異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#153 STEAL The PHOENIX

里香の魔法陣から先程 国王が放ったものと全く同じ根源魔法が放たれた。その瞬間哲郎の目は周囲の光景をゆっくりと捉え、そしてその時間で様々な思考を巡らせた。

 

里香が根源魔法を模倣した事

あまりにも広大な攻撃範囲

そして この状況でこの場にいる全員をどうやって助けるか

 

しかし、それを行動に移すにはあまりに時間が足りなかった。

 

 

「《砂塵要塞(サーヴ・プレジャー)》!!!!!」

「!!!!?」

 

炎の嘴が哲郎達に直撃するより前に爆発音が響いた。哲郎が目を開けると、そこには黄褐色の巨大な壁が展開されていた。

 

「オ、オルグさん!!!」

「………………………ッッ!!!」

 

オルグダーグは哲郎達を背にして顔を歪ませていた。瞬間的に大量に砂を出した反動が身体を襲っている。

 

「おー これも受けるか!

やっぱ魔法じゃ能力には分が悪いねー。」

 

里香は依然として表情を変えることは無かった。哲郎には砂の壁に阻まれて彼女の顔は見えないが声からその余裕ぶりがありありと理解出来る。

 

「…テツロウ君、早く国王様を連れて逃げろ!!

ここは私が何とかする!!!」

「は、はい!!!」

 

国王と大広間の出入口とは目の鼻の先だが、まだ十分に里香の射程距離に入っている。ここで哲郎ができる事は国王の護衛が関の山だろう。

 

哲郎が国王に近づこうとした時、オルグダーグは攻撃に転じるために砂の壁を解除した。

様子を伺う為に振り返った哲郎の目に余裕たっぷりの里香の表情が入る。

 

オルグダーグと里香との間には一触即発の緊張感が走っている。哲郎はそう感じていた。

 

「ん〜………………

もういい(・・・・)かなぁ。」

「!!!?」

 

里香の一言はその場にいた全員を動揺させた。

 

(そうか!!

こいつの目的は人形じゃなくて国王様の根源魔法の魔法陣だったのか!!!)

「……おいお前、ここまで好き放題やっておいておめおめと返すとでも思っているのか?」

「ん?何?

この状況でボクと戦えると思ってるの?

分かってるだろうけどボクはまだまだ根源魔法くらい(・・・)撃てるんだよ?」

 

里香は皇之焔鳥(ジオ・フェザード)を撃ち終わって黒焦げになった人形の腕を崩し、新しい腕を作りながら自信満々に言った。

 

「お前こそ分っているのか?

たった今 その鳥を私の砂が防いだんだぞ!!!」

 

里香の呼吸に合わせてオルグダーグが砂の触手を尖らせて里香の心臓目掛けて繰り出した。

 

「! よっと。」 「!!!」

 

人形の腕を振るって砂の槍を叩き落とした。

 

(あ、あれは(せせらぎ)!!?)

「おー。 一度弾いたら軌道は直せないみたいだねぇ。」

「!!! (こいつ、人形の腕で技を繰り出せるのか!!?)」

 

オルグダーグは砂の槍が床に穴を開ける前に槍の形を崩した。

 

「あ、そうそう。 こいつは返しとくね。」

『!!!?』

 

オルグダーグは背後の砂に引っ張られる感触を覚え、振り返るとザフマン達を素体とした人形の怪物がオルグダーグの砂から解放され、里香の方へと引っ張られている所だった。

そして怪物は里香の腕の中に入った。

 

「おい!! そいつを放せ!!!」

「言われなくてもそうするって!

結構良い素体だけどこんなの持ち運んだら嫌でも目に付いちゃうからね。

それにもう欲しい物は貰ったからね。国王サマは《炎鳥》の異名、返上しちゃったんでしょ?これからはボクが《炎鳥の人形使い》って名乗るのも悪くないかもね。

 

じゃあね。」 「!!!」

 

里香は腕を放してザフマン達の人形を地面へと落とした。オルグダーグや騎士達は咄嗟に人形を受け止めようと駆け寄った。

その時、国王だけが里香の口元が緩むのを見逃さなかった。

 

「お前達止せ!!! そいつは罠だ!!!

その場から離れろ!!!!」

『!!!?』

 

次の瞬間、里香の身体が強烈に光った。

その場にいた全員が動きを止め、目を塞ぐ事に神経を集中することを強いられる。

 

「それじゃ失礼するね。国王サマ達に哲郎君。

次に会う時はこの世界が終わる時かもだけもね。」

「!!!」

 

 

光が晴れた時には既に里香の姿は無かった。

それでも国王は動揺すること無く騎士達に激を飛ばす。

 

「おい!! すぐに王宮の周囲をくまなく捜せ!!!

まだ遠くには行っておるまい!!!」

「いえ、国王様。その必要はありませんよ。」

「!? オルグ!!」

 

オルグダーグは既に砂を足場にして里香が座っていた場所を調べていた。

 

「ここに魔素が付着しています。

この色は恐らく転移魔法の類でしょう。」

「転移魔法だと!? そんな高度な代物をあんな小娘が!!?

………………クッ!!!」

 

国王はやり場のない悔しさに顔を歪ませた。

 

「………おいお前達、避難させた人間 そして国民をできるだけ集めろ。

謝罪会見、並びに真実を全て(・・)話す。」

「こ、国王様!!? 何を言って━━━━━━━━」

「当然だろうが!!!!

この大失態を、一体どうやって弁明できる!!!!?」

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