「"完全決着の定義"が何か知ってるかね…?」
「?」
レオルが唐突に口を開いた。
『な、何を言ってるのでしょうレオル選手。
話術で混乱をさそっているのか!!?』
「それはね、
相手の土俵で戦った上で勝つことだよ。」
レオルが両の拳を上げた。
その拳に魔法陣が浮かんでいた。
「………!!!?」
『こ、これは
これは ネロ・サムワン選手が見せた、魔法と武術の合わせ技だ!!!』
レオルが両手を構えて哲郎に詰め寄る。
「行くぞ!!!」
レオルの魔力を込めた掌底が哲郎を襲う。
それを何とか捌いた。
しかし、その直後 哲郎の背筋を恐怖が貫いた。
後ろの外枠が破壊されたのだ。
掌底に乗った魔力が後方の外枠を破壊した。
『レ、レオル・イギア 恐るべしィーー!!!!!
一撃でも貰ったら致命傷だァーー!!!!』
哲郎も負けじと隙のできたレオルに魚人波掌を見舞う。しかし、同じ手は食わないと躱した。
「決着だ!!!」 「望む所!!!」
バンッッ!! バンッッ!! バン ッッ!! バンッッ!!
哲郎とレオルが零距離で掌底を撃ち合う。互いに完全に躱し続けている。
『こ、これは予想外の事態だ!!!
レオル・イギアとテツロウ・タナカが真っ向から技を撃ち合う!!!
何という光景!!
魔界公爵の血を引く男に、人間族の少年が、1歩も引かずに張り合っている!!!!』
観客席からも溢れんばかりの歓声が響いた。どちらが勝ってもおかしくないこの試合に見入っている。
レオルの力を信じる者と、哲郎の逆転に賭ける者とに二分されていた。
レオルの掌底は圧倒的だ。それは、哲郎の後方の惨劇からも明らかだった。しかし、哲郎の掌底も一撃でレオルをグロッキーに持っていくだけの威力がある。
場内は熱狂と緊張感に包まれていた。
攻撃のタイミングが揃い、両者ともに掌底を振り上げた。
哲郎とレオルの掌底が、同時に腹を直撃した。哲郎は吹き飛ばされ、レオルの表情も苦痛に染まる。
『ク、クロスカウンターだーーーー!!!!!
余波で外枠を破壊する衝撃を腹にくらったテツロウ選手、そして 再び自らをグロッキーに持っていく衝撃をくらったレオル選手!!!
ますますわからなくなって参りました!!!
この試合の結末は、果たして!!!?』
ガハッ
哲郎が血を吐いた。レオルの魔力が乗った衝撃は、適応の力を持ってしても堪えるものがあった。
レオルも腹を抑えて膝を着く。
自らの水分、そして魔力に衝撃を叩き込まれたのだ。
『さあ、トドメの一撃を加えんと、レオル選手が近づいていく!! 遂に決着の時か!!?』
「テツロウ・タナカ。貴様の反抗は生の刺激になったぞ。
さらばだ!!!!」
哲郎の顔面に掌底を振るう。しかし、哲郎は意識を取り戻した。
レオルの手首を掴み、身体を捻った。
レオルは宙を舞い、反対側の外枠に叩きつけられる。
「こ、ここに来て投げ技だ!!!
テツロウ選手、まだ闘えるのか!!?」
息は上がっているが、闘争心は失われていない。彼の中には既に人の命を軽んじた怒りは失われていた。
土煙が晴れて見えたレオルは既に立っていた。受け身にも精通しているのだろう。
「テツロウ・タナカ。
貴様になら見せてやろう。私のとっておきをな!!!!!」
「!!!?」
レオルが右手を高く上げた。そこに巨大な魔法陣が形成させる。
「兄者、あれを使う気か!!!?」
枠の外から見ていたゼースが驚いて言った。
その後 哲郎に言った逃げろという叫びは攻撃音によって掻き消された。
「貴様となら刺し違えてでも悔いはない!!!!
食らうがいい!!!!!」
根源魔法 《
「!!!!!」
哲郎に巨大な黒い雷が襲いかかる。ゼースの
反応し 両腕のガードを固めたが、その雷は哲郎の身体を容赦なく飲み込んだ。
『で、で、で、出たァーーーーーーーー!!!!!
根源魔法!!!! 魔力の根源から力を借りて放つ禁断の奥義、それがこの魔界コロシアムで炸裂したァーーー!!!!!
これは勝負あったか!!!!?』
レオルが膝を着いた。その腕は焼け爛れている。根源魔法は、使った者の身体も無事では済まないのだ。
(こ、これでは次の試合を戦うのは無理か……
だが 悔いはない。こんなにも熱い戦いができたのだからな………。)
レオルの心には悔しさと満足感があった。
『さあ、根源魔法の土煙が晴れていきます!!
勝者はどちらか!!!?』
土煙が晴れた時、観客席に衝撃が走った。
「!!!!? バカなァ!!!!!」
哲郎が立っていた。服はボロボロになり、髪は先が縮れ、全身に土汚れがつき、そしてガードした両腕は焼け爛れていたが、確かに意識を保ってそこに立っていた。
『こ、根源魔法 敗れたりぃーーー!!!!!
何とテツロウ選手、あの根源魔法をも、耐えしのいだァーーー!!!!!』
観客席が熱狂に包まれる中、哲郎は限界を迎え両腕をダラリと下げた。その腕が小刻みに震えている。麻痺しているのだ。
(だ、ダメだ……………!!!
腕が動かない………!!! 適応に時間がかかる……!!!)
腕が動かないながらも弱気にはならずレオルに言い放つ。
「こ、こんなことが…………!!!!!」
「レ、レオル・イギア…………。
あなたが僕に奥の手を使ったから、僕も奥の手を使う………。
「!!!!?」