異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#168 Shelling Ford

哲郎が叩き起されてから十数分も経たない内にギルドの人達(哲郎の世界でいう警察)が駆け付けた。その職員の話を水晶越しに聞いて哲郎は初めて状況を把握する。

 

(本当はみんなが集められてる大広間に行きたいけど気付かれたら疑われかねないし、ここから音を聞くしか無いな……………

 

!)

 

何十人もの人々のざわめく声が止み、今まで聞いた誰でもない男の声が聞こえる。

 

『えー、遺体の身元はここの元信者 エレナことパルナ・ミューズさん 17歳で間違いありませんね?』

『は、はい。そうです。

つい先日 ここを卒業(・・)して、なのにどうして…………………』

 

ギルドの男の声とマリナのすすり泣く声が聞こえる。その他にも信者達 少女の泣き声や参列者達の戸惑う声が聞こえてくる。

 

『それなんですがね、あの遺体 どうもおかしいんですよ。』

『? おかしい?』

『あの遺体から魔素が検出されました。つまり、何者かが腐敗を遅らせる類の魔法を掛けて保存していたという訳です。それを踏まえて考えた結果、死亡推定時刻は今日から約一週間前という結論に至りました。』

『!!!? 一週間前!!!?

そ、それって彼女がここを卒業した時ですよ!!!』

『!? それは本当ですか!!?』

 

水晶からはマリナを初めとしてたくさんの少女の動揺する声が聞こえている。しかし哲郎はそれを冷静に聞いていた。

 

(……この騒ぎ、昨日僕が見たマリナさんのあのおかしな行動と関係があるのか?

まぁ それはそれとして分かっているのは それが行われたのは僕がこの部屋の上で仮眠を取った11時半から起こされた12時半の間という事だ。)

 

哲郎は水晶から聞こえてくる声に耳を傾けながら惨状と化した空き部屋を見下ろす。

その床にはいつかドラマで見た場面と同じようにパルナが寝ていた場所が白いテープで囲まれ、周囲には魔力で構成された紐状の物が張られている。

 

『……それでもう一つおかしな点があるんです。

遺体は胸を酷く損傷し、心臓は抜かれてしまっていました。ですが現場に飛び散っていた血は明らかに少なかった。 つまり、何者かが何らかの方法で既に死亡した彼女を部屋に運び込み、周囲に血液を撒き散らしたとしか考えられません。』

『そ、そんな!!

一体何のために………!!』

『……今はなんとも言えませんが、恐らくは愉快犯による犯行でしょう。聞くところによると被害者は天涯孤独だったらしいじゃないですか。』

『は、はい。 確かに彼女には家族も親戚も居らず、そのせいで世間ではいじめを受けていました。 それで、助けを求めてここに入信して………

じゃあまさかこれは無差別殺人だというんですか!!?』

『いえ、結論を出すのはまだ早いです。

それで参考までにお聞きしますが、現場の空き部屋を最後に確認したのはいつですか?』

『わ、私達です。』

(! この声は……………)

 

哲郎は水晶から聞こえてきた声に聞き覚えがあった。彩奈が厨房で給仕の仕事の内容を聞いていた時に知り合った信者の一人 名前は《ベリア》と言った。

 

『あなた方が? それは何時ですか?』

『朝の八時、会のために掃除したんです。

その時は異常なんてありませんでしたし、窓にはちゃんと鍵も掛けました。』

(…………… 鍵、ね。)

 

現場の空き部屋は密室とまではいかずとも、出入口は扉とその向かいの窓だけであり、窓には鍵が掛けられていた。そして窓には魔法を使った痕跡は何一つ無い。

つまり外部犯の可能性が無くなったという訳だ。

 

『………窓は完全に閉ざされていて外部からの侵入は不可能。そして入信者達は全員二人以上で作業を続けていた。

つまり、犯行時刻にアリバイが無く 犯行が可能なのは あの時休憩で一人だった この会の参列者である貴方々七人しか居ないという訳です。』

『!!!!?』

 

哲郎はその会話を冷静に聞いていた。

ギルドの男の言っている事は何ひとつ間違ってはいない。犯行が可能だったのはあの七人を置いて他にはいない。

 

『何を馬鹿な!! 冗談じゃない!!』

『そうです!! 一体私達に何の動機があると!!?』

『見ず知らずのここの人間を殺してなんの得があると言うんだ!!?』

 

ギルドの男の発言に動揺したレオーネ、ロベルト そしてペリーが次々に抗議を始めた。

彼らが宗教団体 ジェイルフィローネに来たのは偶然であり、それだけで殺人鬼だと疑われているも同然なのだから無理もないだろう。

 

(………動機 か。

それは多分ここの《転生者》と絡んでいる。

誰かにこの宗教団体には何かがある と伝える為にこんな事を……………

 

!)

 

耳に当てている水晶が通信を受信した。

 

「……もしもし、」

『テツロウか 俺だ。なにやら大変な事が起きてるらしいな。』

「! ノアさん! 来てくれたんですね!」

『ああ。エクスから知らせを受けてな、飛んできた。それで、今はどうなっている?』

「今はギルドの人が事情を聞いています。その結果、犯行が可能なのはこの会に参列していたあの七人しか居ないと言うんです。

そして、恐らくこれは………………」

『ああ。ほぼ間違いなく、昨日 アヤナが言っていた《転生者》が絡んでいる。』

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