異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

12 / 334
#12 The source

「"完全決着の定義"が何か知ってるかね…?」

「?」

 

レオルが唐突に口を開いた。

 

『な、何を言ってるのでしょうレオル選手。

話術で混乱をさそっているのか!!?』

 

「それはね、

相手の土俵で戦った上で勝つことだよ。」

レオルが両の拳を上げた。

その拳に魔法陣が浮かんでいた。

 

「………!!!?」

『こ、これは

これは ネロ・サムワン選手が見せた、魔法と武術の合わせ技だ!!!』

 

レオルが両手を構えて哲郎に詰め寄る。

「行くぞ!!!」

 

レオルの魔力を込めた掌底が哲郎を襲う。

それを何とか捌いた。

しかし、その直後 哲郎の背筋を恐怖が貫いた。

 

後ろの外枠が破壊されたのだ。

掌底に乗った魔力が後方の外枠を破壊した。

 

『レ、レオル・イギア 恐るべしィーー!!!!!

一撃でも貰ったら致命傷だァーー!!!!』

 

哲郎も負けじと隙のできたレオルに魚人波掌を見舞う。しかし、同じ手は食わないと躱した。

 

「決着だ!!!」 「望む所!!!」

 

バンッッ!! バンッッ!! バン ッッ!! バンッッ!!

哲郎とレオルが零距離で掌底を撃ち合う。互いに完全に躱し続けている。

 

『こ、これは予想外の事態だ!!!

レオル・イギアとテツロウ・タナカが真っ向から技を撃ち合う!!!

何という光景!!

魔界公爵の血を引く男に、人間族の少年が、1歩も引かずに張り合っている!!!!』

 

観客席からも溢れんばかりの歓声が響いた。どちらが勝ってもおかしくないこの試合に見入っている。

レオルの力を信じる者と、哲郎の逆転に賭ける者とに二分されていた。

 

レオルの掌底は圧倒的だ。それは、哲郎の後方の惨劇からも明らかだった。しかし、哲郎の掌底も一撃でレオルをグロッキーに持っていくだけの威力がある。

場内は熱狂と緊張感に包まれていた。

 

 

攻撃のタイミングが揃い、両者ともに掌底を振り上げた。

 

哲郎とレオルの掌底が、同時に腹を直撃した。哲郎は吹き飛ばされ、レオルの表情も苦痛に染まる。

 

『ク、クロスカウンターだーーーー!!!!!

余波で外枠を破壊する衝撃を腹にくらったテツロウ選手、そして 再び自らをグロッキーに持っていく衝撃をくらったレオル選手!!!

 

ますますわからなくなって参りました!!!

この試合の結末は、果たして!!!?』

 

 

ガハッ

 

哲郎が血を吐いた。レオルの魔力が乗った衝撃は、適応の力を持ってしても堪えるものがあった。

レオルも腹を抑えて膝を着く。

自らの水分、そして魔力に衝撃を叩き込まれたのだ。

 

『さあ、トドメの一撃を加えんと、レオル選手が近づいていく!! 遂に決着の時か!!?』

 

「テツロウ・タナカ。貴様の反抗は生の刺激になったぞ。

さらばだ!!!!」

 

哲郎の顔面に掌底を振るう。しかし、哲郎は意識を取り戻した。

レオルの手首を掴み、身体を捻った。

レオルは宙を舞い、反対側の外枠に叩きつけられる。

 

「こ、ここに来て投げ技だ!!!

テツロウ選手、まだ闘えるのか!!?」

 

息は上がっているが、闘争心は失われていない。彼の中には既に人の命を軽んじた怒りは失われていた。

 

 

土煙が晴れて見えたレオルは既に立っていた。受け身にも精通しているのだろう。

 

「テツロウ・タナカ。

貴様になら見せてやろう。私のとっておきをな!!!!!」

「!!!?」

 

レオルが右手を高く上げた。そこに巨大な魔法陣が形成させる。

 

「兄者、あれを使う気か!!!?」

 

枠の外から見ていたゼースが驚いて言った。

その後 哲郎に言った逃げろという叫びは攻撃音によって掻き消された。

 

 

「貴様となら刺し違えてでも悔いはない!!!!

食らうがいい!!!!!」

 

根源魔法 《皇之黒雷(ジオ・エルダ)》!!!!!

 

「!!!!!」

 

哲郎に巨大な黒い雷が襲いかかる。ゼースの黒之雷霆(ブラック・バリスタ)の比ではなかった。

反応し 両腕のガードを固めたが、その雷は哲郎の身体を容赦なく飲み込んだ。

 

 

『で、で、で、出たァーーーーーーーー!!!!!

根源魔法!!!! 魔力の根源から力を借りて放つ禁断の奥義、それがこの魔界コロシアムで炸裂したァーーー!!!!!

 

これは勝負あったか!!!!?』

 

 

レオルが膝を着いた。その腕は焼け爛れている。根源魔法は、使った者の身体も無事では済まないのだ。

 

(こ、これでは次の試合を戦うのは無理か……

だが 悔いはない。こんなにも熱い戦いができたのだからな………。)

 

レオルの心には悔しさと満足感があった。

 

『さあ、根源魔法の土煙が晴れていきます!!

勝者はどちらか!!!?』

 

土煙が晴れた時、観客席に衝撃が走った。

 

 

「!!!!? バカなァ!!!!!」

 

哲郎が立っていた。服はボロボロになり、髪は先が縮れ、全身に土汚れがつき、そしてガードした両腕は焼け爛れていたが、確かに意識を保ってそこに立っていた。

 

 

『こ、根源魔法 敗れたりぃーーー!!!!!

何とテツロウ選手、あの根源魔法をも、耐えしのいだァーーー!!!!!』

 

観客席が熱狂に包まれる中、哲郎は限界を迎え両腕をダラリと下げた。その腕が小刻みに震えている。麻痺しているのだ。

 

(だ、ダメだ……………!!!

腕が動かない………!!! 適応に時間がかかる……!!!)

 

腕が動かないながらも弱気にはならずレオルに言い放つ。

 

「こ、こんなことが…………!!!!!」

「レ、レオル・イギア…………。

あなたが僕に奥の手を使ったから、僕も奥の手を使う………。

 

武器(・・)を使わせてもらう!!!!!」

「!!!!?」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。