異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#145 EMPEROR

「ここか…………」

 

小声でそう呟いた哲郎の目の前にはそれこそ漫画やゲームでよく見るような白い壁に青い円錐状の屋根が沢山並んだ巨大な白がそびえ立って居た。

招待状に同封されていた地図には城への行き方が詳細に記されてあったが空を飛べる哲郎にとってはそんな物が無くても雲にも届きそうな程高い建物を見つけて飛んで行くのは不可能ではなかったが、国王の善意を無駄にするまいと歩いて行くとこにした。

 

「!」

 

哲郎の目が身の丈の何倍もある巨大な門の両端には鎧に身を包んで槍を構えた男が二人並んでいるのを認めた。この城の門番と見て間違いない。

その二人の内の一人が槍を下ろしたまま哲郎の方へと向かってきた。

 

「テツロウ・タナカ様でございますね?

御手数ですが招待状をお見せ下さい。」

「あ、はい。」

 

その屈強な見た目からは想像もできないほどの穏やかな口調に戸惑ったが、懐から招待状を取り出して見せた。

 

「……………確かに。 では待合室を用意しておりますので、そちらでお待ち下さい。」

 

 

 

***

 

 

城に入った哲郎を待っていたのはそれこそ見渡しきれない程広い大広間だった。そして驚かされたのは(異世界の)城にエレベーターがある事だ。

ラグナロクには当然電力はなく、歯車によって動くという古風な物であったが、それでも哲郎の体をかなりの速さで上の階へと連れて行った。

 

どれくらい昇ったのかも分からなくなる程上の階についてエレベーターを出ると、一流ホテルの一室と間違えそうになるほど豪華な部屋へと案内された。

 

「………ここが待合室ですか?」

「はい。時間になりましたら迎えに参ります。

テツロウ様にはパリム学園のいじめ問題 及び寮長ラドラのなりすまし事件に関して証言して頂きますのでそのつもりでいて下さい。」

「………分かりました。」

 

城の人間が部屋を出た後、哲郎は用意されていた椅子に腰を下ろして思考を巡らせた。

前世からは考えられない程豪勢な扱いで忘れそうになるが、これは裁判であり、ひいてはこの世界全体に関わる事でもあるのだ。

 

学園のいじめ問題だけではここまでの大事にはならなかった筈であり、裁判が国王立ち会いの元行われているのは偏に姫塚里香(ラドラになりすましていた人間)の存在があるからに他ならない。国王は里香の正体 そしてその理由を知りたがっている。

 

里香のバックにいるであろう組織の存在を話していいのかは分からないが、それでも言える事は全て言おうと決めてここに来た。

 

 

 

***

 

 

 

豪勢過ぎる部屋で落ち着けないまま数十分待っていると、不意に扉を叩く音が鳴った。 「どうぞ」 と許可を出すと、城の人間らしい畏まった服装の男が入って来た。

 

「テツロウ様、国王様がお呼びです。御手数ですが招待状を持って一階までいらして下さい。」

「(いよいよか………)

分かりました。すぐにいきます。」

 

鞄の中に入れた必要最低限の荷物も殆ど出さなかったので鞄を持ち上げるとすぐに部屋を出た。

 

 

***

 

 

エレベーターに乗って下の階に降りる時は少しだけ浮遊感を感じるものだが、哲郎の11年に及ぶ人生にとってそれを感じた時間が一番長かったのは誇張無しにこれが最長であろう。

この時間に他にエレベーターを利用する者は居らず、エレベーターは元いた階から国王の待つ客間のある一階まで一直線に哲郎を送った。

 

エレベーターを出ると今度は身の丈より少しばかり大きな扉の前に案内された。

 

「こちらが客間となります。

僭越ながら、くれぐれも粗相の無いようにお願い致します。」

「……もちろんです。」

 

城の男が扉を開ける その短い時間の中で哲郎は緊張する身体に必死に言い聞かせた。

自分は別に交渉や意見申し立てをしに来た訳では無い。ただ裁判で証言をする為だけに来たのであり、今の自分なら必ずやり遂げられる と。

 

 

「…………………!!!」

 

扉を開けて哲郎の目に飛び込んできたのは大きな椅子に座る黒い革服に身を包んだ初老の男性だった。短めに切りそろえた黒髪と逞しい髭、そしてその切れ長な目だけで哲郎の心に緊張感を植え付けた。

 

「………遠路はるばるよくぞ来てくれた。テツロウ・タナカ君。

私が国王 ディルドーグ・バーツ・ヴルガンだ。宜しく頼む。」

「初めまして。 田中哲郎(テツロウ・タナカ)と申します。本日はお招き頂き誠にありがとうございます。」

 

一回もつかえる事無く返事の言葉が出てきた事に安堵した。このコミュニケーションの力を育ててくれた数多くの転校、そして親や友達達に心の底から感謝したくなる。

 

「謙遜は要らぬ。呼びつけたのは私だ。そんなに謙る必要も無い。

おい、お前はもういいぞ。席を外したまえ。」

「はっ!」

 

城の男に少しばかりきつい口調で退出するよう命じ、部屋には国王と哲郎の二人だけとなった。これから言わなければならない証言の内容を必死に思い返す。

国王の手の合図に促されて彼の目の前の椅子に腰を下ろした。

 

「………ではテツロウ君よ、早速だが本題に入りたい。君がパリム学園の寮長 エクス・レイン君と協力してラドラ寮の企み、 ひいては彼の正体を明かしたというのは本当かね?」

「はい 間違いありません。」

「……そうか。 では聞かせてくれるかね?

ラドラ・マリオネスになりすましていた《転生者(・・・)姫塚里香(リカ・ヒメヅカ)について知っている事を。」

「!!!??」

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