異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#122 Nutcracker Breaker

操り人形の糸を破壊し、再びラドラと向かい合った哲郎の表情は勝ちを確信した側面が見て取れた。

 

「……忘れてないか? 君の敵はまだ(・・)私ではないぞ!!」

 

ラドラが振り上げた手に反応するように巨大なくるみ割り人形が哲郎の背後で手を振りあげた。そしてラドラは自分の足元で式神に魔力を込めている。

 

 

(どっちが先に来てもいい。とにかくあの人形の懐に潜り込む!!)

 

先に哲郎の足元に式神の火の玉が飛んで来る。それを跳んで避けると横から人形の腕が伸びて哲郎の身体を掴んだ。

 

(………余裕な表情を見せた割にあっさりと捕まったな━━━━━━━━━━━━━━

 

!!!)

 

ラドラの目の前ではくるみ割り人形が哲郎の身体をがっしりと握り締めている。誰の目から見ても哲郎が圧倒的に不利な状況だ。

しかしラドラは違和感に気付いた。人形の拳の下から哲郎の両拳(・・・・・)が見えているのだ。

 

「………引っかかりましたね。

フンッ!!!」 「!!!」

 

哲郎はくるみ割り人形の拳から両腕を引き抜いた。握りしめられた拳に腕二本分の隙間ができる。一瞬の隙を見逃さずに巨大な拳に両手を着いて下半身を抜く。

 

拳の上で逆立ちをして完全に脱出に成功した。そのまま身体を翻して人形の腕を背負って体勢を崩す。

 

(このまま素直に投げさせてくれるか あるいは……………)

(………!! 仕方あるまい!!!)

 

『ガコン』と大きな音がして人形の腕が肩から外れた。哲郎の肩には巨大な球体に繋がれた腕が乗っている。

しかしそれも哲郎の予想通りである。

空中で腕を投げ上げ、掌底を構える。

 

(もう何度も戦ってきたから見切っている。

魔力の中心はここだ!!!!)

 

肘に当たる球体に渾身の掌底を撃ち込む。壁に激突した腕は魔力の流れを乱されて変化が解け、元の人間に戻る。

 

 

「…………………!!!」

 

一瞬の内に人形の腕を潰されてラドラの表情に驚愕が見える。

しかし直ぐに追撃の体勢を取り、人形の左腕を哲郎に向かって振り上げる。

 

哲郎は空中を飛び上がって左手の攻撃を回避する。天井近くまで飛び上がり、人形の真上に立った。

 

くるみ割り人形は真上の哲郎に向かって左腕を伸ばす。哲郎はその手を人形の背中の方向に避け、両手で拳を掴む。

 

「フンッ!!!」 「!!?」

 

落下しながら人形の左腕を背中の方に引き下ろし、人形の体勢を崩す。ラドラは再び人形が倒れることより腕を捨てることを選択した。

再び人形の腕が外れ、哲郎の肩に乗る。

 

肘の球体に蹴りを放ち、地面に激突した腕は元の人間に戻った。

 

 

地面に着地した哲郎は両腕を失ったくるみ割り人形と向かい合った。

 

「………両腕を奪って勝ったつもりでいるようだが忘れていないか? それは《くるみ割り人形》だぞ!!!」

 

両腕を失って震えていた人形は膝をつき、哲郎に向かって口を開いた。

 

「………ようやくくるみ割り人形らしい事をしてきましたね。だけどそれが弱点なんですよ!!!!」

「!!!?」

 

哲郎は地面を蹴って《水鉄砲》を発動し、大きく開けた人形の口に飛び込んだ(・・・・・)

 

(やっぱり口の中は空洞だ!! この中でならいける!!!!)

 

人形は口を閉じた。

しかしくるみ割り人形の強靭な歯ではなく、その奥の空洞に入り込んでしまった。

 

(この中なら決まる!! 今度こそ終わりだ!!!)

魚人波掌 (つくり)

衝波響(しょうはきょう)》!!!!!

「!!!!?」

 

哲郎を飲み込んで勝ち誇るように佇んでいた人形は突如として震え出し、そして中心からバラバラになって崩壊した。

 

「………………!!!!!」

「あなたの用意した《試練》はちゃんとこなしましたよ。約束通り僕と戦って下さい!!」

 

くるみ割り人形の破片は地面に落ち、そして元の人間達へと戻る。その上空で哲郎はラドラの顔を見下ろす。

 

「まさかレイザーやワードだけでなくあの人形までも退けるとはな。

どうやらエクスより警戒しなればいけなかったのは君だったようだな。良いだろう。私の奥の手を見せてやろう!!!」

「!!!」

 

ラドラが指を鳴らすと、彼の上空に巨大な人形が展開された。先程のくるみ割り人形とは違い、細身で上半身のみで腕が長く伸びている。

 

「……君こそ約束通り私と戦いたいならこっちまで下りてきたらどうだ?」

「………………………」

 

ラドラの挑発とも思える言葉には反応せずに哲郎は地面に降り立って彼と相対した。

 

「こいつの名前は《狂乱踊子(テストレイア)》。これだけは使いたくなかったんだ。これを使うとしばらくの間深刻な筋肉痛(・・・・・・)に悩まされる。

なぜならッ!!!!」 「!!!??」

 

ラドラが《狂乱踊子(テストレイア)》と呼んだ人形の両手の指から糸が伸び、ラドラの肩や腕に突き刺さった。

 

 

「……まさか…………………!!!」

「そうだ。この《狂乱踊子(テストレイア)》は【私自身を人形にして操る】技だ!!!!」

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