異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#120 Cursed straw doll

「わ、藁人形……………!!!?」

「何を驚いている?藁を編んで作った【人形】を使う事のどこがおかしい?

私が【藁人形】を使わないという保証がどこにあった?」

 

あまりに意外なラドラの武器に苦言を示したが、そんな事をした所で助けなどある筈もなかった。

 

「この中には君の髪の毛を仕込んである。さっき糸で君を拘束した時に拝借させて貰った。

魔力を込めたこの藁人形に人間の遺伝子を入れれば遠隔でダメージを与えることができる。

このように!」

「!!!」

 

ラドラが藁人形の腕を差し、哲郎の腕にも同様に魔力を練り固めて作られた針が突き刺さる。

 

「ちなみに親切で言っておくと、この藁人形の攻撃は私から離れれば離れる程効果が弱くなって、一定距離を置けば効かなくなる。」 「!!?」

「………さあ、それを聞いてどうする(・・・・・・・・・・)?」

「……………………!!!」

 

もちろんそれが罠であることは哲郎が一番よく分かっていた。しかし下手に近づいて隙を見せれば何が起きるか分かったものではない。

この状況を打開する方法はたった一つ

 

ラドラの考えている策の上を行くしか無かった。

 

 

哲郎は踵を返してラドラの反対側へと走りした。 足首と腕に突き刺さった魔力の針が消えたのを確認して振り返り、構えを取る。

 

(………やはりそれしか出来ないよな。)

 

哲郎は身体を半身に傾け、両手を後ろにやって隠し、ラドラと向き合った。

 

(多少 構えは違うが十中八九 《海鳴り》を撃つつもりだろう。その隙だらけになった所に《皇之黒雷(ジオ・エルダ)》をぶつけて隙を作ってやろう。)

 

背中(哲郎の死角)人形の腕(魔法の発射台)を作り、反撃の準備を固める。後は哲郎が攻撃してくるのを待つだけだ。

 

 

(来た!!)

 

哲郎が力強く地面を踏み込んで身体を捻る。そして攻撃を撃つ手の平が露になる。

 

「!!??」

 

哲郎の手の平は《魚人波掌》の形では無かった。その手は水滴に濡れていた(・・・・・)

 

(まさかあれ(・・)か!!!)

(もう対応は間に合いませんよ!!!)

「魚人武術 《水切り》!!!!!」 「!!!!」

 

手首の振りを駆使して手の平の水滴を刃に変えて撃ち出す。《海鳴り》よりも遥かに早い攻撃はそのままラドラの顔面へと急接近する。

 

「!!!!!」 「!!!?」

 

咄嗟に首を傾けて水圧の刃をやり過ごす。

水切りはラドラの頬を切りつけて後ろの柱にぶつかり、四散して消えた。

 

(あれを避けられた!!!?)

(……まさかハンマーの技を真似て来るとは!! しかしどこから水を━━━━━━━━━━━━

 

!!)

 

哲郎の傍に空の小さな瓶が転がっているのを見つけた。そして一つの結論に至る。

 

「あの地下通路の水か………………!!!」

「そうです。そしてこの瓶はミリアさんが渡してくれた物。この一撃の為に取っておいたんですよ!!!」

「……その一撃は不発に終わったようだが?」

 

「………彼女達の頑張りであなたに一矢報いることが出来たなら設け物ですよ。」

「…………………!!!!」

 

ラドラの眉間にほんの少しだが皺がよる。

今まで 人形の素体としてしか見てこなかった下級生達の団結が自分の頬に傷をつけた運びだ。

 

「……なるほど 確かにそうだ。

道理でレイザーもワードも勝てない筈だ。

テツロウ・タナカ 君のその強さと覚悟に敬意を表して、チャンス(・・・・)をあげよう。」

「?」

 

ラドラそう言ってが手を上げると、彼の周囲の人形の怪物が宙に浮いた。そしてその姿がどんどんと変わり、巨大な身体の一部分へと変わっていく。

 

「………………!!!?」

「私の人形魔法は一人の人間を複数の人形に変えることは出来ないが、逆に複数の人間を組み合わせて巨大な人形を作ることはできる。」

 

「…………………………!!!!!」

 

哲郎の目の前に現れたのは巨大な【くるみ割り人形】だった。たくさんの人形がくるみ割り人形の部品へと姿を変え、組み合わさって哲郎に立ちはだかる。

 

「こいつの顎にはくるみは勿論 人間の身体すら砕く破壊力がある。

ただし、こいつを退けることが出来たならその時は君と一対一で戦ってあげよう。」

「!?」

 

ラドラの予想外の提案に哲郎は一瞬 動揺を見せた。その隙をついてくるみ割り人形が哲郎に向かって拳を振り下ろす。

 

「!!!」

 

哲郎は人形の腕を飛び越えて肘を掴み、そして身体を捻った。狙いはくるみ割り人形の体勢を崩して投げ倒す あるいは腕を破壊する事。それが出来れば勝機を見いだせると考えての事だ。

 

「……無駄だよ。」 「!!!??」

 

しかし結果はそのどちらでも無かった。

人形の腕は肘の所で真っ二つに外れた(・・・)のだ。

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