異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#171 Shelling Ford 4 (BAD BLADE)

「……テツロウ、今なら大丈夫だぞ。」

「はいっ!」

 

哲郎は通気口から降り立ち、一気に階段を駆け上がった。その階段の前にはレオルが立っている。

二階に上がり、近くの通気口に身を隠した後でレオルが持つ通話水晶に連絡をする。

 

「………レオルさん、二階に上がれました。」

『そうか。私は部屋に戻る。

何かあったらまた呼べ。 尤もお前を助けるのはこれで最後にしたいがな。』

「………一言余計ですよ。

それよりあの事 忘れないで下さいね。」

『分かっている。』

 

レオルは哲郎との通信を切った後、ギルドの男達が集まる大広間へと向かって行く。

 

「あ! 困ります レオル氏!!

容疑者は部屋で待機していて貰わないと!」

「先刻 事情聴取をしていた男は何処だ?

そいつに話さなければならない事を思い出してな。」

「そういう事でしたら こちらに…………」

 

 

 

***

 

 

「………なるほど。ロベルトさんは普段から様々な宗教団体で説法をしていたのですね?」

「ああ。可能性の話ではあるがそこからここの情報を掴み、元々のホテルに圧力を掛けて我々がここに来るように仕向けたという事も考えられる と思ってな。」

「……分かりました。

では、この事が本当かどうか彼に確認をとって参ります。無論、あなたからの情報ということは伏せておきますので。」

「よろしく頼む。」

 

ギルドの男が背を向けた瞬間、レオルは指で水晶を弾き、男の服に付けた。

 

(水属性の魔法式を改造して粘着力を持たせた。

急ごしらえだが上手く行ったな。

 

これで貸し借りは無しだぞ 小僧。)

 

 

 

***

 

 

『違います!! 確かに私は様々な場所で説法はしていました!! ですが神に誓ってそんな事はしていません!!

第一証拠がどこにあると言うのですか!!!』

『いえ ただ噂で聞いただけで、確認したかっただけですので。』

 

哲郎が持つ水晶からギルドの男とロベルトの声が聞こえて来る。レオルは約束を守ってくれたのだ と口元に笑みを浮かべる。

 

(……これでギルドの声も聞けるようになったけど、問題は彩奈さんとノアさんとこの人の声を二つ以上同時に聞く事が出来ないって事だな。

まぁ取り敢えずは……………)

 

哲郎は彩奈の水晶に繋ぐ。

彩奈と話す為ではなく彩奈の周囲にいるであろう信者の少女達から情報を得る為だ。

 

(! 哲郎さん!

という事は…………)

 

彩奈は哲郎からの通信を受け取り、水晶の中の魔力を最大限抑えて哲郎の声が周囲に聞こえないようにして 哲郎の話に耳を傾ける。

 

「彩奈さん、他の信者の皆さんが何か気になる事を言ってましたか?

『はい』なら水晶を一回、『いいえ』なら水晶を二回叩いて下さい。」

『コンコンっ』

「そうですか。

僕は今 二階にいるんですが、昨日彩奈さんがマリナさんから服を受け取ったのは彼女の部屋でしたよね?」

『コンっ』

「その部屋は二階にありますか?」

『コンっ』

「……じゃあ その部屋がどこにあるか、今 抜け出して教える事は出来ますか?」

『コンっ』 「!」

 

数秒を置いて彩奈が少女達に話す声が聞こえる。

 

『あ、あの、この近くのトイレってどこにありましたっけ?』

『ん? あぁ、 それならここを出て真っ直ぐ行けば突き当たりにあるけど………』

『わ、分かりました。』

 

ついこの前しばしの別れを告げた仲間と今生の別れを強いられた為か、水晶から聞こえてくる声はいずれも意気消沈していた。

 

 

 

***

 

 

 

『………つまりはノア様が作った行方不明者のリストとここを卒業した人を照らし合わせて、ここの秘密を掴もうとしているという訳ですね?』

「はい。そしてそれは恐らくマリナさんの部屋にあると思うんです。

実は彼女 昨夜 地下室に居た誰かに食事を持って行ったんですよ。僕はそれも関係していると考えていて。」

『そうなんですね。

分かりました。彼女の部屋は…………』

 

 

 

***

 

 

 

「………ここか。」

 

彩奈が言った経路に案内された哲郎を出迎えたのは二階の部屋の突き当たりにある茶色い扉だ。

 

(えーと確かここに…………

あった!)

 

哲郎はズボンのポケットから特殊な形で曲げられた二本の針金を取りだした。ここで調べる物が出てきた時の為にエクスとノアの二人から渡された物だ。

暗闇に《適応》した目で鍵の中の構造を確認し、鍵穴に針金を差し込む。

 

(さっき見たらこの部屋の天井には通気口が無かった。つまり鍵を掛けなければならない程の物がこの中にあるという事。

だとしたら見られちゃ都合が悪い物がこの部屋の中に…………………

 

!!!?)

 

「うわっ!!!!?」 ズバンッ!!!!!

 

哲郎が反射的に後ろに飛ぶと、今まで居た場所を鋭い斬撃が襲った。

 

(な、なんだこいつは…………!!!)

 

哲郎の前には濃い桃色の髪を肩で揃え、黒い制服に身を包んだ女性が立っていた。その手には長い棒に刃物が取り付けられた《薙刀》が握られている。

今までの信者と違っているのはその表情が険しく歪んでいるという事だ。

 

「こんな所に一体何の用だ? 小僧。」

「……………!!!」

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