異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#123 Manipulate myself

『自分自身を人形にして操る』という今までのラドラの言動からは予想だにしなかった言葉が飛び出した。

 

「……さっきまで人を人形扱いしていたのにどういう心境の変化ですか?」

「だから使いたくなかったと言ったんだ。これは私の美学(・・・・)に反する技だからな。君がそれを使うに値する人間だったと言うわけだ。」

 

ラドラは肩や腕から糸を伸ばしたまま近づいてくる。構えてはいないがえも言えない緊張感が漂って来る。

 

「━━━フンッ!!!」 「!!?」

 

自分の脚の間合いに入った瞬間、ラドラの蹴りが哲郎を襲った。哲郎は左側から飛んできた蹴りを右方向に躱し、そのまま身体を捻って下半身を上にあげる。

 

(このまま蹴りで顎を撃ち抜く!!!)

 

ラドラの蹴りにカウンターを合わせて顎を蹴ればダメージを与える事は出来ると考えての行動だ。

 

「………………………甘い。」 「!!!?」

 

ラドラが身体を屈めて哲郎の蹴りは空を切った。空中で隙だらけになった哲郎の腹をラドラの拳が襲う。

哲郎の身体は軽々と壁際まで飛ばされた。

 

「………………………!?!!」

「いくら君が高度な技を持っていようとも、私は君の動きを客観的(・・・)に見る事が出来る。」

「!!?」

 

ラドラの目にサラやレイザーの魔眼とは違う奇妙な模様が浮かんでいた。それは彼の上空の人形の目に描かれている物と同じだった。

 

「その顔 どうやら分かったようだな。

この《狂乱踊子(テストレイア)》を発動している間、私の視界はあの人形の物となる。

君との戦いを上空から見ながら私自身を操って(・・・・・・・)戦う事が出来るのだ!!!」

 

ラドラの言葉で哲郎は既に一つの事実に気付いていた。今の彼に死角は無い。

即ち哲郎の攻撃手段であるカウンターやマーシャルアーツが通じにくくなったという事だ。

 

(………決勝戦(あの時)みたいだ。

だけど身体が人間のままならあれ(・・)が通じる筈だ!!!)

 

壁を蹴ってラドラの方へと走り出す。

 

「君の攻撃は無駄だと言ったつもりだったんだがな。」

「それはこれから分かりますよ!!!」

 

ラドラは向かってくる哲郎を迎撃するために拳を伸ばす。哲郎は飛び上がってラドラの腕に手をかけ上空を飛び、彼の後ろに回った。

 

「!!?」 「【人間】ならこれは効くでしょ!!?」

 

背後に回るや否やラドラの首に腕を回して全力で締め上げた。視界を人形に依存していようとも頸動脈()を締め上げれば意識を断ち切る事が出来る

 

「━━━━━━━━━意識を断ち切れるとでも考えていたんだろう?」

「!!!?」

 

ラドラの身体は背後に哲郎が組み付いていることで上の方に重心が寄っている。その状態を利用して体重を後ろに預けて飛んだ。哲郎の身体は重力に引っ張られ、頭が地面へと接近する。

 

仕方無しにラドラから離れ、地面への激突を避ける。攻撃を回避した哲郎の頭には既に【一つの最悪の可能性】が浮かんでいた。

 

「何故【視界】が人形に依存できるのに【呼吸器】が依存していないと考えた?

誤解の無いように言っておくと私の五感もダメージも全てあの人形の物だ。私を倒したければあの人形を破壊するしか方法はない!」

「!!!」

 

ラドラの言葉が偽りでない事は先のカウンターの蹴りと哲郎の絞め技が聞かなかった事で既に証明されている。そしてもう一つ、目の前の操り人形(ラドラ)には自分の技が通用しないという事も証明されてしまった。

 

「……ちなみに私が何故マーシャルアーツが魔法に劣ると考えていた(・・)か教えてやろう。この状態になった私にそれが通用しないからだ!!!」

「……………!!」

 

「まぁここにエクスがいたならば話は違っていたかもしれないがな。」

「!!!!!」

 

ワードに敵地に拉致された今が最大の好機であり、エクスが長年積上げてきた計画を引き継いで果たす責任があると自分に言い聞かせてきた。自分の意思で参戦したこの依頼の佳境に入ったラドラとの戦いに負けることは許されない。

 

「……エクスさんならいますよ。」 「何?」

「僕はエクスさんの意思を継いでここに立っているんです!! 僕の心の中で一緒に戦ってくれてるんですよ!!!」

「………だったらどの道私には勝てないな。」

「それはこれから分かりますよ!!!!」

 

悠々と佇むラドラに対し哲郎は恐怖心を精神の隅に追いやって魚人波掌を構えた。狙いはラドラの後ろの巨大な人形 ただ一つだ。

 

 

魚人波掌 《海鼓(うみつづみ)》!!!!!

「!!!」

 

哲郎の掌から放たれた衝撃波がラドラを操る人形へと一直線に襲いかかった。

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