣わした御子であるお前を向かわせることはできないのだよ…」

 

「しかし、私は聖なる子。

お父様のもたらした福音を多くの人々にもたらすことも私の使命ですわ」

「だが、まだお前はあまり戦いを経験していないだろう…?

 

だから、しばらくの間、基地内でお使いを任せたいのだよ」

 

「えーっ!?」

 

「とりあえず、これをリーリナに届けておくれ」

 

 

そう言って手渡されたのは、小さな石の欠片。

 

 

「これは…?」

 

「まあ…、渡してきなさい」

 

「ちぇっ…。

…でも、リーリナ様に会えるからいいか…」

 

 

 

ユリアは、小さな石の欠片を持って、リーリナを探し始めた。

 

 

「リーリナ様~!

リーリナ様~!

どちらにいらっしゃるのですか~?」

 

 

「ユリア…!?

ユリアなの!?」

 

水色の髪を持つ女性、リーリナが現れた。

 

 

「はい!私です、リーリナ様!

マリナー様より、これを預かっておりますわ」

 

「まあ、ありがとう。

これで、研究がはかどるわ!」

 

「リーリナ様、これはいったい……?」

 

「これは、“古代のエッセンス”というもの。

古代人は、これでゴーレムを動かしていたそうよ。

 

今は穢れてしまっているけれど、“セイリックパワー”を使って、復元できるわ」

 

「“セイリックパワー”…を…」

 

「ええ、使えるわ。

………そうね、あなたにも“セイリックパワー”を使った魔法を教えましょう」

 

「ありがとうございます!」

 

「でも、このことはマリナー様に秘密よ。

あと、ちゃんと練習するのよ」

 


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