異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#108 Mud army

「………二対一か………… いや、1.5人分になればいい方か?」

 

テツロウもまた戦うと宣言して尚、ワードの心は揺らがなかった。

 

「少々 慢心がすぎるんじゃないか!!?

この少年は君達が恐れているエクス寮長が選び抜き、そして託して下さった男だぞ!!!」

「………だからどうした?慢心してるのはお前の方だろ ミゲル・マックイーン。

たった2人でこの軍勢(・・・・)に勝てると思ってんのか?」

『!!!!?』

 

どこからどう見ても敵はワード1人だった。その後ろの闇に目を凝らしても、あの人形の怪物が現れる気配はない。

第一、哲郎達に人形は通用しないと分かっているし、これ以上 ラドラが戦力を浪費するとも考えられなかった。

 

「甘いんだよなァ お前ら二人共。

なんで俺が地面に泥を展開してると思ってる?」

 

その理由を明かすかのようにワードの周囲の泥がまるで生きているかのように動き出した。

 

「な、何をする気だ………………!!?」

「気をつけろ! 何か 嫌な予感がする!!!」

 

見た事も無い魔法から放たれる未知の攻撃、そしてワードの表情からありありと分かるその自信が哲郎とミゲルに漠然とした不安を煽る。

 

「……なんで俺がレイザーと張り合えると言ったのか教えてやるよ。

そいつァ あいつのスピードに頭数で対抗出来る(・・・・・・・・)からさ。」

『!!?』

 

ワードの周りで蠢いていた泥が形を変えた。

泥は蠢きながら人の形に姿を変える。

 

「………………………!!!!?」

 

その泥が完全に形を整えると、ワードと瓜二つの姿に変わった。

 

「こ、こいつ、泥を練り固めて分身を作りやがった…………………!!!!」

 

ミゲルも冷静さを失い、目の前の光景にそう言うしかなかった。

これが彼がレイザーと戦えると言った理由である。泥の魔法を使いこなしてここまでの芸当をこなした彼に肝を抜かれていた。

 

「まあ尤も、この分身達の力は俺には及ばねぇ。 だがそれでも このたくさんの兵力と戦いながら俺まで辿り着けるかと聞かれれば無理な話なんじゃないか?」

『……………!!!』

 

既にワードの周囲にゆうに20を超える彼そっくりの大軍が集まっていた。

 

「さあ行け!!!!」

『!!!!』

 

ワードが指を振ると泥の分身が一斉に襲いかかった。

 

 

「奢ったな!! ワード!!!」

「!?」

 

ワードが繰り出した一番後ろの泥の分身とミゲルが入れ替わった。

哲郎のそばにいた分身は勢いそのままに彼の後ろへ直進する。

 

ミゲルはワードの鼻先まで迫った。

その手は片方の手の甲へ引かれ、発車の時を伺っている。

 

(…………………!!!

あの体勢は………………!!!!)

 

哲郎はミゲルの構えに見覚えがあった。自分が一番信頼を置く構えだからだ。

 

「魚人波掌 《杭波噴(くいはぶき)》!!!!!」

「!!!!!」

 

ミゲルの掌底がワードの顔面に直撃した。

 

(ぎ、魚人波掌……………!!!

あの人も使えるのか………………!!!)

 

ワードの慢心に穴を通したミゲルの一瞬の内の勝利

 

 

かに思えた。

 

「━━━━━━━━!!!?」

「…………奢ったな ミゲル。」

「!!!? そ、そんな…………………!!!!」

 

ワードの顔面は茶色く変色し、そしてひび割れていた。哲郎とミゲルはそれを見て顔面を泥で防御したのだと理解した。

 

ガッ! 「!!!」

 

ワードは顔に触れているミゲルの手首を掴んだ。

 

(まずい!! また分身のどれかと入れ替わって)

「させねぇよ。」 「!!!」

 

ズドォン!!!! 「!!!! ガッ…………!!!!」

 

ミゲルの鳩尾に泥で押し固めた塊が直撃した。そしてその首を泥で作った腕で掴む。

 

「…………………!!!!!」

「ハッハ! 苦しいか?

そんな状態じゃあの姑息な魔法も使えねえだろ?」

 

ミゲルの呼吸を奪いながらワードは嘲笑した。

 

「さぁ お前にはこれからやってくるエクスの事を洗いざらい吐いてもらうとするか。

別に断るな とは言わねぇが、後ろのガキはどうなるかな?」

「!!!!」

 

ワードの作り出した泥の分身は依然として哲郎に襲いかかっている。

 

「テ、テツロウ君………………!!!!」

「ミゲルさん、僕は大丈夫です!!!」

 

いくら数が多くても人の姿をしているならば哲郎に倒せない敵ではない。

ミゲルが窮地に陥った動揺を押さえ込んで身構え、分身を迎撃する体勢を取る。

 

「甘ェぜ!!!!」 「!!!?」

 

哲郎に接触する寸前、分身の内の数体が巨大な泥の塊に戻り、哲郎に覆いかぶさんと迫った。 一瞬 反応が遅れた哲郎は全身を泥で拘束されてしまう。

 

「テ、テツロウ君!!!!」

「油断したな ガキが!!!」

 

ワードはそう勝ち誇ると手の指を軽く曲げ、力を込めた。

 

「《干魃破砕(セッコ・ブリーカー)》!!!!!」

「!!!!!」

 

泥が固まって圧縮し、哲郎の身体を押し潰した。

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