異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#130 The Overture of catastrophe Part5 ~Fear of Fake~

哲郎が案内されたのは丸い机が中心に置かれた簡素な一室だった。

 

「……ここに来たのはいいが一体何をしようというのだ?」

「……………………」

 

エクスは心から【哲郎がなぜ自分と二人きりになったのか分からない】という表情をしていた。哲郎はなぜ自分に転生者であることを隠していたのか その理由を欲していた。

 

「……エクスさん、僕はもう全て分かってるんですよ。」 「?」

「……水晶からノアさんを呼んで下さい。

その後で里香から聞いた事を話しますから。」

「分かった。」

 

若干 納得がいかないまま机に水晶を置いた。

そこに魔力を通して通話を試みる。

 

『………おう。 エクスじゃないか。お前から掛けるなんて珍しいな。

あのラドラとの決着が着いたのか?』

 

水晶からノアの声が聞こえた。この一言でようやく里香の言った【ノアとエクスが友人である】とい確証を掴めた。

 

「………ノアさん お久しぶりです。

僕です 哲郎です。」

『おお! テツロウか! 久しぶりだな。

お前がエクスの水晶から話しているという事はあの事(・・・)は本当だったんだな。』

「……」

 

ノアというあの事とは、哲郎が公式戦の直前に書いた【エクスという協力者が見つかった】という報告の手紙だ。

 

『何だ? 随分元気が無いな。

公式戦は圧勝だったんじゃないのか?』

「ええ。 それにたった今ラドラの計画も阻止に成功しました。」

『なんだ。だったらもっと嬉しそうにしろよ。めでたく冒険者としての初依頼が成功したって事じゃないか。』

「………ええ。 滞りなく完遂しましたよ。

あなたが(・・・・)勧めてくれた(・・・・・・)依頼をね。」

『? 何が言いたい?』

 

少し間を置いて本題に入る。

 

「……結論からお話します。

ラドラ・マリオネスは偽物だったんです。」『!?』

「僕と同じくらいの少女がラドラそっくりの人形に身を包んで仲間を募ってパリム学園に悪さをしようと画策してたそうなんです。」

『………それは本当なのか?』

「はい。 これがその証拠です。」

『これは……………!!』

 

哲郎は水晶の前にラドラの人形の首と里香が写った写真を置いた。

水晶越しにそれを凝視するノアの表情が少しずつ曇っていく。自分と対称的に常に自信に満ち溢れた彼のこんな表情を見るのは初めての事だ。

 

『……こいつの名前は分かるのか?』

「はい。 姫塚里香(リカ・ヒメヅカ)と自分で名乗っていました。 彼女が僕に色々と話してくれたんですよ。今日はその確認がしたくてお呼びしました。」

『確認?』

「彼女はノアさんとエクスさんが友人だと言っていたんですが、それは本当ですか?」

『そうだが?』

 

あまりにもあっさりと本当だと認めた。やはりただ言う機会が無かっただけで隠している気は無かったのだと解釈する。

 

「という事はエクスさんに僕の事を伝えたのはノアさんですよね?」

『ああ。 エクスにとってはまたと無い戦力になると思ってな。

話はそれだけか?』

「いいえ。 里香はもう一つ重大な事を言っていました。」

『重大な事?』

 

ノアの表情は依然として変わらない。

哲郎は恐れながらも質問に入る。

 

「………魔界コロシアムが終わって家に泊まった時に『俺たちはこのラグナロクでたった2人の転生者(・・・・・・・・・)なんだ。』と言ってましたよね?

どうしてそんな(・・・・・・・)嘘をついた(・・・・・)んですか?」

『!!!?』

「この写真の女は僕達と同じ転生者でした。

そして僕達が【不完全な転生者】だとも言っていました。 それにエクスさんも転生者だと言っていたんです。」

『……………………!!!』

 

ノアの視線が哲郎から外れた。それでも哲郎には質問を止める選択肢は無い。

 

「どうして僕にそんなくだらない嘘をついたんです? 教えてくださいよ!」

『……………………済まなかった。』

「!」

 

ノアの口から謝罪の言葉が漏れた。

申し訳なさがその引き攣った表情からありありと見て取れる。

 

『言い訳になるかもしれないがべつにお前に悪気があった訳じゃない。

そのラドラには妙な気配を感じていたんだ。恐らくはその身を包む人形に何か自分が転生者であると悟らせない為の仕掛けが施されいてんだと思う。』

「という事は 僕に余計な緊張を与えない為に?」

『そうだ。 お前の性格からしていじめの問題を解決したらその背後にあるラドラにも首を突っ込むであろう事は予測していた。それにラドラが転生者であるという確証は掴めなかった。

だから一旦 その事を伏せておいたんだ。』

「…………そういう事だったんですか。」

 

哲郎は異世界で初めて出来た友人に悪意を持った嘘をつかれていた訳でなかったことをしって胸を撫で下ろした。

 

『テツロウ』

「? 何ですか?」

『お前さえ良ければ明日にでもエクスと俺の家に来ないか? 三人でもっと詳しく話がしたい。』

 

初依頼という肩の荷が下りた今 断る理由などある筈も無い。

哲郎はその誘いを快諾した。

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