ではゆっくりしていってね!
サリアさんの以外な一面を見た日からまた半月がたったある日の朝。俺は久々にアーツの朝練を一人でやっていた。進捗的にはアーツの起動自体は結構安定して出来るようになっていた。まぁ文通でやり取りをしている我が師匠的にはまだまだだそうで、未だに次のステップに進んでいない。
「.........」
俺はただひたすらに光っている杖を眺めていた。なんかこの頃は集中していれば揺らぐ事なく出来ている。エイヤもそれ気付いたから来なくなったのかもな。
「.........」
「や...?」
なんかコツを掴むと変に力まなくて良いな。これだけ出来れば次のステップに行けるかな?まぁまだ集中しないと駄目だから先は長そうだなぁ。
「........」
「...!?.....」
んー、しかしこの光見てるとシャイニングのあの光とは全然違うな。まぁコッチは光らせるアーツで向こうは別のアーツだから当たり前っちゃ当たり前か。
「.......」
時間はまだ平気ーーだな。ならこのまま続けよう。今日はスカイフレアさんの講義も無いからな。
そんな感じに訓練しているとケータイの電子音聞こえた。
「ーー時間か」
「そうだね。時間だよ」
後5分もすればあの二人が来るかな?と思いつつ伸びをするとそんな冷たい声が聞こえてきた。そちらに振り向くとそこには見るからに不機嫌な堕天使の姿があった。
「モスティマさん?いつから?」
「結構前からだね。ざっと20分位かな?」
20分って!何故気付かなかった?俺は心の中でそう思いつつ頭を下げた。
「すみません。集中してたみたいです」
「ふーん?凄い集中力だね」
へーほーんと疑いの眼差しをこちらに向けてくるモスティマさん。
「な、何かしました?」
「別に。そう言えば結構上手くなったね、これなら次のステップかな」
おしっ!と喜んでいるとモスティマさんは少し悩んだ後
「ねぇ...ドラグーン」
「はい?」
彼女はアーツユニットを軽く振る。方向は俺では無い。着弾した場所にあったコンクリート塀は粉々になった。
「君、さっきこれアーツで相殺してたよ?」
「......はい?」
いやいやそんな訳ないだろ?と思ったがふと防具に付いているアーツユニットが少し光っているのを確認した。
「???」
「どうかした?」
このアーツユニットって自動起動じゃないよな?なんて考えていると教え子達の気配がしたのでそちらを向く。それと同時に訓練所の扉が開く。
「何でもないですーーおはよう2人共」
「おはようドラグーン教官!と、モスティマさん?」
グラニがそう言うとモスティマさんは何時もの掴みどころの無い微笑みを浮かべ
「おはよう。じゃあ私はお暇しようかな」
「モスティマさん。すみませんでした」
出口に歩いて行くモスティマさんにそう言うと、彼女は振り返り
「気にしないで良いよ。終わったらドクターの所に居るから来てね」
じゃあねーとモスティマさんは部屋を後にした。さてとじゃあこっからまた冷たい視線を浴びせている弟子たちに説明をしなきゃな。
それから冷たい視線が治らないグラニとフェンの2人に訓練を付け、そのまま足でドクターが居るであろう執務室に直行する。執務室の扉の近くにある呼び鈴を鳴らすと、死んだような声が聞こえてくる。
[はーい。どちら様?]
「ドラグーンです。モスティマさんはーー」
居ますかと聞こうとしたら扉が開いた。そこに居たのはモスティマさんご本人であった。後ろには書類の山と格闘しているドクターが手招きしていた。
「さ、入って」
「失礼します。所でこの書類の山は?」
にしてもこの量はエグいだろ?何事なのだろうか?そう思い聞いてみるとドクターはあははと笑いながら
「アーミヤにサボってるの見られてた」
「...モスティマさん、それで私をここに呼んだのは?」
自業自得だったので無視してモスティマさんに声をかける。何か後ろから無視しないで...と聞こえたような気がするが、気にしない事にした。
「うん。話は君の持ってるアーツユニットの事さ」
「アーツユニットですか...?」
どういう事ー?俺が首を傾げるとドクターが書類の山から出てきてこちらに歩いて来た。
「モスティマから今朝の事を聞いた。彼女的にはドラグーンのアーツユニットは君がアーツを使用している時に常時起動している物があるのではないかとの事だった。ドラグーンさえよかったら調べてみないか?」
「分解しないのなら良いですよ?」
そう返事をするとドクターはポケットからあるものを出した。
「じゃあここに書いてある場所に行って測定をお願い」
「了解です」
それからモスティマさんと共に想定室にて測定を行う事となったのだがーー
「どうして...?」
技術者達に文字通り群がられていた。
初めは特に問題も無く測定していたのだが、どうやら俺の防具に付いているアーツユニットはそのユニット自体の耐久性がおかしいとの事だった。それ以降やれ分解させてくれだの詳しく測定させてくれだの言われたので、分解は丁重にお断りしてそれ以外には俺自身も気になったのでやってもらった。そして、俺とモスティマさんが測定室から出れたのは昼もとっくに過ぎた時間であった。
因みに今朝モスティマさんの攻撃を防いだのはユニットの自動発動型のーーこっから先は専門用語だらけで理解が出来なかったが、自動シールド機能だと思う事とした。
「モスティマさん最後まで付き合って下さりありがとうございました」
「別にいいよ。タジタジになる君の姿を見るのは楽しかったし、今朝の不明が分かったからね」
そう言ってニヤリと笑うモスティマさん。まぁ他人から見る分にはそうだろうなと思いつつ、それでも少しイラッとしたので目を細めて
「もっと早く助けてくれても良かったのでは?」
「ごめん、ごめん。じゃあお詫びとしてちょっと遅いけど昼食奢るよ」
なら良いかなと思い返答しようとしたら端末が震えた。
「あ、もうそんな時間か。モスティマさん」
「ん?なんだい?」
若干上機嫌?なモスティマさんに悪いなぁと思いつつ
「これから訓練でした」
「あぁ...もうそんな時間」
なので今度奢って下さいよ?と言うと彼女は微笑んで
「そうだね」
「それでは失礼」
ここから訓練所まで結構あるぞ?歩いてたら間に合わないな。
「仕方がない、走るか」
その後走っていたら何やら風紀委員長みたいな少女に追いかけ回されたが、どうにか撒いて時間までに訓練所についた。中に入ると流石にギリギリだった為既にグラニとフェンは柔軟を終えたのか話ていた。
「っあ!ドラグーン教官!」
「すまん遅れた。準備は出来てるみたいだな?」
「はい、何時でも大丈夫です」
うん。真面目な生徒で良かったと内心思いながら俺は棒を構えた。
「じゃあ始めようー!」
「「はい!」」
そして何時もの如く組手をほぼ休憩無しで行った。この頃だとグラニに関しては何度か槍を使いそうになるぐらい戦いのキレが良くなっている。フェンに関しても訓練始めたての頃のグラニなら勝てる気がする位になっていた。
「では、今日はここまで!」
「「ありがとうございました!」」
それと共に息を吐き体から少し入っていた力を抜く。するとグラニがフェンとの会話が一段落したのかこちらに声を掛けてきた。
「ドラグーン教官!夕飯一緒に食べよう!」
「おういいぞ」
それから毎度のごとくグラニ、フェンの二人と夕飯を食べて自室に戻ろうとすると俺の部屋の前に突っ立っているヴァルカンの姿があった。
「ヴァルカン?どうした?」
「ドラグーンか、ちょうどお前に用があったんだ」
流石に部屋をミスった訳じゃないか。俺はそんな下らない事を脳内の片隅で思いつつ質問をした。
「それでその用は?」
「あぁ...それなんだが」
そう言って彼女が差し出してくるのは小型の記憶媒体であった。
「これは?」
「今度このテスト武装のテスターを頼みたい。ドクターの許可は貰っている」
その日までにその武装の事について予習しておいてくれとの事であった。俺は了解と答えつつ早速中身を確認しようと自室に入ろうとするがそこでまた呼び止められる。
「ドラグーン」
「なんだ?追加の注意点があったか?」
俺がそう聞くと彼女はニヤリと微笑み
「当日はとことん付き合って貰うぞ?」
「お、おう」
ではなと彼女は今度こそ自室へと入っていった。
「...鍛冶師って全員こうなのかね」
そう呟いて俺は自室へと入っていった。
と言う訳で次回はヴァルカンとの一日になります!
感想・評価お待ちしております!
では、また次回お会いしましょう!