ーある地方の山賊ー
俺は剛腕で知られる山賊だ、…名はある程度売れていると思うぜ? …山賊だからな、人様に迷惑を掛けてなんぼの世界よ。…とは言ったものの、俺は他の奴等とは違い殺しは必要最低限に
そんな俺が最近気にしていること、それは山の中で見付けた小さなガキのことだ。そのガキが飽きない奴で、小せぇ体でチョロチョロってよ。木々の間を動き回っては獣を狩り、川へ行っては器用に魚を獲りやがる。何てことはない普通の山村の日常と言える行動だろう、…が考えてみて欲しい。数人の人間がやっているんじゃねぇんだぜ? 小せぇガキが一人でその日常を過ごす異常性。大人一人でも厳しい山の中をガキが一人、…どう考えたって目が離せねぇだろ!
ガキを観察してから一月程の時が経った、他に数人の仲間もガキに興味を持ったらしい。同じようにガキを見て、その行動力に目を剥いていやがる。それ以上にたった一人で過酷な山の中、未だ元気に生きていることを本気で驚いてんな。
ガキの日課が興味深い、先ずは朝の変な踊り。何気なく踊っていることから意識的にやっているのではなく、体に染み付いた日常の一部として踊っているのだろう。その奇っ怪な踊りを終えた後に拳を突き出す動作、真剣な顔して一〇〇回も。俺と他数人が真似てみたがよ、…意外に負担が大きい。大人でこの調子なのにガキは毎日やりやがる、…俺達以上に根性がある。…それにあの奇っ怪な踊りを仲間の一人が真似ていた、真似てから調子が上向きだとか言っていたがホントかよ?
………俺も真似たがマジみたいだ、…何か体の調子と言うか切れが違う。…何でだ?
そんなガキの観察は終わりを迎えた。俺達はガキに近付き過ぎたらしい、周囲を警戒し始めてから数日で姿を消した。その鮮やかな消えっぷりに俺達は脱帽、…スゲーな? あのガキ。それと同時に思う、俺はこのまま山賊なんかしていていいのかと。あのガキは一人逞しく真っ当に生き抜いていた、なのに俺は群れての日陰者。…情けねーって思うわ、…今まで思ったこともねぇのに。
…山賊辞めて、…何処ぞで開墾でもやってみようか? 何て考えていると、
「帰ろうぜ、ダグダ!」
と俺を呼ぶ声。…考えるのは後にするか、…今は帰って酒を飲んで寝てぇわ。
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ーある地方の騎士ー
私はレンスター王家に仕える騎士、…とある話に興味を持ちある村へと訪れた。聞いた話とは山に住む子供の話、数ヶ月前から現れるようになったらしい。みすぼらしい格好をしているようなのだが、小さくともしっかりとした体つきをしているとのこと。その子供は時折村へと訪れては、自身で狩ったという獣を売りに来るらしい。親がいるのかと聞けば、ぼそぼそと小さな声でずっと独りだと言ってきたそうな。気の毒に思い村へ住むよう促しても、首を横に振って迷惑になるからと言って山へと帰っていく。…そんな子供の話、それが事実であるのなら騎士として何としても保護をしたいと考えている。
数人の部下と件の村へと訪れた時、話に聞いていた子供が丁度山から下りてきていると耳にした。村人の案内で件の子供の下へ、そして一目見てその子供…少年は才能の塊であると感じた。小さい体ながらも十分に鍛えられており、その立ち姿も堂々としていた。…何よりもその目、意志の強い目をしている。…これは、…この子は数年の内に大成するぞ!
少年に話し掛けて色々と聞いてみたが、…私が事前に聞いていた内容と相違なし。小さい身形で苦労してきたであろう少年に保護を提案するも断られた、これもまた聞いた通りだな。理由を聞いてみれば、
「…僕は何も、…知らない。…世界見て、…何が出来るか探す。」
と力強く言うではないか。世界を見つつ己を知ろうとするか、…何も知らぬまま歩みを止めるわけにはいかない。…いやはや凄い少年だな、その歳で自身の可能性を探ろうとするとは。それも与えられるのではなく自らで探ろうと、う~む…素晴らしい!
少年…ナナシといったか、彼に感銘を受けた私は村に滞在する間、槍術の基礎を教授し鍛えてやることにする。鍛えるにあたり訓練用槍をナナシに授ければ、目を輝かせてそれを振り回す。
ヴォンッ!!
子供にしては良い風切り音、やはり私の目は確かであった! …数日の期間しかない、…が出来る限りの槍術を教授せねばならぬ!
才能ある少年に出来うる限りの槍術を教授した私は、何とも言えぬ達成感と充実感を胸にレンスター城へと戻る。その道中で思ったことは一つ、将来のランスリッターを育てる為に才能ある子供達を集めるのも良いな…と。
少年…ナナシをレンスターへと誘ってみたが、…まぁ来るわけもなし。…が頭の片隅にでも残っていたのなら、…もしかしたら成人したナナシが顔を見せに来るやも知れん。もしそうなれば楽しみなことよ、…どれ程の大器となっていようか?