#155 Jailed Heart
宗教団体
その四文字を聞いた哲郎が真っ先に思い浮かべたのは昔学校で受けた道徳の授業だ。
そこでは宗教を利用した詐欺などの恐ろしさを嫌というほど学んだ。しかし哲郎もまさかそんなに問題が今この状況で絡んでくるとは思わなかった。
(嘘でしょ!? この世界でそんな生々しい問題持ってくんの?!!)
「ん? どしたのテツロウ
そんな難しい顔しちゃって。」
「どうしたもこうしたも、この人や妹さんの名前が分からなきゃ何も出来ないでしょ?」
「ああ。 そうね。」
哲郎が呆れた表情で写真を指さし、サラは場が悪そうな笑みを浮かべた。
***
「今写真に写ってるそいつの名前が《セリナ・ウィンザー》 クラスは違うけど私と同学年よ。んで、こっちの左に写ってるのが妹の《アリナ》。
妹とはあんまり仲良くないからこれしか写真が無かったのよ。」
サラが渡してきた写真に写っていたのは栗色の髪を短めに切りそろえた《セリナ》と黒髪を頭頂部で二つに結んだ《アリナ》だ。
「それで、この人は今どこにいますか?出来ればサラさんよりこの人の口から話を聞きたいんですが。」
「そう言うだろうと思って人セリナを人間族科からこっちの部屋に呼んであるわ。もうすぐ部屋に着く筈だからそろそろ向かった方がいいわね。」
「そうですか。 分かりました。」
***
「ここか……………」
哲郎が案内を頼りにやって来たのは学園の小さな客室だった。扉を二回 軽く叩いてから部屋に入る。
「失礼します。 サラ・ブラースさんの紹介で来た者です。」
「お待ちしてました!私が依頼主のセリナです!」
部屋には小さな机と椅子が用意され、そこに写真に写っていたセリナが座っていた。
「……では早速ですが依頼内容を確認して良いですか? サラさんの話ではアリナという妹さんが宗教に嵌って帰らなくなってしまったと聞いたんですが、間違いありませんか?」
「間違いありません。 名前は《ジェイル フィローネ》という 恐らくは新興宗教だと思います。」
「ギルドとかには相談したんですか?」
「相談はしました。でもそんな小さな問題 誰も取り合ってくれなくて。それに私じゃ払える報酬額もそんなにありませんから。」
「………………(生々しい問題だなぁ………………)。」
哲郎はセリナの話を黙って聴きながら、職場にしようと考えていたギルドにもまだまだ知らない部分があるかもしれない と考えた。
「それで、そもそも妹さんはなんと言ってるんですか?」
「アリナは自分の意思だって言ってるんですけど、ずっと上の空で様子がおかしくて、無理に連れ出そうとしたらものすごい剣幕で追い返されて…………」
「……なるほど(様子がおかしいって事は、洗脳の魔法でも使ってるのか………………)。
じゃあご両親はなんと言ってるんですか?」
「実は私の両親とセリナは仲が良くないんです。」「?!」
哲郎はこれから何か込み入った話が始まるかもしれない と身構えた。
「仲が良くない? それは一体どうして?」
「……アリナは両親の反対を押し切って学園に行かずに魔法使いとして冒険者登録をして勇者のパーティーに入ったんですよ。だけどすぐに
「そのお友達と会ったことは?」
「ありません。そもそもそのお友達がどんな人かも分かりませんし、アリナにどんなお友達がいたかも知りませんでしたから。」
「……そうですか(あの時受けた授業で聞いた手口にそっくりだな)。」
「それにその宗教団体、とても閉鎖的でどんな活動をしてるか全く分からないんです。」
「分からない……。 だけど場所は分かってるんですよね?」
「はい それはもちろん。 これが住所です。」
セリナはポケットから一枚のメモを取り出して哲郎に渡した。そこに書かれてした住所はパリム学園から少しだけ離れているだけだった。
「……他に知っている事は?」
「……恥ずかしい話なんですが、これ以上は何も分からなくて……………。」
「そうですか。 では今日は一旦失礼します。」
「あ あの、依頼は受けてくれるんですよね!!?」
セリナは縋るような表情をしながら立ち上がった。
「もちろんその方向で話は進めますが、もしかしたら誰かにも協力を要請するかもしれません。何か匂いますから。
だけどこれだけは約束します。あなたの妹さんは必ず連れ戻します。」
その一言を残して哲郎は部屋を後にした。
***
(……あぁ言ったは良いけど何から始めて良いか分からないな………。とにかく慎重に物事を進めるしかないな。
どうにもこうにもあの宗教団体 なにか裏がありそうだからな…………。)
哲郎は思考をめぐらせながら歩を進めた。